Endless story (3−A)
投稿者名:アストラ
投稿日時:(02/ 1/23)
今回の分岐ではシロが斬られます。正直言って、書いてる途中『これはシロへの冒涜だ!』という内なる声がこだましていたのですが、シロをひいきしすぎるのも公平さに欠くということで、このようになりました(この展開で嘆いた者約二名)。誤字、脱字があるかも知れませんので、その時は教えてください。
「な・・・に・・・」
シロの体中にずん、という衝撃が駆け巡り、肩から背中にかけて熱い物が走った。
つい反射的に振り向いてしまったシロの目に、折れた青竜刀の柄の方と、刃の部分を持っているアモックが見えた。刃の部分を持った手は目も当てられないような状況であるはずなのに痛みを感じていない様子だ。
アモックは両刀を大上段に振りかざし、雄叫びとも絶叫とも取れる声を上げて一気にシロの体に振り下ろし、そのまま一気に下から斬り上げた。
シロは自分が悲鳴をあげているのが分かった。そして意識が急速に遠ざかり、心臓の音が不気味な程鮮明に聞こえ、体から赤色の鮮血が迸り―――仰向けになって倒れた。
「シロ! ・・・・・・! ・・・・・・!」
何て言っているのか聞き取れない。顔の輪郭が分からない。先生・・・声帯が震えただけで声が出ない。先生・・・先生の体ってこんなに温かったんだ・・・。
声にならない言葉じゃ伝えきれない。―――もう一度、先生と話したい・・・。
「シロ! シロッ!!」
横島はシロの体を必死に揺り動かしたが反応は無かった。ちなみにこの時瞼を持ち上げれば瞳孔が光に反応し、眼球が上向きにならず正面を見据えていたはずだが、もはやそんな余裕は横島には無かった。
・・・・・・また、大切な人を守れなかった・・・・・・
「フン、そう嘆くんじゃねぇよ。お前もすぐに同じところへ向かわせてやる。アモック、殺れ」
アモックは横島に飛びかかり、刀を振り下ろした。が、先刻まで微動だにしなかった横島が常識の範囲外の速さで振り向き、霊波刀を目にもとまらぬ速さで動かして、青竜刀を粉砕した。
「・・・・・・?」
予想以上の動きにアモックは動きが止まった。それを見て横島は平手打ちを食らわせるが如く霊波刀をスイングしてアモックを弾き飛ばし、後ろで見ていたレアックもろとも隣の部屋に吹き飛ばした。
横島は後ろを振り返り、奥で倒れているシロを見つめ、ふっ、と笑い、上着を脱いで体に被せ、隣の部屋に入っていった。
そして文珠を二つ出し、"爆"と"滅"の念を込めると、それぞれを左右の手に持ったまま"爆"をアモックに、"滅"をレアックに直接押し付けた。
おそらくその時の横島を美神が見れば、『エウメニデス(復讐神)』のようだと言ったであろう。
ビル全体を揺るがす大轟音がし、ビル付近を震度二に匹敵する揺れが襲った。横島、アモック、レアックは二階の部屋の床を抜き、一階の床をも突き破り、土に埋まった。いや、正確には横島だけが埋まっていたというべきであろう。アモック、レアックは消滅していて、すでにそこに存在していなかったからだ。
横島は霊波刀を伸ばし、辛うじて残っていた二階の床を掴んで、上まで登った。
登りきると床に落ちていた刀を拾い、シロのところまで歩みよりって、片膝をつきシロの顔をまじまじと眺めた。
・・・・・・いつもはサンポ、サンポと纏わりついてきてうるさかったけれど、こんな事になるならもっとおねだりを聞いてやれば良かった・・・・・・
「シロ・・・・・・ごめんな・・・・・・」
上体を起こしてシロを胸にかき抱く。手を髪に回して梳くように撫でる。
「・・・・・・??」
横島は胸に抱きすくめたシロの体がいまだに温かいことに気付いた。驚いてシロの口元を見ると――白い息を吐き出しているではないか!
横島は大慌てで文珠を出し、"回"、"癒"、"蘇"(回復、治癒、蘇生)を込めた。霊力の使いすぎで意識が混濁し、目が泳ぐ。足元がふらつき、シロがぶれて見える。でも、そんな事は構わない。シロが元気になってくれるならこれぐらいの苦痛は耐えられる。
―――もう二度と、大切な人を失いたくないから―――
「せんせ・・・ぇ・・・?」
「シロ!」
横島の頬を涙が漣漣と伝った。シロはそんな横島を見て動揺を隠し切れていなかったが、優しく微笑むと手を横島の首と腰に回し、ゆっくり舌を近づけて、壊れ物を扱うようにそっと顔を舐めた。
「シロ・・・本当に・・・本当に良かった・・・」
直後、横島は霊力を使い果たして体をシロに預けた。シロは困惑、あるいは照れた表情をしたが、やがて横島を背負うと事務所への帰路を辿り初めた。
―――先生、拙者、先生のこと好きになって本当に良かったでござるよ―――
帰り道は、行き程寒さを感じない。だって、先生の温もりを感じていられるのだから。
完
お知らせ;横島が斬られた場合のストーリー、一度は完成したのですが、大幅な設定変更を余儀なくされて現在書き直しています。
今までの
コメント:
- いたけしさん、ありがとうございます。
ご指摘、ごもっともです。まあ、最初は地域でなく村と設定したのですが、いまいちピンと来なかったので範囲を拡大してしまいました。ピー・タイ・フーは昔読んだ某本に載っていたのを見て、「これだ!」と。
これからもよろしくお願いします。 (アストラ)
- Iholiさん、
ありがとうございます。
あのウンチクぶりに対する評価は正直不安だったのですが、あのように言ってもらえると光栄です。分岐についてはもう後には引けないので、余力を振り絞って書きたいと思います。 (アストラ)
- 黒犬さん、
ありがとうございます。
私の書くシロを愛らしいと言ってくださって喜ばしい限りです。
黒犬さんの書くシロに焦がれて(狂&萌)書き出したので、勝手な願いとは存じておりますが、よろしければお師匠様と仰がせて下さい。 (アストラ)
- 猫姫さん、
ありがとうございます。
格好いい二人を醸し出しつつ、戦闘物と恋愛物を出来る限り織り交ぜるというのが大元の考えなので、それを目指してこれからも書いていきたいと思います。 (アストラ)
- 成る程……こういう終わらせ方もあるか……巧い。
でも欲を言うならアモックとレアックの撃滅シーンにはもう一捻り欲しかったかな……? て、言うほどの力量が私にあるわけでもないのですが(爆)
さて横島編、どのようになるんですかね〜…… 楽しみにしてますよ〜。 (ロックンロール)
- ロックンロールさん、
ありがとうございます。
要望より、横島編の方で撃滅シーンをよりリアルにしようかと思考しています。
ただしこうなるとシロのひいき倒しになりかねないため、横島が活躍するのは次回作ということでお願いします。 (アストラ)
- ・撃滅場面案:「爆」と「滅」の2つを双極文珠1つで表現し行使する事で、
怨敵と自身に激しい怒りを覚えた横島の本気っぷりをアピールする。
……とか(笑)。
傷付いたシロをいたわる横島の姿から「本当に彼女の事を大切に思っているんだな」と思わせて呉れる表現が実に巧みに使われていると思いました。
さて、こうなってくると分岐Bの方も楽しみですね〜。大変そうですが、どうか頑張って!(加油) (Iholi)
目を覚ますと天井が見えた。見慣れた天井。当然だ。毎朝毎晩、寝起きのたびに見上げているのだから。
いつもの天井。いつもの部屋。いつものベッド。
―――そこに寝てる自分。
「あれ?」
何も不自然なことはないはずなのに、でもやっぱり何かが引っかかる。
ぼんやりとした頭の中で、何かが出口を求めて渦を巻いている。
「えーと…」
ゆっくりと記憶を整理する。朝起きたところから順番に。
起きたら雪が降っていて嬉しかった。おキヌちゃんのご飯は相変わらず美味しくて幸せだった。タマモにからかわれて悔しかった。先生と二人だけの仕事で嬉しかった。先生と仕事で……
「――――――っ!?」
いきなり頭の中がはっきりした。そうだ、先生は。先生はどうしたの?
敵を倒した後、横島を背負っての帰り道。その途中からが記憶にない。 (黒犬)
- 「せ、先生は…!?」
慌てて起き上がろうとして、身体がひどく重たいことに気づく。血が足りない。斬られた傷そのものは、横島の全霊を込めた文珠の効力できれいさっぱりと消えていたが、流れ出た血液が傷口に戻った訳ではない。
「先生っ、先生ーっ」
必死にその名を呼ぶ。彼のひとを求める。
涙が零れた。胸が苦しい。そして何より―――怖かった。
彼の姿が見えないことが。彼がここにいないことが。
傍にいて。いなくならないで。シロを置いて行かないで。
恐怖に身をよじる。頭がぐらぐらして吐き気がした。視界が歪んで気持ち悪い。
思わず叫び声をあげそうになって………ふと気がついた。
ぬくもりに。右手を包み込む、暖かなぬくもりに。
「…せん…せぇ……」
(黒犬)
- シロの右手を握ったまま、ベッドに上体を預けて眠り込んだその姿。着替えすらしていないのだろう、汚れてズタズタのままの着衣。その寝顔にくっきりと残っているのは、間違いなく涙の跡。
「先生………」
胸が詰まるよ―――こんなに好きで。
始めて出逢ったあの日から、この人に惹かれていたんだ。今は、そう思える。このひとのまなざしに、このひとの声に。
―――あなたの、全てに。 (黒犬)
- 「………♪」
シロはもぞもぞと体勢を変えると、眠りこける横島の頭をそっと胸に抱きしめた。
しばらく寝顔をいとおしげに眺めてから、勇気を出してそのまぶたにくちづける。
涙がでるよ―――嬉しすぎて。
あなたのぬくもりはこんなにも暖かくて。
彼の匂いに包まれながら。大好きでたまらない匂いに包まれながら。シロはゆっくりと目を閉じた。
眠ってしまおう、このまま。このひとのぬくもりを感じながら。
なんだかとっても気分がいいから。幸せな夢が見られそうだから。
「先生、おやすみなさい♪」
〜Fin〜 (黒犬)
- ↑ま…また発作的にこんなものを書いてしまった・・・・・・。
しかもトランス状態で・・・・・・。
アストラさん、ごめんなさい。この話のラストに萌えすぎて、思わず暴走してしまいました。
迷惑だったら突っ返してください(←どーやってだ!)
もし、本当にもし、気に入って頂けたならプレゼントとゆーことで(爆)
3−B(横島斬られ編)にも期待してます。 (黒犬)
- Endless story (3−X)
「させはせん!! させはせんぞーっ!!」
レアックの顔が驚愕に歪んだ。
無理もない。突然、窓から飛び込んできた真っ黒な犬が、アモックの振り下ろした刃に自らの体を晒してシロをかばったのだ。
「なん…とか…間に合った…か……」
そう言いながら、己が流した血だまりの中に沈む黒犬。
それを見るレアックの顔がニヤリと歪む。
「ふん。そのざまではもう助かるまい。どうやらその小娘を助けに来たようだが、これでは斬られに来たようなものだな」
「ああ、その通りだ」
「何ぃっ!?」
「俺の仕事は斬られるところまでなんだ」 (黒犬)
- ごぼっごぼごぼごぼごぼっ ずるずるずるずるるるるぅぅぅぅぅぅっ
黒犬の体から流れ出た赤い液体が、意思を持ったかのように蠢き出し、アモックとレアックに襲い掛かる。
「こ、これは・・・・・・JUN博士の開発した生物兵器“G−A”!?・・・・・・貴様、こんなものを体内に・・・」
「意外に多いんだぜ・・・・・・シロファンはよ・・・・・・」
鋼の刃も霊術も、微生物の集合体には全く無力だった。
成す術もなく“G−A”に飲み込まれて消えるアモックとレアック。
全てが終わった後にその場所に残ったのは、満足そうな表情を浮かべた一匹の黒い犬の骸だけだった。
「……な、何が起こったんでござるか?」
「……さ、さあ?」
完 (黒犬)
- ↑暴走その2。アホだ俺・・・・・・。
アストラ様、G−A−JUN様、平に平にお許しを・・・・・。 (黒犬)
- ・・・・・・・。・・・・・・。旦那??
今回は西条とタバコは吸わなくて済みそうだな!!
よかった。よかった。 (トンプそん)
- そしてまた、本人の代わりに来ました。
密かに設定変更を余儀なくさせてしまった一言を言った張本人です(爆……いや、一応そう一言を言った理由もありますから………(汗)
…っと、コメントありがとうございます。
多分、分岐Bの方も近い内出ると思いますよ。(ボクと違って投稿ペース早いなぁ……)
黒犬さんへ
ボクも黒犬さんが書いたもの(1つ目)を読んで萌え狂ってしまいました(アストラもそうなりますよ。)
2つ目の方はひょっとして以前、猫姫さんが見つけたのを増殖させていたんですか?
2つとも、すごいおもしろかったです。(後で猫姫さんに蘇生させてもらいましたか?) (G-A-JUN)
- 横島君、大活躍!
シロちゃんもらぶらぶでかぁいいの〜♪
↑お兄ちゃん・・・気持ちは良くわかるけど、その前に自分の書こうよ・・・(汗) (猫姫@にゃー♪)
- ぼこぼこぼこ むくっ パラパラ・・・・・・
むう、この季節は墓場の土が冷たくていかんな。………へっくしょいっ!! (黒犬@復活)
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