ザ・グレート・展開予測ショー

始まりの2月13日


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 2/ 8)


 

 『バレンタインとは、どんな日?』



「え?バレンタインがどんな日か?・・・う〜〜〜ん」

 その問いに対して、少女はしばし考える仕草を見せて・・・やがてゆっくりと言葉を紡いだ。

「バレンタインは・・・斜めに見てる人達がそんなのは菓子業界の戦略から出た偽習慣とか、モテる男の人がそれを見せつける為にある日とかって言ってますけど・・・」

 何か自分の身近に、その日を斜めから見てる輩の好例があるかの様に、少女の言葉からは強い確信が感じ取れた。

 ともかく、もう少しだけ、少女の言葉に耳を傾けよう。

「私・・・それはちょっと違うと思うんですよ。例えば遠くにいて、声をかけてもらった事もないハンサムな人にチョコをあげたとしても、そうじゃなければ・・・身近にいる、いつも情けないとこばかりでも、いざとなったらすごく頼れて、ほんとに優しい人に渡したとしても・・・そのチョコには間違い無くその人の気持ちが、想いが込められている。それが偽りでも、1年の間に『そう出来る日』があってもいいと想うし・・・」

 そこまで言って少しむせこんだのか・・・少女はスゥハァと深呼吸をした。

「ふぅ・・・あの、だから、どんな日かでしたよね?私にとってバレンタインは・・・」

『わ、わぁーーーーーーー!!!?』
『な、何やってんの!?このバカ犬ーーーッッ!!!』

 そこで少女は言葉を止めた。耳をすますとキッチンのある方角から、何やら二人の少女の助けを乞うかの如き悲鳴が聞こえてくる。少女はそれを聞きつけると、「大変!」と言うやすぐさまこちらにペコリと頭を下げて、足早に部屋から姿を消した。

 そうして・・・誰もいなくなった部屋で・・・

『聞く相手もいないのでは、やむをえないか』

 この事務所に宿る人工の霊体である彼は、最後までは聞けずに終わった『明日という日』に関しての少女の言葉に、少しばかりの名残惜しさを覚えながら・・・

『特別な、日、か・・・』

 静かに意識を、深い眠りの海へと沈めていった。



『バレンタインとは、どんな日?』



 彼はそう問うた。

 そこは日も当たらぬ暗い場所。どこかの廃工場のようだ。

 彼はそこで、目前に殺気漂わす男達を前に、厳しい眼のまま立っている。

『どんな日かと聞いてんだよ!』

 そう喧嘩腰で怒鳴り散らしたのは『彼』ではない。『彼』のすぐ左隣にて、ニラミを効かせているやや背の低い青年だ。

『とうとう・・・あの日が来てしまうんジャノ・・・』

 今度は『彼』の右隣、異様な程に迫力のある、巨躯の青年が感慨深げに呟く。

『長かったのか、短かったのか・・・何故かチョコをもらえぬ屈辱の高校生活を留年しとらんのによその学校よりも多く過ごした気までするケェ・・・ハハ、そんなワケ無いのにノォ・・・』

 ダン!

 その呟きの終わり際、真ん中にてたたずむバンダナを巻いた青年が、後ろの壁を強く殴りつけた!(手が赤くなってるのは内緒だ!)その勢いのまま、叫ぶ!

『我々は甘かった!』

『そう!甘かったのだ!我々は皆今年でハイスクールを卒業!これからはほぼ全員が別々の道へと進む事となる!』

『心残りが無い!?悔いなど無い!?無いと言うならこちらも言おう!それはーーー嘘だ!!!!』

 まるで魂全てをかけてるかの様なバンダナを巻いた青年の熱弁に、男達の殺気はその方向性を変えていく。

『いよいよ明日!明日なのだ!思い知らせねばならんだろう!?我々に煮え湯を飲ませ続けた特定の者共に我らの悔しさを!ましてやあの金髪の悪魔をこのまま解き放つというのか!!?』

 膨らむ殺気。凝縮し、殺気は鬼気へと昇華する。

『ここに宣言しよう!我々はこれより修羅となる!そして!』

 バンダナの青年は叫ぶ!それと同時、その場に在る全ての狼達を強く結束させる最後の言葉を文珠によって虚空に刻む!

『煩悩男と書いてホノオ!さあー!これより我らは煩悩男組として全ての悪をーーー・・・』


『誰がんな組に入るっつぅんじゃぁぁあ!!!!』


 バンダナ青年が屍化するのを代償として。

 狼達は固い結束の絆で結ばれたのだった。



 同時に。

「・・・ウッ!?」
「どうしたんだい?ピート君?」
「い、いえ・・・何故か今、過去最大級の悪寒が・・・」
 


 明日・・・2月14日。

 男達のプライドと想い(と嫉妬心)をかけた『聖戦』が始まろうとしていたーーー




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