ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(帰還)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 1/27)




 ー終曲ー



「な・・・!?」

 呻き声がーーー神父の口から洩れた。

『間違いないのね〜〜』

 返ってきたのは、どこか気の抜ける、緊張感に乏しき声。
『はい。間違いありません。何せヒャクメさんなど及びもつかない能力を持つ方が直接視・・・あわわ』
 言葉を継いだ魔族の青年がうろたえる。
 しかし時は遅し、地面にへたりこんだヒャクメは早速全身全霊で落ち込みだしていた。
『ど〜せど〜せ・・・わたしは神としての威厳に絶対的に欠けてるのね〜〜〜・・・影薄いのね〜〜〜・・・』
 対処に困る魔族の青年、ジークは、ヒャクメへと差し伸べようとした手を泳がす。漂うびみょ〜に気まずい空気。
 それに堪えかねた浅黒い色の肌をした女性、小笠原エミがジークの背中を・・・
「だー!別に事態が好転したワケでもないんだから、とっとと話先に進めるワケッ!」
 ーーーと、一喝しつつ叩いた。
『ゲホッ!・・・ケホ、しかしヒャクメさんは・・・』
 少しむせながらも、ジークが訴える。
 しかし・・・
「あたしの提案と、落ち込んで話の邪魔してる奴の世話・・・どちらを取るかなんて明白よね?」
『いえ・・・しかしヒャクメさん・・・』
 聴き取れなくなるほど弱々しくなってゆくジークの言葉。
「明白よね?」
『え・・・その・・・』
 それとは逆に、エミの言葉には凄味が増してゆく。
 ジークは気力と、そして勇気を振り絞った。
『そうで・・・で、ですが!ヒャクメさんの意見・・・』

「メイハク、ヨネ?」

『イエッサー!』

 軍の上官に対するかのようなジークの答えに、エミは満足げに頷く。何らかの上下関係がそこにはあった。
「あの〜!」
 そんな独特な世界を構築する二人に焦れたかの様に、金髪のバンパイア・ハーフ、ピートが声をかける。
「もういいですか〜!?ヒャクメさんが話を始めちゃってますが〜〜〜!!」
 エミの対応は素早かった。
「ああん!ピートォ〜!」
 先程までの迫力はどこへやら、猫なで声でピートにしなだれかかる彼女、小笠原エミの姿を目にし・・・

『人間・・・恐るべし!』

 その『魔族』の青年は、改めて『人間』に対し畏怖を抱いていたーーー・・・


 夜の街を、三つの影が疾ける。

「美神さん・・・」

 その影の一つは青年。残る二つの影は双子かと見粉う程に似た、そんな少女達だった。
 少女達はそれぞれ、共に一人ずつ更に女性を背負っている。
 青年は、自分の声に答えようとしない女性に、幽かな苛立ちを感じた。
「みか・・・!」
 ーーー途切れる。
 平時からは想像もつかぬ、弱々しい姿。
 誰かに背負われ、うつむき、そして小刻みに肩を震わせ唇を噛みしめているーーー・・・
 平時からは想像もつかぬ、弱々しい姿の彼女。

「ーーークソ!」

 青年ーーー横島は、その苛立ちをそうして、吐き棄てるしかなかったーーー


「どうやら・・・戻ってきたみたいね、まったく・・・」


 ようやく姿を見せた五人。その姿を認めた『彼女』は、呆れたようにそうぼやいた。
「やれやれ・・・もっとシャンとしなさいよね」
 言葉とは裏腹に、どこか軽い足取りで、彼女は五人の側に近寄って行く。
 
「美神さん・・・みんなのとこに戻ってきたっすよ、何かえらい事になってますけど・・・」
「・・・・・・」
 青年の言葉には、相も変わらず答えはしない。
 見かねた黒髪の少女が、声をかける。
「美神さん・・・あの・・・」
「・・・して」
「え・・・???」
 ふいに。美神は顔を上げた。瞳が微かに潤んでいる。
「戻して!て言ったの!今度こそあいつらブッ殺す!そしてーーー!!!」

『令子!』

「今度こそ!ママを・・・ママ・・・」
 美神の声が尻すぼみに小さくなってゆく。
 視線がーーーさ迷う。

 そして。

「マ・・・」

 そこに居る筈の無い、しかし求めていた姿が。

「ママ!」

 そこにーーー在った。



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