食物連鎖
投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 2/ 3)
―いのちをくらふ。
生きるために狩をする。
生きるために自分以外の生を殺す。
その死を踏み台にして自分は―いきる。
真上に太陽が昇る時間。
道路に動物が―いや動物であったものが居た。
車に引かれたのかその形は原型をとどめておらず道路には、変わり果てたものがある。
通行人は、眉を潜め声を抑えそしてちらりと哀れみの視線を投げて、そして歩く。
―それが普通のありようだろう。
同情はする。
だが、自分の大切なもの以外のもののために簡単に動けるわけが無い。
と、いうか動けないのだ。
そんな人の流れの中ひとりの少女が立ち止まった。
腰まである髪となぜか少年めいた印象をうける少女。
横には、バンダナをした高校生と思われる少年が自転車に乗っている。
「どおしたシロ?」
と、声を潜め少年。
「―しんでるでござる」
抑揚を感じない声で少女。
視線は、そこから離れない。
「ああ、可哀相にな…」
流石に声をひそめ少年。その声音にはすくなからず哀しげな響きがある。
と、その瞬間シロは走った。
たたたたたっと軽やかに走り直ぐ隣までゆき―
ひょいっと両手にそれを抱えたのだ。
血に手が、服が濡れるのもかかわらずに。
そして哀しげなひとみで、声で、全身で言うのだ。
「弔ってもよいでござるか?」
―と。
その言葉に、少年が何も言えるわけもない。
すこしばかり静かな林―とまではいかないところに二人はそれを埋めた。
手で土をほりそれを埋めさらにまた土をかぶせ、ボウキレをたてる。
「これでいいでござる」
すこしばかり嬉しげにシロ。
もう太陽は大分西に傾いておりふたりとも全身泥だらけになっている。
「おー」
ぱんぱんと手の泥をはたき落としながら横島。
成仏してくれよーと冗談まじりに言う。
すると
「違うでござるよ」
とシロがむうっと頬をふくらませ言った。
「んあ?」
なんでだと更に声をあげ横島。
シロは、すると無い胸をはり―
「ごちそーになってくれというのでござる」
と言った。
「はい?」
とは横島。まあだいたいの返答は似たようなものだろう。
「だって、そうでござろう?死んで土に返ってそして土に返ったものは食物の養分になるのでござる」
なら、ごちそうでござろう。
当たり前のことのようにシロ。
いや、間違ってはないのだが………
「おまえなあ…誰に聞いたそれ」
げんなりと頭をおさえ横島。
「父上でござるが?」
きょとんと首をかしげシロ。
「父上が死ぬ間際に、そう言ったでござるよ?」
―みな死に体は土にもどり土は作物を育て作物は自分の体の一部になるのだ。と
「だから、どこにも寂しいものはないでござると―」
だから、ちとうえは傍にいるのだと―
ふと横島はそう言うにいたったシロの父親の心境に思い至り口元を歪ませた。
きっとこの馬鹿犬は鳴いたのだろう
それこそこのまま死ねるのだろーかと思わせるほどに。
だからだろうかそう言ったのは。
確かに真実だが同時に嘘でもあるその言葉を。
だが、その言葉で安心できたのも事実。
ならば、ここで死んだ憐れな生き物にもおいで―とこの自分のなかにおいでとしろはいっているのだ。
ちゃんと食物として運ばれてこいばきちんといっしょにいれるということを。
それはきっと無意識の行動。そして言動。
「そだな」
くしゃり
と横島は笑ってシロの頭を撫でた。
くらひ、ころし同時にいかす。
あるために自分以外の生をころし、そしていかす。
おわり
今までの
コメント:
- ………なにを書きたいのだろうか自分(涙
ああっ見捨てないでくださいっ(涙)
いやなんとなく真面目にかこーかなと思ったんですけど駄目ですねーすいません
明日から大人しく連載続けます(汗 (hazuki)
- 食物連鎖……我ながらなんだかなあ(汗 (hazuki)
- なんてゆーんだろ。
優しいっていうより……誇り高い。
どんなに血に汚れてても、生臭くても、泥だらけでも、
二人とも凄く気高く感じました。
理不尽な死を迎えた動物達や父親の悲しみを、胸を張って
受け止めるシロ。
そのシロの痛みを感じてあげる横島。
強さだけでは得られ無い様な輝きというか、
とにかく誇り高さを感じました。
いいことばがみつかりません。ごめんね。
(みみかき)
- ああ、直に感想書くの、久しぶり……(しみじみ
タイトル読んだ時は、少し血生臭いタイプのお話かと思っていたのだけど、読み終わってみて納得。
シロならではですねー。
ボケもほのぼのもシリアスもこなすマルチなやつだわ。
益々シロ好きになりました(笑
お話も、久々にオンタイムでhazukiさんの読めて嬉しいなあ。
始まりと締めの文章で、GSのSSプラスαのhazukiさんテイスト感じます。
確かに、言葉にすると難しいことかもですが、でも、何を書きたいのか、なんとなく伝わってくるものがありました。いや、それがhazukiさんの正解かは知らんのだけど(爆
でも、読めて良かったのデスヨ。
感謝を。 (四季)
- 何をおっしゃいます! 心に染みる作品じゃないですか!
私はシロの考えに一票です! 命の連鎖をつなげるのは、生き残るものの義務ではないでしょうか!
因みに、横島の死を悼むという発想は、生き残るものに与えられる権利でしょうか。それは成仏したのだと自分を安心させるための…。 (斑駒)
- スイマセン↑。多少暴走気味でした。
でも、やっぱりイイと思います。 (斑駒)
- 話の内容はしみじみですが、テーマ的には重めですね。(そのテーマでここまで明るさを出すというのはやはり凄いと思います)
生きる為に喰らうというのは生物の根源的な宿命であり、生まれながらに背負う業である……などと考えていってしまえばいくらでも考えられるし、あまつさえ一つの教え(仏教)が出来てしまうほどのことですが、喰らうということ自体に、人は普段罪悪感など感じてはいないでしょう。喰らうという行為は、生物にとって本質的な楽しみなんですね。
重いテーマでここまで書けるhazukiさん……やっぱり凄いですよ。 (ロックンロール)
- 我々人間が普段感じない自然の摂理。感じないがゆえに”狩り”というのがある。
やっている者たちはスポーツだと言うが殺された動物は報われない。
うーんこれからは食べ残ししないようにしなきゃな。
それが動物、植物問わず弔いになるかと。すいませんこんなコメントで・・・ (NGK)
- 死については、、人間誰しも考えさせられるんですよね。
シロの親父さんの話も読んでみたいなぁ…
先輩方、だれか書いてくれませんかねぇ。 (魚高)
- 全ては繋がっている、という事なのでしょう。
他の者が気軽に口にすれば、或いは偽善の誹りを受けかねない言葉ですが、無垢で純粋な彼女の口から語られると厳しい説得力を感じます。
まるで、「人間よ、思い上がるな」と言われたようで。 (黒犬)
- ↑自分だって、よく轢かれたにゃんこやわんこを拾ってきて、埋めてあげるくせにー♪
優しくて厳しい、素敵なお話。そう感じました。
このお話を読んで、私も、今まで食べちゃった生き物の分くらいは頑張ろうって思いました。 (猫姫)
- 成るほ。彼女らの野生動物的な性向を前面に押し出せば、通常の武士のイメヂから脱却した非仏教徒的思想を持っていても不思議では無いと。
う〜ん、これはなかなか面白い観点ですね。これまたして遣られました! (Iholi@ あ、感想の趣旨がズレてるっ(焦))
- と、いうわけでいきますっ(詳しくはお月様のしたのほー見てください)
…まあ誰も覚えてないだろうけど(汗)
そこは村の中でも奥深い場所にあった。
広さにして、四畳半ほどだろうか?
とてもではないが豪奢とは呼ぶことのできない簡素な小屋
だが、その小屋は、宝物庫と呼ばれ、宝刀『八房』が収められている。
ひとが、そう出入りするわでは無いが、お神酒が切れることもなければ、この小屋が汚れるということもない。
そこは村人にとって聖域であるのだから。
夕暮れ時―とまではいかないが、太陽が西の空に傾きゆっくりと空の色が変わっていく時間 (hazuki)
- その中に一人の―いや一匹といったほうが適当だろうか?
狼がいた。
宝物庫は、狭く、中心に刀、そしてその前にお神酒、注連縄が置かれているだけである。
その狼は無造作に、その刀を手にした。
その瞳にはなんの感慨もない。
喜びも、憤怒も、悲しみも、なにも―。
そしてこれまた無造作に、腰へとその刀を差す。
一応、いままで使ってきた刀を、その刀の代わりへと置く。
「―……」
そしてつぶやかれた言葉。
この言葉は口の中でぐぐもったように言われたため、意味をなして外へと流れない
懺悔なのか、決意のものなのか― (hazuki)
- 外にでると大分空が赤く染まっていた。
黄昏の時―昼が終わり、夜が始まる―その合間に見られる光景。
かさりと草を踏む音がした。
その狼は、その気配に別段驚く事もなくその音をしたほうを見る。
そこには、男がいた。
周りを染め上げる赤い光のため顔はわからない。
背格好からかろうじて男だとわかるだけだ。
だが狼にはわかっていた。
その男が誰なのかを―何故ここにいるのかを―
「辞めろ―と言っても聞かぬか?」
どこか哀願ともとれる響きを持ち男。
よくみるとその男は隻眼で、顔には大きな傷跡がある (hazuki)
- まともに機能している瞳にはありありと苦渋の感情が見てとれる。
「―ならばここにいないさ」
とは、狼。
その声はいっそ穏やかですらある。
「もう戻れないのか」
「ああ、むしろ俺にはお前達村の連中のほうが不思議で仕方がない」
ちゃきっと刀に手をかけ狼。
「―そうか?」
こちらも刀に手をかけ男。
刹那
ふたりが動いた―
きいいいいんっ
刀の刃がぶつかりあう音。 (hazuki)
- 「なぜ、そうしていられる?」
刃を交えたまま狼。
それは心底、不思議そうに思っていることを聞いているといったかんじであった。
そしてその問い掛けの底にあるもの―
それは、誰もが一度は思うことだ。
男もそれを感じた事がある―
それは、このまま人間に迫害―いや自分の縄張りを人間なんぞにあらされたまま何故、それを受け入れるのか?となぜ取り返さないのか?と (hazuki)
- 確かに―確かに、人間をどうとも思わないのか?と言われるとその答えは否である。
人間はいままでいくつの山を減らしてきただろうか?
いくつの、住みかを奪っていっただろうか?
―そしていくつの同胞の命を奪っていっただろうか?
最期には結界で村を守らなければならないほどに―。
だが、男は知っているのだ。
自分達は半分は人間であるということを。
そして―人間にも快いものはいるということを。
それを不特定多数の人間に、やられたからといって人間全てを殺すのか?
―ただ憎いというだけで。
命を奪うのか? (hazuki)
- 男にはできなかった。
―そんなことをしたら、戻れなくなる。
どこから戻れなくなるなんてことはわからない。
そしてこの目の前で刃を交えている男にも、その場所へといってほしくなかった。
―ただ、破滅へと向かう道へと。
かつての―いや今でも、いる数少ない友として―。 (hazuki)
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