ザ・グレート・展開予測ショー

バレンタインネタ**「2月14日」**


投稿者名:ニコのり。
投稿日時:(02/ 1/28)

 それは、二人が付き合い始めて、初めての2月14日のこと。
 横島忠夫、24歳。
 美神令子、27歳。

 横島は高鳴る鼓動を抑えられなかった。
 今日は聖バレンタイン…。
 今まで美神からバレンタインなんかもらったことがない。
 でもそれはただの仕事仲間だったから…。
 だけど今は違う。
 もう付き合って10ヶ月は経つ恋人同士の関係…なのである。…多分。

「バレンタインなんてものを作ったやつを恨んだこともあった。でも今の俺は違うぞぉ!美神さんというすばらしい彼女がいる!義理ならもらったことはあるが…本命だ!!!」
 アパートで一人、涙を流しながら感激をする横島。
 美神の顔、体などを回想しつつにやけていた。
「…………待てよ…。今日は仕事もないし会う約束はしてないぞ…。あの美神さんがわざわざ持ってきてくれるだろうか…っていうかその前にあの美神さんがバレンタインなんていう行事に参加するのだろうか…」
 今度は頭を抱えた。
 彼女もちで迎えるバレンタインは初めて。
 もう5時間くらい前に小鳩からもらったチョコレートも未開封のまま、机に置いてあった。
「ああ…美神さん…今ごろ何してるんだろ」
 時計をみると16時をさしていた。
 世間じゃきっと、ねーちゃんたちが男にバレンタインのプレゼントをあげているだろう。
 学生なんかは学校もあっただろうし、放課後あたりはプレゼントをあげる絶好のチャンス。
 ……………。
 ……………。
 電気もつけない薄暗いアパート。
 だんだんと淋しくなってくる。
「美神さーん…」
 ふと西条の顔が頭に浮かんだ。
――――――もしかして、美神さんは今西条と一緒にいたりして…。
      西条にはいままでもあげてたし…。
      西条はただの「お兄ちゃん」だよな?
      かつてはお互いに好きだったんだよなぁ、あの二人…。
 矛盾な考えが交互する。
 いやな胸騒ぎ。
 枕に顔をうずめて目を閉じる。
 それ以上は何も考えたくなかった…。












「もう16時(よじ)!?横島のやつ、何でこないのよ」
 一方、美神。
 美神の考えは甘かった。
 付き合って初めてのバレンタイン。
 横島は絶対にもらいに来ると思っていた。
 もらいに来たら、ちょっと冷たくあしらってしょぼんとしたところに…という計画を立てていたのに。
 あいつが来ないなら何も始まらない。
 時計を何度も何度も見る。
――――――まさかアイツ小鳩ちゃんと…?
      あれでいて結構もてるからなぁ…。
      小鳩ちゃんって彼氏いるっけ…?
      こんな美人な彼女がいるくせに…!?
 勝手な想像に腹をたて、いてもたってもいられなくなった。
 一生懸命、横島のために作ったチョコレート。
 せっかくきれいな包みに包んで、あとはあげるだけ、の状態だったのに…。
 頭に血が上り、そのチョコレートを持ちもせず、美神は家を飛び出した。












 横島のアパート。
 ドンドン、ドンドン!!!
 壊れてしまいそうなほどの勢いでドアを叩く美神。
 返事はない。
「横島ぁっっ!!」
 本当に小鳩ちゃんといたらどうしよう…という不安と怒りで勢いよくドアのノブに手を伸ばした。
 もしあいつがいなかったら別れの言葉でも書いて帰ろうという魂胆だった。
 ガチャ。
 ノブはなんの抵抗もなく回った。
「…あら」
 家に入ると横島は寝ていた。。
「…横島クン…」
 少し驚き、でもほっとする。
 布団の横にちょこん、と座り込み横島の寝顔を見つめた。
 なぜか微笑ましい気持ちになってくる。
 そして無意識のうちに横島の頬を手でおさえ、唇にそっと自分の唇を重ねた。
 はっ、と自分の行動に真っ赤になる。
「んもう!せっかく人が来てやったんだから起きなさいよ!」
 照れてる自分が妙に恥ずかしくなり、横島の頭をべしっと叩いた。
「…ん……」
 横島は目を開けた。
 うすりうすりと美神の姿が見えた。
 夕焼けが始まっていて、赤く見え、見にくかったけれど確かにそれは美神だった。
「美神さ…!」
 がばっと布団から飛び起きる。
「…なんで…」
 夢かと思い、目をぱちくりさせる。
 美神はうつむいたかと思えば、
「あ!」
 と顔をあげた。
「…ちょこれーと…」
 と、美神はつぶやいた。
「チョコレート??」
「忘れちゃったじゃないのよっあんたのせいでぇ!」
「お…俺!?………って、そのチョコレートって、西条にあげるやつっスか…?」
 横島は美神の顔から視線をそらし、苦笑いする。
「…なんで西条さんが出てくるのよ」
「だって、今日はバレンタインだし…」
「あんたこそ小鳩ちゃんにもらったんでしょ!?」
 しょげている横島にいらいらしてきて、今度は美神が逆ギレをする。
「俺は美神さんだけですよっっ!ほかの女の子にもらうのもうれしいけど、やっぱり美神さんがくれなきゃ…」
 もう一度、美神の目をまっすぐ見た。
「……………わたしだって横島クンのしか用意してないんだから…」
 美神の目には涙が浮かんでいた。
 横島は指でその涙を拭ってあげる。
 そしてそのままそーっと美神を布団に倒れこませた。
「チョコレート、どうしよ…」
「……あとで食べますよ…俺まだ夕飯食べてないから」
「あ、わたしも…。じゃあ食べにいく?もちろんわたしのおごりで…」
 横島をどかして、起き上がろうとした美神を真剣なまなざしで見つめ、横島は微笑んだ。  その横島に顔を真っ赤にして静かに目を閉じる美神。

 ――――それは、二人が付き合い始めて、初めての2月14日。
     甘くてせつない、バレンタインデーのできごと――――


*****おわり*****
はははははははは。
今年のバレンタインは、おじいちゃん、お父さん、おじさん、いとことスポーツショップのおじさん(お兄さん?)…。
書いてて真っ赤になってました。い…いやらしい…(笑)。
いつも読んでくれて本当にありがとうございます!!

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