ザ・グレート・展開予測ショー

君がいるだけで(22)


投稿者名:JIANG
投稿日時:(02/ 1/30)

「もしよろしければ、あなた方も覗いてみますか?」
 出入り口の前でベスパとジークフリードが「衿を離せ」「今更、離すよりこっちの方が
早く移動できる」「格好が悪いだろ」「さっきまで落ち込んでいたくせに、だだをこねる
な」「そういう問題じゃないだろ」等と言い争っている時に公彦は考え込んでいたようで、
つぶやくように声を出した。
「なに!? 教授、それはどういうことだい」
 ベスパはその言葉を聞き取ったようで、つかんでいたジークフリードの衿を離した。
 当然、離されたジークフリードは足を踏ん張って腰を上げた状態になっていたので、支
えが無くなり床にしたたかに腰を打ち付ける結果になった。
「ぐわ! い、いきなり手を離すな」
 そんな、ジークフリードの怒りの声を無視してベスパは教授の説明をうながした。
「私の能力はいろいろと応用が利きましてね。その一つに意識を共有させて、他者の心の
中を覗くことも出来るのです。もちろん、これをやると共有したもの同士の心の中も丸見
えの状態になってしまいますけど……」
 どうしますか? という公彦の問いかけにベスパは少しのあいだ、考えてから答えを出
した。
「いいよ、やってやろうじゃないか。直接、ルシオラの心が聞けるのならそれに越したこ
とはないからね」
 自分の心の中まで覗かれてしまうのには多少抵抗は有るがベスパは強がって答えた。
「と言うことで、少尉は終わるまで外に出て待っていておくれ。」
 ベスパはジークフリードを外に押し出そうとする。
「お…おい、それなら俺にも見ることが出来るじゃないか」
「少尉、女の心の中を覗こうなんていい度胸じゃないか。いくら、情報士官だからってそ
れは痴漢と変わらないんじゃないかい?」
 ベスパは小屋の外に押し出しながらジト目で非難する。
「そ、そんな…痴漢だなんて、俺はそんなつもりじゃあ……。だけど、教授だって一緒に
見るんじゃないか」
「馬鹿なことを……。教授の能力を使って、ルシオラを調べるんだから教授がいなくちゃ
あ何にもできないじゃないか。いいからおとなしく外で待っていておくれよ」
 小屋のドアは無情にもジークフリードの鼻先で閉じられたのだった。
「あっ……。くそう、何だって言うんだ。俺は監視役だって言うのに……」
 ジークフリードはブツブツと文句を言いながら、小屋の前から離れてボートの方に向か
っていった。そしてボートに乗り込むとゴロリと仰向けに寝ころんだ。
「俺は一体こんな場所まで何のために来たのか……」
 ちゃぷちゃぷとボートに当たる水の音がむなしさをいっそうかき立てるのだった。

 そして、小屋の中ではいよいよルシオラの調査を開始しようとしていた。
「それではいいですか、ベスパさん。なるべく意識を蛍に――ルシオラ――の方に向ける
ようにしてください」
「わかった」
 ベスパが肯くのを見て公彦は仮面の額部分にあるボタンを押し頭を覆うその仮面を取り
外した。
「はじめます」
 公彦は頭から腕のような形をした霊体を出すとベスパとその霊体を接続させた。

*** つづく ***

……続きです。読んでもらえれば嬉しいです(ダッシュ逃)

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa