ザ・グレート・展開予測ショー

地下鉄にて -西条&十字-


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(02/ 1/25)

東京の地下でAM2:00。
地下鉄の終電も終わった。少し前までの喧騒は嘘のようである。
「電車も終わったんだ。問題ねーだろうな」
タバコの火を要求するのは十字という男。
吸血鬼専属のGSと言えばいいだろうか。WHO所属のハンターである。
背丈は西条よりも少し上であろうか。
黒いコートの中には名前の通り十字架がアクセサリー。
「そうだな、ほれ。旦那」
西条が差し出したライター、否ジッポーは英国王室御用達の紋の入る超一流品。
「英国製か。ライターはアメリカ製に限るぜ。長持ちだし」
「アメリカ製?センスのダサいライターだぜ?とは言っても、な」
誰が捨てたのか、西条の足元に100円ライター。
「たりめーよ。日本のライター程じゃない。あれは煙草を駄目にする」
「同感だ」
二人は煙を吐く。
地下鉄駅の電灯、非常灯以外は消されているので、手を伸ばした爪先は見えない。
「地下鉄に吸血鬼か。日本もおかしな国になったぜ」
闇に近い駅である。西条が煙草を捨てる。
「来た、な」
西条が足元のライターを虚空に蹴ると、
『キッ!』
こうもりであろうか。飛行物体が落下する。
「ナイスシュート」
十字はいいながら、煙草を投げる。
『ギギャッ!』
火がある分、投球筋は目で確認出来る。間違いなくこうもりだ。
「ナイスピッチング」
燃え上がるこうもりを確認すると共に、西条は剣を、聖剣ジャスティスを抜く。
「本格的に来たな、団体さんの御付だ」
おかしな電車が来た。二両変成のオンボロ電車である。
「ちっ。吸血鬼さんか」
ボロの割にはスピードを出して駅を通過しようとする。
「いくぞ!西条」
「おぅ!」
二人は躊躇いも見せず、電車と平行して走る。
西条が先に走って扉に剣をあてる。
「やッ!」
八文字に剣を振る。見事、電車のドアが吹き飛ぶ。
「ナイス、スイング!」
十字は吹き飛んだ扉に身を屈めて避けた。電車に乗りこむ。
乗りこんだと同時に。
「ハッ」
気合と共に聖なる波動を召喚して身の安全を確保。1秒もかかっていまい。
十字も扉から身を乗り出す。
「ナイスキャッチ!」
転がるようにして西条も電車の中に。
目の前には吸血鬼がいる。いや後にも、横にも。
「西条!」
叫ぶ十字に対して西条は剣を縦横無尽に振るう。
「転がりながらでも、剣ってのは有効だ、ぜ」
とばかりに。
「焦らすな。まったく」
立ちあがるのを手伝った十字。西条は車掌室を見る方向に。十字は運転席を見る方向に。
「ナイス、スライディングって言うべきだったな。十字」
そんな冗談を言いながらも西条の剣は動く。
十字にしても同じだ。ネックレス状の十字架を的確に吸血鬼にあてている。
「後には4匹ってトコだ。十字」
「こっちは・・十匹ってトコロだな。西条。そっちは任せるぜ」
「OK!」
躊躇を見せる吸血鬼に対して、
「こちらから、いかせてもらうよ。諸君には恨みはないがね!」
西条は剣の衝撃でつり革を斬る。
対して痛くもないだろうが生理的に顔を隠したくなるのは人間だけではない。
『ギャッ』
『グハッ』
左右に二太刀。確実に仕留める。
西条の動きに合わせて十字も後に下がる。
チャンスとばかりに前方の吸血鬼は三匹。飛びかかってくる。
「馬鹿め」
本物のロザリオをポケットから出して聖なる気を発散させる。
こちらは断末魔すら出す余裕はなかった。
後の二人は逃げるように背中を見せたのが、終りだ。
一人は首を刎ね、最後の奴には、
「突きっ」
西条、体を伸ばして最後の一太刀。その反動で急回転する。十字は同時に更に後に飛ぶ。
高くもない車内で見事に前後交代となる。
「ナイスジャンプ。十字」
「ナイスラン。西条、さてと。奴との再戦も近いな」
一度、退治したことのある邪悪な吸血鬼である。
だが髪の毛が残してしまった事から回復をしたようである。
「・・地下鉄の飛び降り自殺で出た血を使って回復した、のか。厄介な」
報告書にはそうあった。
運転室には、ピアスを馬鹿みたいにしているストーカーがいる。
良く見ると足元にがんじがらめにされた女がいる。
「性懲りもなく、来たのねェ。WHOの・・なんといったかな?おい。亜麗ちゃん?」
がんじがらめの女、これも吸血鬼であるが。
「・・・・」
答えない。というよりも、答えるだけの体力がないのだが、
「なんとかいったらどうなのよ!亜麗ちゃん!!」
力任せに蹴飛ばす。
口から大量の嘔吐物が出た。
「いい気味ね。う・ら・ぎ・り・も・の、ちゃん」
ほくそえむストーカーに対して、亜麗の瞳だけは絶望にとらわれていなかった。
「あ・・あんたも・・おしまい・・さ、ウチのが・・きてるんだか・・ら」
癪に障ったのか、再度力任せに。
「ぐっ・・・ぅう」
気絶したようである。
だが、ストーカー、亜麗を無にする事はしない。
「忌々しいわね。どーして吸血鬼がクリスチャンの儀式を行なえたのよ」
奇跡としか言いようのない事実。だが、その代わりに吸血鬼としての力を失った。
そんな会話をしていた時点では、もう先頭車両にさしかかっていた。
古いタイプの列車の事、前車両の様子は解らない。
それは同時に後ろの車両がどうなってるのかも、わからない。
巧くかみ合わない鉄同士が奏でる嫌な音がなった。
『ギぃーイ!』
功を逸った吸血鬼が連結ドアを開ける。1つ目。そして二つ目。
『!??!』
後の車両には死屍累々の吸血鬼以外誰もいない、
事の確認と大半の奴が後の車両にやってくる。最後の奴が連結部に指しかかった時、
「ギガァ・・ガッ!」
首が飛ぶ。
連結部の外側上部から刃が出ている。同時に連結部の弱い部分全部に刃が走る。
「よっと!後方電車はここまでが終電だよ!」
西条、窓から電車の天井に渡って連結部分を破壊していた。
『なによ!アイツ、十字ちゃんじゃないじゃない!』
ストーカーも確認出来る位置にきている西条。
「残りは・・三人か、おい、十字。客車両は任せな!」
地下鉄がカーブにさしかかり、揺れた時、西条が地を飛ぶ燕(ツバメ)の如く床を蹴る。
右にいたのは、抜打ち斬り、左にいたのはその反動で。
「なんたる!誰もつかえないじゃないのよ!」
西条を見据えるストーカー。その後には、
「おい、ストーカー!」
十字の声と同時に足が目の前に。
事前にフロントガラスを脆くしていたようだ。
「ゲブッ!」
ストーカー、つんのめったと同時に客車両へと転がり込むが、
強引に亜麗をひったくっている。
「ナイスキック」
西条の台詞は客車にいた最後の吸血鬼の頭蓋骨を貫く太刀が終わった後、発された。
「さて・・と残りは貴様だけのようだな。ストーカーとかいったか」
吸血鬼としては悪くないネーミングセンスだな、と付け加えたか。
十字も最後の技とロザリオに気を挿入している。
『ま、待つのよ!この女がどーなってもいいわけなの?』
亜麗を盾にして、じわじわと、扉に近付く。
ストーカーは盾にした亜麗首を締めたことによって、呼吸が困難になり意識が戻った。
「・・はっ!やれっ、十字!」
台詞に対して首を振る十字。
「何をいってんだよ。マイラバー。お前もしんじまうだろーがっ!」
横を指す。西条への指示だ。
突然電車の計器を拳で叩くと同時に外へ。
急ブレーキで亜麗を離してしまう。
「きゃっ」
後方にやってくる亜麗を抱きしめてから西条もあらかじめ開けておいた扉から出る。
一人車内に残されたストーカーである。電車事体はまだ走っている。
電車後方には西条と亜麗。そして十字もやってくる。
「ナイスキャッチ!西条。大丈夫か?亜麗」
荒い息を整えてから、十字に抱きつく。
「うえっぐ・・・おそいよ・・・でもストーカーの奴が!」
十字はいささかも慌てず。西条は懐に手をやっている。
「西条。最後のナイス、決めてくれよ」
「あぁ、やっぱ拳銃はワルワーに限る、な!」
銃声が地下の事木魂する。
金属を弾く音がした後、100メートル先で爆発。
ストーカーの断末魔もかすかに。
暫くすれば,スプリンクラーが発動するであろう。
「ナイス、シュート!」
十字が手のひらを出す。西条もその手に合わせて、甲高い音を出す。
十字、一息してから、
「西条、ライターもってるか?」
首を振って、後ろを指差す。
後方車両も燃えている。
「おっそろしー、ライターだったんだな。爆弾代わりか?」
おどけて西条。
「あぁ。MI6は、ジェームス君から借りたものさ。だけど火ならな」
前後どちらにも有るじゃないかとばかりに。
「・・・。電車の火で吸う煙草か。美味いのか。不味いのか」
「最後の一仕事だ。確認しようじゃないか」
すると亜麗も、
「じゃ、私も。銘柄は何を吸ってるの?」
そんな事、対した問題では無い。

-FIN-

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