ザ・グレート・展開予測ショー

Endless story (3−B)


投稿者名:アストラ
投稿日時:(02/ 1/31)

先日G-A-JUNさんに「チャットでアストラの語源についての話があった」と聞き、「レオという兄がいるか?」等の質問あったようなのでここで意味を説明したいと思います。
アストラというのは某特撮番組とはまったく関係はありません。何が元かというと、「アストラA80」というスペイン製の拳銃がその語源です。
皆さんのご理解をいただければ幸いです。


「先生!」
 アモックに背中を斬られ、床に倒れた横島にシロが駆け寄る。
「横島先生! 先生!」
 瀕死の横島をがくがくと揺する。普通の人間にやったらトドメをさしてしまうだろう。
「シロ・・・大丈夫だ・・・」
「大丈夫って・・・背中を斬られているのでござるよ! 無理しちゃ駄目でござる!」
「・・・俺はお前の先生だぞ・・・先生が手本見せねーでどうする・・・」
 横島はさっきの戦闘で使わなかった文珠を懐から取り出し、"薬"を込めて呑み込もうと口元まで持っていったがそこで手の力が抜け、遂に飲む事ができなかった。
「先生! しっかりして下さい!」
 シロは再び体を揺すったが、ピクリともしなかった。
「・・・お前達、これを見ても何とも思わないか・・・?」
「フフフ・・・微塵も思わないな」
「なんだとぉ!!」
 シロの顔は怒りで紅潮し、頭に血が昇った勢いで二人に飛び掛った。アモックは柄のほうの青竜刀で下から斬り上げたが、シロは迂回してかわし、刀を蹴り飛ばすと、霊波刀で逆袈裟(右肩)を斬りつけ、左手に持った日本刀の背でアモックの肋骨をしたたかに殴りつけた。普段のシロであったらこんな非道じみたことはするまい。しかしながら横島が倒れたことにより感情が爆発し、敵に対して見境無く攻撃を仕掛けていたのだ。
 アモックが乱打攻勢によって劣性と見るや、レアックは背中に仕込杖のようにしまっていたアメサイ(儀式刀)を抜いて、左横から討ちに入った。
 アメサイはその用途上、刃はついていない。だが、先端が異様なまでに尖っている。その二箇所はナチスのSS(親衛隊)将校用短剣と同じである。
 レアックは尖った先端をフェンシングの要領で突いて突いて突きまくる。しかし、せいぜいシロの脇腹に針で刺されたような傷しかできない。
「邪魔だ!!」
 そう叫ぶなり正面を向いていたシロは右膝立ちの状態になってすぐさま立ち上がり、左横に向き直ってレアックに上段の太刀を浴びせて壁の奥に飛ばした。そして休む間も無く腰のバネを利用して体を強く捻り、正面のアモックに霊波刀を喰らわせてレアックとは反対方向に吹き飛ばした。
今のシロの動きをまとめると、立てた右膝を前に出しつつ、正面を向いていた上体を左横へ半回転する両足と連動させ、素早く向き直ってレアックを斬り下げる。そして遠心力でアモックを吹き飛ばす。なお、レアックへ使用した方法を古流剣術において刃瞬(にんしゃく)という。
シロはアモックが起き上がらないうちに飛び掛ろうとしたが、壁の奥に飛んだレアックがアメサイ以外何も持っていなかったはずの手に何か握っているのを見て方向転換した。
「・・・・・・?」
 それは青竜刀の鞘だった。目を凝らしてよく見ると、何やら訳の分からない文字が細かく書かれている。
 シロはその時レアックが無差別に人を殺害するアモックをなぜ服従させる事が出来たのかが分かった。そしてまだ倒れているレアックから鞘をふんだくり、霊波刀に気を集中させて鞘を切断した。
「や・・・止めろ!」
 レアックが叫ぶと同時にアモックが絶叫と供に虚空に消えた。
「やはりそうでござったか・・・アモックの本体は鞘だったんでござるな」
「・・・ふん、若干違うな。アモックが数多くの人間を殺した後、俺が素早く奴を殺した。その時にこの鞘を使って奴の魂を移し変えた。いわば奴を式神にしたのだ。説明していなかったが、この呪術では鞘がある刃物を使わねばならない。なぜなら、渡した刃物の鞘を持っていなければ奴を抑制できないからだ。鞘を無くすと俺まで襲われる。だから、魂を抑制効果の持つ鞘と共存させたのだ」
 レアックは再び黒曜石のような目でシロを見た。その視線にぞっとさせる物をシロは感じた。
「レアックというのは本来人間の魂や体が妖怪化したものを指す。俺は数年前に魔力を増幅させようとして失敗し、こうなった。成功するはずは無いと分かっていたが、人間の欲望とは尽きない物だ。失敗したら最終的に生気を吸われて闇の世界に引きずりこまれ、ついにはこの世の者では亡くなってしまう。どうせ死ぬんだったら一人でも多く道連れにしてやろうと考え、ピー・タイ・フーやアモックを利用して殺し続けたのだ」
「馬鹿なこと言うな・・・! そんな歪んだ自分勝手な理由で・・・・・・横島先生を初め数多の人を殺してきたのか!!」
「ぎゃあぎゃあわめくな。お前もすぐにあの男の元へ行かせてやる」
「ふざけるなぁ!!」
 シロは一足飛びで間合いを詰め、霊力を収斂(しゅうれん)させた霊波刀でレアックを斬りつけた。
アモックはアメサイを立てて防ごうとしたが、通常の霊波刀とは比べ物にならないほどの威力だったため、アメサイはガラスが砕けるような音を立てて割れた。そして横島との攻防戦で疲弊していたレアックは倒れた。そこで、すかさずシロは破魔の札をかざしてレアックを除霊した。
「横島先生!」
 シロは休む間も惜しんで横島のところへ駆けつけた。今更死んでいない事に気付いたが、大して状況が変わったわけではない。
「先生! 先生! せんせぇ! せんせぇー!」
 シロの頭の中に横島との今までの想い出が駆け巡った。霊波刀を伝授してもらった事。一緒にいるうちにだんだんと傍にいたい、守ってあげたいと思うようになった事。嫌だ嫌だと言いながらいつもサンポにつきあってくれた事。横島のタマモに対する態度に嫉妬した事。銃で撃たれた体を心配してくれた事。
 シロは横島の持っていた文珠に目線を移した。"薬"とかかれた文字が心なしか色褪せて見える。
―――今更呑ませても遅いでござろうな―――
 そう思いながらも呑ませようとしたが、意識を失っている人間に物を呑み込ませるのはほぼ不可能である。
(「やはりここは"くちうつし"とかいうやつでござるか・・・? でも、それだと一方的でアンフェアでござろう・・・」)
 しかたなしにシロは文珠を無理やり押し込んだ。"くちうつし"とかいうやつもやってみたかったがおあずけし、不安な気持ちを紛らわせるために横島の頬に自分の唇をあてた。
間もなくして―――
「先生! 横島先生!」
「シロ・・・(周りを見渡して)お前一人であいつらを倒したのか?」
「そうでござるよ。先生、立てるでござるか?」
 返答を聞く前にシロは横島の手を取って立ち上がらせ、すぐに横島の腕にしがみつき、哀願するような口調でおねだりした。
「先生、お願いがあるのでござるが、その・・・帰りにちょっとだけサンポしちゃ駄目でござるか?」
「・・・・・・ちょっとだけだからな」
 ぽつりと呟き、横島は傷に触れる時のような慎重さでシロの手を取った。
「・・・行こうか」
「うん!」


 完


 主要参考文献
白魔術全書:九燿木 秋水(白魔術と打ったら"シロ魔術"と出てきました・・・)
 図説剣技・剣術二:牧 秀彦

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