ザ・グレート・展開予測ショー

!Wandarful time――幸せのジカン――


投稿者名:六勲狼流
投稿日時:(02/ 1/31)

 私は幸せね……だって、今、私は幸せの中に居るもの。


「どうしたー? 蛍ー」
 ヨコシマ――いいえお兄ちゃんね、もう。……お兄ちゃんが声をかけてきた。……私はその声を聞いているだけで今は幸せ。……だって、一度失ったものを……二度と取り戻せないと思ったものを、また取り戻せたんだもの。
「……なんでもないっ♪」
 あれ? ちょっとひねた感じの声を出そうと思ったのに。
 お兄ちゃんは私の隣を歩いてる。……のんびりと……ゆっくりと……もう、時間はいっぱいあるものね。……もう、私は消えたりしないものね。
 あのアパートは二人で住むには狭いもの。……不満はないけどね。でも、たまにはこうして二人で散歩でもしなきゃやってられないわよね。
「そうだ蛍。美神さんのとこでも行くか?」
 ピク。
 美神さんのとこぉ〜?
「……お・に・い・ちゃ〜ん? ま・さ・か? 妹の目の前でセクハラなんてしないわよね〜?」
 本気でビビった表情で後ずさるお兄ちゃん。……図星みたい。……全く! 妹として情けないわ……
「いい!? 私はお兄ちゃんのい・も・お・ととして、お兄ちゃんが犯罪に手を染めて社会から排斥され、転落の人生を歩むのを見ていられないのよ。……だ・か・ら♪」
 微笑んだ。……飛び切りの笑顔で。
「ちゃんとしてるのよ♪」
「は……はい!」
 お兄ちゃんの顔のスクリーントーンが一段と濃くなったみたい。……でも、これで少なくとも今日はお兄ちゃんは安心ね。
「じゃ! いきましょ、お兄ちゃん!」
 お兄ちゃんの手を引いて、私は木漏れ日の中を駆け出した。


 呼び鈴を押すと、おキヌちゃんが笑顔で私たちを迎えてくれた。
「あ、横島さん! 蛍ちゃん! いらっしゃい」
「ちわ〜っす……」
「こんにちは〜♪」
 おキヌちゃんに通されて、居間に足を進める。……さっきの一言が効いてるみたい。お兄ちゃんは借りてきた猫みたいにおとなしくしてる。
 美神さんは、表面上は不機嫌を装っていても、……ふふっ。私には分かるわよ…… お兄ちゃんが来てくれて嬉しいんでしょ? さっきから眼が笑いっぱなしよ?
「あ! せんせえ〜っ! 来てくれたんでござるか〜っ!?」
 シロちゃんがお兄ちゃんに飛びつく。……はじめて見たときは思わず引き剥がして、その後お兄ちゃんをはたきまくっちゃったけど、この子には関係ないみたい。……きっとお兄ちゃんの事が好きなのね。……私も負けないわよ……?
「……っだあ〜っ!! 止めろシロッ! 顔を舐めるなぁ〜っ!!」
 そう……だから我慢我慢。お兄ちゃんはモテるもの。……この子は人狼らしいし、こんな愛情表現もあってもいいわよね。
「……だから舐めるなっ!! シロッ! お座りっ!!」
「キャインッ! 先生は最近冷たいでござるぅ〜……」
 そうそう。お兄ちゃん、えらいえらい。
「まぁまぁ横島さん……シロちゃんも悪気はないんですし……」
 おキヌちゃんがお兄ちゃんをなだめに入る。……もう、おキヌちゃん! ……そういうのは本当は妹の私の役目のはずなのに……
「っと。いけねえいけねえ……ごめんな、シロ」
「先生がまたやさしくなられたぁ〜っ!!」
「だから飛びついて来るなぁ〜っ!!」
 取り合えずお兄ちゃんはしばらくシロちゃんと遊んでいるみたいだし、私は美神さんと話してようっと。
「お久しぶりです。美神さん」
「ホント久しぶりねルシ……蛍ちゃん。……取り合えず復活おめでとう」
 何か、美神さんの眼、私への敵意に燃えているみたい…… まあ気持ちは分かるけど。……美神さんも心配性ね。今の私はお兄ちゃんの妹だっていうのに。
「ホントに……」
 負けないんだから! 私も目線で勝負を挑む。
 バヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂ……
 辺りに火花が散ってるわ。……美神さんの視線が恐い。……でも、脇で見ているタマモちゃんの表情からすると、私の顔も今恐いのかな?
「……蛍ちゃん? ……一応確認しておきたいんだけど……あなたは横島クンの……い・も・お・と・よ・ね〜……?」
 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ええ妹ですよ……? で・も……妹として、お兄ちゃんを一生こき使いそうな上司になんかあげられませんよ〜……」
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
 空気が震えてるみたい。美神さんとのにらめっこ……何か、ここに来る度に同じことをやってる気がするわね……
「あ……あの〜……? 美神さん……? 蛍ちゃん……?」
 おキヌちゃんの声がするけど、今視線を逸らしたらこちらの負けになっちゃう。……負けないわよ〜……
「あの……美神殿……蛍殿……その辺にした方が……」
 シロちゃんの声もする。……みんなで見てるみたい。でも、この人は負けたくないもの。このまま眼を吊り上げておかなきゃ。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「美神さ〜ん、蛍さ〜ん…… そろそろ止めておいたら……? だってほら。事務所揺れてるし、壁とかひびはいってるし……」
「……美神さん……そういうことらしいですよ……?」
「……蛍ちゃん……あなたこそそろそろあきらめたらどう……?」
 何かパラパラ上から何か落ちてくるけど、構ってられないわ。……だって、ここで引き下がっちゃったら、お兄ちゃんを取られちゃう!
「お〜い。蛍ー。帰るぞぉ〜っ」
「あ。は〜い♪ お兄ちゃ〜ん」
 もう帰るみたい。……美神さんもぐったりしているわ。……また引き分けねっ。
 いいわ。決着はまた今度。あ。お兄ちゃん、待って〜……
「蛍〜。早く来〜い」
「うん♪」
 夕焼け空の下。
 私たちは、アパートへの帰路へついた。


 私は幸せね……だって、今、私は幸せの中に居るもの。

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