ザ・グレート・展開予測ショー

きっかけ。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 2/ 2)

それはいつもの、ありふれた―そうあたりまえの出来事だったのだ。
美神はいつもとうりに書類を作成してたし、横島はなにも考えずにただ、そこでぼんやりとしていた。
そこにおきぬがいなかったのも―
そこにタマモとシロがいなかったのも珍しい事ではない。
―そう、それは当たり前にあるべき風景だったのだ。

「ふう」
と書類作成にひと段落つき顔をあげる美神。
どーにもこーゆう細かい作業は苦手である。
―まあ裏帳簿なぞ作成しているのが悪いのであろうが―。
だが長時間デスクに座っていたせいか肩がばきばきと煩い。
こきこきと首を2・3回回し
(明日は針いこ)
などとひとりごちる。
どう贔屓目にみても二十歳の若者の考えるべき事ではない。

窓から空を見ると、柔らかい光と青空がひろがっており心地よい。
しんとした空間。
時間は午前十時といったところだろうか?
街の喧騒もどこか遠くのことのように聞こえる。
東京は夜も眠らない町と言われるが案外こんな時間のほうが静かなのかもしれない。

―すぅ。
聞こえる寝息。
「ん?」
それに気付き美神は席を立った。

「雇い主が働いてるってーのにいい度胸ね」
この馬鹿。
と呆れたように美神。
そう言わずもがな寝息の正体は横島だったのだ。
ソファーに体を預けだらしなく眠っている。
その顔はもう、幸せそうだ。
先程まではなにやらページをめくる音が聞こえていたが、それは数学の教科書。
確かテスト期間中やらで、無駄と知りつつも勉強していたといったところだろうか?
ソファの下には教科書やらノートやらが散乱している。
しばしじっくりと幸せそうに眠る横島の姿を眺めた。
あらいざらしの黒髪に、トレードマークのバンダナ。
くたびれたジーンズにやせがれた体。
すらりととはいえないが、細長い手足。
端正とまでは言えないが、まあ愛嬌がある顔立ち。
その顔には間違えもできないもの―そう疲労が感じて取れる。
ふと最近このバイトにはずいぶんな無茶をやらかせたことを思い出す(美神から見て)
なら、まあ今日は暇だし―
(いいかな?)
と思う。
ボーナスなんぞ上げてやるかわりに、このささやかな昼寝の時間を提供しよう。
そう決めた美神は、何事もなかったようにその場をくるりと踵を返し
―窓へとむかい、寝やすいように、心地よいように、やわらかい風を部屋のなかに入れる
さぁ―
風が流れた。

そしてつぶやかれるように聞こえた声。
風にかき消させるかのようなか細い声。

「美神さん…」

「ん」
一瞬呼ばれたのかと思い再びソファにいく。
するとそこには―
やすらかに眠る横島が。
そう、満面の笑みを思わせる寝顔で横島は、幸せそうに美神の名前を呼んでいたのだ。
その夢がどんな夢なのかはわからない。


ただ、わかるのは横島が美神の名前を呼んだ事。
不覚にもその寝顔を声をセットで見た時聞いたとき美神の顔が赤くなったこと。
心臓の鼓動が早くなった事。
それはほんとうになんにも無い日だった。
だけど、それが全てのきっかけ。
気持ちに気付くきっかけ。
おわり

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