ザ・グレート・展開予測ショー

旅(?)


投稿者名:はずっち
投稿日時:(02/ 1/29)

人生とは、旅である
「だからって…なんで俺は一人此処にいるんだろう…」
とひとりごちる馬鹿ひとり…
足元から吹き上げてくる強い潮風に、バンダナから零れた髪がばさばさと踊っている。
「そもそも、旅ってやつは自分で思い立って始めるモノじゃないのか?」
忌々しげというよりはゲンナリと気力が感じられない言葉が、風に吹き飛ばされて空にの彼方に消えていった。
空は、どこどこまでも広く晴れ渡っておりその馬鹿の気分を更に投げやりにさせる。
それこそ、投げることができるならば地球の裏側にまで投げられそうだ。
「……いや、だけどもっ」
このままだと、落ちていきそうな気分を振るい立たせ言う。
その声は先ほどよりも更に沈みこんでおり、どうきいても奮い立たせるというものには聞こえない。
そりゃそうだろう…この状況で明るくなれたらそれはちょっと…いやそれどころかかなり嫌である。
―でその状況であるが

「つーか、無人島に一人ってのは、そもそも旅って言うのか?」
涙がちょちょ切れそうな境遇だ。
それも、雇い主に海に蹴り出された挙句の、問答無用の一人旅(?)である。
快速船の甲板で高笑いする雇い主と、せんせーーー、とドップラー効果を効かせながら遠ざかっていく弟子の声が、虚しく脳裏を過ぎる。どちらも、救いの主には月の裏迄ほども遠そうだ。
「……とりあえず、人がいそうな気配は無しか」
海岸沿いを歩いている時に見つけた高台、岬の突端から島全体を眺め、彼の予感は確信に変わった。
まあ…こんなとこに居る人間がまっとうな筈はない。
どう考えても犯罪者かいっちゃてる人じゃなかろーか?
そう考えてみるとまあ最低―と言うわけでもあるまい。
必死でそう考え横島は自分で自分を慰める。
と、いうかすでにこの状況に居ること自体かなり悲惨な状況だろう。
(普通そんな状況においこまれる事などありえない)
だが幸か不幸か―いや、横島の場合不幸といったほうがよいだろう…
そこに人がいたのだ。(性格には人ではないが)
それも、できるならばお目にかかりたくない人物が。
「失礼な表情をするなっ!!」
 あからさまに顔を顰めた横島の顔に、その人物(?)は問答無用で拳を打ち込んだ。
「つーか、アンタこそなにするんじゃーっ」
 壮大に鼻血の噴水を吹き上げながら横島が威勢良く拳を振り上げかけたが、相手のギンッと音がしそうな鋭い視線に、それは項垂れた野良犬の尾のようにすごすごと下ろされる。
「久しぶりの挨拶にしては、こりゃあんまりじゃないか?」
 代わりに零れた恨み言にフンと鼻息を漏らすと、目の前の女性は不敵に笑みを形作った。
「そおか?ひどく当たり前の台詞だとおもうのだが」
その不遜な態度と台詞、まごう事なきワルキューレである。
いや、なぜここにいるかなどというは、この際どうでもいい。、
「ま、まあいいか…アンタでも居ないよりはま…ぐふっ」
と、横島。
言うべき台詞を最後までいわせてもらえず砂浜に沈み込む。
もちろんワルキューレのストレートを食らっていたからである。
…少しは、学習しろよとつっこみたくもなるが。
「誰が居ないよりもマシだって」
にっこりと笑いワルキューレ。
穏やかに言う言葉だけに怖いことこの上ない。
海と青い空がその違和感に…というか怖さに拍車をかけているのであろうが。
「いや、なんでもないです」
砂浜につっぷしたままうめくように横島。
………負け犬とはこの男にふさわしい形容詞であろう。
「―で、なんでここにいるんだ」
なんとかおきあがり、仕方がないというように横島。
その口調はまあまっとうなものだが、顔に砂の粒をつけたままいっても間抜けとしか言い様が無い。
「フッ、おそらくはおまえと同じ理由だろうな」
 悪びれた様子も無く、あっさりと切り返すワルキューレ。
「んなっ、アンタも美神さんに海に蹴落とされたのか!?」
 神も悪魔も恐れない女だとは思っていたが、まさか、旧知の間柄を相手にまでこの仕打ちとは……。涙が出てきそうになる。
「って、そんな訳があるかっ!!……おいコラ横島っ、勝手に同病相憐れむみたいな生温い目で見るんじゃないっ」
 なにやら『うんうん、皆まで言わずとも判るとも』とでも言いた気なイヤな視線を送ってくる横島に、ワルキューレが背筋を粟立てる。
「??じゃあ、アンタ一体なんでこんな薄気味悪いところをうろついてるんだ?」
 横島が首をひねった。
 ワルキューレは仮にも魔族の士官クラス、本来そんなに気安く人間界に具現化するようなことは無いはずだ。
 それこそ、神も魔もご意見無用の相手でも絡んでいるのでもない限り……。
「なんだ、お前、本当にこの島にやる事があって来たんじゃないのか?」
 今度はワルキューレが首を傾げる番だった。
 偶然?
 ありえるのだろうか、そんな事が。
そんな事ありえるわけが無い―とくちを開こうとした時
ぞわりと悪寒が走った。

つづく

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