ザ・グレート・展開予測ショー

八年後物語


投稿者名:NGK
投稿日時:(02/ 1/25)

第三話:四人の気持ち

「令子ちゃん!待つんだ!!」「美神さん!待ってください!!」
令子は走っている。
どこを?
なんで?
わからない
わからない
「・・・こうなったら実力行使するしかないか・・・」
えっ とおキヌが問い返す前に西条は速度を上げた。
・・・
「とにかく家へ戻ろう」
令子は答えない。
いや、答えている。
心では嫌だと言っている。
でも令子の意思とは裏腹に西条に連れられて歩いていた。

「・・・!?なにすんのよ!!この馬鹿犬!!」
泣きながら蹴りをかますシロにさすがに怒鳴った。
それでもシロは止まらない。
シロはただ訳もわからぬ悔しさに動かされていた。
タマモがドンドン変わっていくような気がして・・・
変わらない自分。
変わりゆくタマモ。
ずっとみんないっしょだと思っていた。
ずっとみんな変わらないと思っていた。
それがタマモが真友に車で送られてきたことによって爆発した。
タマモは化粧をしていた。
タマモは色っぽい服を着ていた。
タマモは・・・
「・・・馬鹿野朗でござる・・・」
シロはそれはタマモに言っているのか自分にいっているのかわからなかった。

ちゃららー♪ ちゃららー♪ ちゃらら らららー♪
携帯が鳴る。
「あ、おキヌちゃんだ」
ひのめは携帯を見ながら言った。
「へー携帯見るだけで誰からなのかわかるのか・・・」
横島は珍しそうに覗き込んだ。
「・・・ただちゃん携帯ぐらい持ったら?いまどきの子供はみんな持ってるよ」
「うーん」
持ったら24時間美神さんにこき使われる様な気がする。
だから持たないのだ。
「はーい♪・・・うん・・・そう・・・わかったそう伝える。じゃ」

「おい、どうしたんだ?」
「ママが死んじゃった・・・」

一週間後
「・・・令子姉ちゃん大丈夫かな?」
ひのめは横島に問いただした。
「・・・さぁな」
興味がないわけではない。
しかし・・・
「西条がいるから大丈夫だろ」
この一週間、西条は令子の側にずっといた。
令子はこの一週間放心していた。
それを支えていたのはまぎれも無く西条なのだ。
「(美神さんは西条がお似合いだよ・・・)」
横島は空を見上げた。
今回の事ではっきりと分かった。
この一週間、自分は美神の力になることができなかった。
これで・・・いい。
「ただちゃん・・・」
ひのめはこれ以上言葉を口にするのはやめた。
こんな横島は見たくなかった。
だから・・・
ぼそっと
「・・・ひのめふぁいや」
尻に火がついた横島は大急ぎで去っていった。

「あっちぃ!何考えてんだよあいつは!」
消火作業をしながら横島はぼやいた。
「うぅ一年前に買ったばかりのズボンなのに・・・」
ズボンを ばさっ と広げて見る。
尻の部分に穴があいている。
「はぁ・・・」
憂うつだ。
別にズボンが燃えたからではない。
美神のこと。
西条のこと。
考えれば考えるだけ嫌になる。
「・・・横島さん。ちょっといいですか?・・・・・・きゃぁー」
「げ!おキヌちゃんか・・・」
横島はここにきて今、自分がどういう状態にあるか気づいた。
ズボンは脱いでいる。
尻に火がついたからだ。
そしてそれはその下にはいているパンツにも。

「令子ちゃん・・・一緒にパリに来てくれないか・・・」
西条は令子の肩に手をかけながら言った。
それを令子はどこか他人事のように見ていた。
「一緒に・・・来てくれるね」
令子はためらった。
西条がパリに行く。
それは分かる。
だけどこれで一緒に行くということは・・・
自分は西条を選んだことになる。
まだ・・・決めきれてない。自分は。
しかし、
「ええ・・・よろこんで」
言葉が出た。
まだ決めていないのだが・・・
意思とは裏腹に言葉が出た。
西条が令子を胸に抱く。
そのため西条がにやりと笑ったことを令子は見えなかった。

「なにを考えてるんだ!あいつは!!」
横島は走っていた。
それは一時間前のこと・・・

「横島さん・・・話があるんです」
「あ、あぁなんだい?」
ズボンおよびパンツを着替え終わった横島はぎこちなく問いただした。
「横島さんは・・・美神さんのこと好きなんですか?」
ぎこちなく水を飲もうとした横島は ぶっ! と吹き出した。
「突然どうしたんだ?」
「突然じゃありません!!」
おキヌは怒鳴った。
「好きなんですか?嫌いなんですか?」
我ながら極端すぎると思ったがおキヌは聞いた。
「そりゃぁどちらかと言えば好きだけど・・・」
「だったら美神さんを助けてください!」
「え?」
「美神さんは今、自分の意識が意思として伝わらないんです!!」
おキヌは一週間前のことを語りだした。

「実力行使?」
「そうだ」
西条が令子を捕まえると今度は令子は暴れ出した。
錯乱しているのか意味不明のことを言っている。
西条は懐から注射器を取り出した。
それを見たおキヌは、
「やめてください!そこまでやることは無いでしょう?」
「なら君はこのまま令子ちゃんをほおって置いていいのかい?」
そう言われるとおキヌは言葉に詰まった。
その隙に西条は注射をする。
「・・・なにを撃ったんですか?」
「鎮静剤さ。一種の」
そう言うと西条は令子の手をつかんでこう言った。
「とにかく家へ戻ろう」

それから一週間令子はずっとああだった。
さすがにおキヌは西条に問いただした。
「西条さんは、美神さんに何を撃ったんですか!?」
「・・・君には関係ないだろう?」
関係ある!そうおキヌは言おうとした。
「チャンスじゃないか」
おキヌの言葉をさえぎるように西条は言った。
「これで横島君を誘ったらどうだ」
と言ってチケットを取り出した。
一週間前に弓から貰ったもの。
令子を追いかけているときに落としたと思っていた物。
「僕は明日パリに発つ」
ドアを西条が開けた。
「そのとき令子ちゃんを連れて行く。君にとっても好都合だろう?」
西条はドアを閉めた。
チケットを握り締めたままおキヌは立ち尽くす。

「・・・という事があったんです」
自分の事を伏せながらおキヌは横島に語った。
「今の西条さん、暴走しています。止められるのは横島さんしか・・・」
言い終わらないうちに横島は出て行った。
「やっぱり横島さんは美神さんのことが好きなんですよね・・・」
極端である。
横島が美神を助けようとしただけでそう断定するのは。
「こんなもの使って既成事実をつくってまで
横島さんを自分に振り向かせようとしていたなんて・・・」
焦っていたかも知れない。
十年近く思い続けても振り向いてくれないから。
美神さんにも悪いことをした。
まさか怪しげな薬品を投与したことを知らなかったとはいえ
西条の思惑に乗った形になった。
「こんなものを使って私は・・・」
チケットを引き裂いた。
「・・・こんなもの!こんなもの!!」
細かく破く。
どれぐらい破いただろうか。
チケットは姿を消していた。

ばさっ
がたっ
ドアが切り裂かれる。
「な、何事だ!」
西条が表に出てくる。
「西条」
「横島、君が・・・」
西条は横島を見た。
横島の顔は怒りに震えているように見える。
「西条・・・話がある」
「いいだろう」
奥から令子はそれを黙って見ていた。

「令子ちゃんはこのまま連れて行く」
「この方が彼女は幸せだ」
「悲しみは時が癒してくれる」
西条の言葉を横島は断片的に聞いていた。
間違っている。
そう思った。
「西条・・・てめぇ本気でそう思っているのか・・・!?」
その一言に西条は顔色を変えずにそうだと言った。
「君なら幸せにできるというのかい彼女を」
西条の胸倉をつかんでいた横島だったが、
その一言で西条を放した。
「君には愛が足りない・・・」
西条は場を去りながら、
「(僕は間違っているかもしれない。だが愛のない君に渡すわけにはいかない)」
と思った。
もし横島に愛があるのなら西条の言葉に動揺するはずも無い。
そう西条は自分に納得させた。


次回予告
「ただちゃん、ホントにこのままでいいの・・・?」
ひのめの問いに横島は言葉を返さない。
「さ、令子ちゃん・・・行こうか」
西条と令子はロビーへと向かった。
次回 「八年後物語」 第四話:地獄への道
お楽しみに!

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