終曲(反撃)
投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 1/28)
ー終曲ー
誰ヒトリトシテ。
誰ひとりとして、声を出せずに。
そうして奇妙な静寂の時が刻まれる中。
「・・・プ・・・」
『アーーーーッハッハッハ!!!!』
遠慮知らずの、その笑いを・・・
(・・・殺す!)
地面に口づけする格好で、美神は受け止めていた。
少しの間、というまでもないのだが・・・遡る。
普段なら。
「ママ!」
歓喜の色隠さずに、彼女は駆け出す。
「あ、美神さん!あぶ・・・」
黒い髪をした小柄な少女の制止。だがその言葉は、言い終える間も無く、その最中に響いた・・・地面に何かが激突したかの様な音によって遮られた。
思わずつむってしまった瞼を、少女はそぅっと開く。
繰り返そう。普段なら。
「み、美神さん、えとあの・・・」
そこまでは言えたが、少女はそこで口をつぐむ。
代わりに口から出た言葉は・・・
「み、美智恵さんて・・・幽霊だったんですか!?」
混乱している。
誰もがそう思った。普段なら決してありえない、友人で年上の女性が演じた醜態に、この少女は混乱してしまっているのだ。
そうして奇妙な静寂の時が刻まれる中。
『アーーーーッハッハッハ!!!!』
力いっぱいの笑い声が響いた。
「・・・落ち着いたかい?」
どうしても、自分はこの役回りからは逃れられないのだな。
そう自嘲しつつも、やんわりと神父はとっくみあいを終えた『二人』の女性をなだめていた。
少し離れた場所では「・・・プ・・・」と笑いを抑え込めずに我慢しきれず、漏らしてしまった文珠使いの青年が、ボロぞーきんと化してただいまヒーリングを施されている。
ちなみに施してるのはシロ。おキヌは美神を、ピートはエミを(半ば強制的に)そして残る神父は、懲りない喧嘩の仲裁にてんてこまいだった。
そうして10分程時は流れて。
幾分怒りも冷めた美神が、どこか薄ぼんやりと透けた美智恵の姿を目の端にしつつ、口開く。
「つまりママは、最初っからぜ〜んぶお見通しだったんだ」
娘の言葉には隠そうともしない刺が見て取れた。
苦笑しつつも、美智恵が言う。
『あの手の策を弄する輩は、自分の策を破った相手を・・・ましてやプライドまでも傷つけられたなら、その相手をネチネチと精神的にいたぶるわ・・・壊れるまでね』
笑顔で語るには、背筋が寒くなる内容だな・・・側で聞く神父が顔をしかめると、美智恵が懐かしそうな瞳を向けてきた。
慌てて神父が顔を背けると、美智恵は再度、どこか嬉しそうな表情で語り出す。
『・・・そこまで解っていれば、いくらでも手段はある。私の魂、霊体は既に事前から移し替えられていたの。そうしてあちらにはフェイクの・・・そう、おまけに霊的なウィルス効果を持つ疑似霊体を送り込んだ・・・ってわけ』
そこで美智恵は、今だ納得しきれずにいる、そんな様子の娘に目を向けた。
『だからね、全く・・・それをヒャクメ様達が言う前に、令子が突っ走ってった時は驚いたわよ・・・おかげでこちらのカードを一つ見せるハメになって・・・嬉しかったけどね』
美神は顔を伏せた。神父はそのカードが、美神達を救けに現れたベスパの事だと理解する。
『西条君達も無事よ。あのデナ・・・なんとかの力には驚いたけど、生きたままいたぶろうとしたのは失策。今頃あちらの混乱に乗じて脱出してる筈・・・ぅ・・・』
そこで美智恵の言葉は途切れた。それに伴いその姿も、急速に薄れていく。
『そろそろ休まないと駄目ね・・・令子!』
それまでの淡々とした声とは違う、力強い声。
美神がびっくりしたように、目を丸くする。
『・・・頑張って!ね!』
そこで美智恵の姿は消えた。
「美神さ・・・わ!?」
肩に手を置こうと(既に怪復した)青年が吹き飛ぶ。
両腕を左右に広げた美神は、次いで頬を叩いた。
「ーーーぃよっしっっ!!!」
GS達の反撃が、始まるーーー
今までの
コメント:
- 「こうした書き方や運びかたで良いのか・・・いつも悩みますけど、続きです。面白かったら嬉しいです」 (AS)
- こう云う裏技の張り方と云うか、アドリブの利かせ方と云うか……アシュ編での令子の例を引く迄も無く、正に美神ファミリィの真骨頂ですね。まあそれの結果として、1人の男が1枚のボロぞーきんと成った訳ですが(苦笑)。
さて、いよいよ反撃へと転ずるか? (Iholi)
- さすがは美智恵さん♪最強ですね♪
西条さんたちも無事だそうですし、一安心です(ほっ) (猫姫)
- 所詮、美神と言えど、美智恵隊長の前では釈迦の掌上の孫悟空か・・・・・・(笑) (黒犬)
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