ザ・グレート・展開予測ショー

変則トリオ 初仕事!!(シリーズNo2)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(02/ 1/22)

運転は美神に比べれば大分に大人しい。
「バイクなら飛ばすケド、ね」
「そうっすよねー。バイクはいいっすよね。男のロマンスよ!」
後ろの席にいる横島が身を乗り出すようにしてエミに触ろうとすると、
「こらっ。ホントを言えば車の運転には自信が無いワケ。大人しくしていて!」
言うや車が奇妙な揺れ方をする。
「こらっ、小僧ワシはお前なんぞと心中はゴメンじゃ大人しくしとれぃ」
法定速度を守ってワゴン車は進んでいった。
エミが車を止めた。
「ここ、なワケね。事件現場は」
まったくもって、である。そこそこの緑地公園の中で遊んでいた物達は。
「まるで芸術の森美術館じゃのぉ」
手に顎をあてて唸るカオス、最もである。
何時ぞやさるデパートの依頼にて人々が石化した事件を扱ったことの有る横島が。
「ブキミッすよね。ほらあそこには」
指差す先には鳥が石化している。
加え、樹木の一部も石柱の如くである。
「なるほど。デモ、この公園にいるコトは確かね。よし、結界張るよ!」
気合入れにと、顔を叩くエミである。
「こ、この公園全体に決壊っすか?」
驚く横島である。聴き帰すエミも意外な問答であったか。
「は?おたくのれーこちゃんも仕事前は結界はるでしょ?」
「いや、張り巡らす、つーよりも、自分を守るために小さい物を作るってのが・・」
何時もの事である。
「そう。でもワタシのやり方に合わせてもらうワケね。といってもワタシは注連縄なんかはいらない、ケド」
車からチョークのような物を出す。そして本を二人に渡して。
「はい。大変だけど、このホンに有る通りの形を公園のぐるりに書いてね。
諸読者は小さい頃、『けんけんぱ』と言う遊びをやった事があるであろうか。
丸い形を幾重にも複雑に書いてある結界を張る事になるらしい。
カオスは文句も言わずやっていくが、若いゆえか、それとも美神の方法になれている所為かは、解らぬが、
「あのー、ンな事してる前に逃げられるんじゃあ」
小五月蝿く感じたエミが睨む。
「わ、わかりやしたよぉ」
と、文句もたらたらで結界を張っていく。
当然エミもやっているので、しょうがないといえば、そうなのだが。
「大きくなってなんでこんな事を・・」
視界にエミがいなくなった頃に一人ごちた。
集中出来ない横島の場所が後々の禍根になることであろうが、若い者にありがちである。
冬の事、夜が来るのも早い。ゆえに作業が終わったのも、夜が老けた。
「ぶるぅ。さみぃ。さむぃ」
と、横島が戻ると、カオスもエミも作業は終わったと見える。
「ナニやってるのよ。オタク。なれてないから一番短くしてやったってのに」
文句の一つでもいいたい所であるが、ここは我慢として。
「すいません・・すね、馴れてなくて」
ふてぶてしいのが見え見えだが。
「まっ。いいわ。ほら。コーヒーでも飲むワケね」
少しは額の皺が薄れたようだが、
「ありがとーっす・・」
残念だが高校生にゃ早い飲物であったであろうか。
カオスにいたっては何滴かブランデーを入れていたとか。更にそいつを飲んだもんだから。
「ゲホ。ゲホゥ」
まだまだ子供じゃのぉーとカオスは笑うが、コーヒー派のエミにはどうもである。
「・・たく。能力はともかくまだまだおこちゃまなのネ」
タイガーと比べているのであろうか。
「さぁ、中に入るよ。気合を入れて!」
「ほほい、いくぞい」
「あのぉ、エミさん?その格好で?」
以前横島が仲間に入った時は、凄い格好であったが、今は特に化粧もしていない。
「れーこちゃんがパワーアプしたみたいに私もしてるワケね。第一」
冬にあの格好じゃ風邪をひいてしまうワケである。
「そりゃ、そうっすねー」
あまり気合の入ってない横島に眉を潜めていたカオスも。
「こりゃ、小僧。もうちっと気合いれんか」
甘い相手じゃないぞい、と厳かに。
ぶーたれる横島に対してエミはちょっと嬉しそう。
「解ったっすよ、んじゃ行きますか!」
先ず始めに公園に入ろうとする横島であったが、
「こらっ!オタク何勝手なコトを!」
襟首をひっつかまえるエミである。
「危ないンだから、無防備で行くな!」
つんのめった横島が呆れたと言うか、
「あのぉ!慎重過ぎませんか??」
カオスが指を指す。
「御主、若し入っておったら、下手すりゃ石化じゃったな」
「えっ?」
気が付かなかった。先ほどまで青々としていた草木が見事に彫刻である。
「うっ・・」
横島に戦慄が走る。
「もう一度、いっておく。相手は手負いの獅子に匹敵する、油断するでない」
何時もと違うキれるカオスにゃ驚のエミであるが、
「それだけ、恐い相手ってワケね。目ェさめて?」
すると横島、自分を拳をくらわせて。
「すまねぇっす。ちと増徴してました」
二人の顔が微笑んだ。
「さて、行くなワケね。ほらコレきるワケ」
とエミが出したのはチョッキであった。
「霊的加工がされてる服ですね」
だが、カオスは少々不安があったようで、
「言わば・・奴は魔法の域じゃよ。どうなるかのぉ」
「とは、言っても対応としては現状で悪くないハズ。行くよ」
エミを先頭に入っていく。
結界の所為であろうか。公園内は気温、湿度が春の如きである。
俯き加減の横島が綺麗な羽を見つける。
「エミさん?コレって」
「コカトリスの羽なワケよね。たしか魔法の世界ではかなりの良薬とか」
「うむ。実は石化を直す薬として、役にたつよじゃな。魔鈴とやらならしっとるじゃろて」
今は石化した人々の回復は後回しにして、直接根幹を叩くのが任務である。
当然ながら羽は重い。成分が石なのである。
「羽の向きから見て、敵は公園の中心に向っているみたいネ。行くよ」
エミが指示を出す。
「申し訳ないケド。二人私の前に、一発で決めたいから、今から霊力を集中するワ」
それだけ言うと、なにやら呪詛を唱え始める。
「・・そうじゃよな。一挙にやるべきじゃ。敵に攻撃をさせてはいかん」
カオスもボタンに手をかける。
横島もその雰囲気を取って事前に霊の剣を出そうとするが。
「小僧は・・霊力そのものが低いのじゃろが。無理をするでない、圧縮タイプじゃろうが」
はぁ、とカオスの助言にしたがって、横島は特に目を凝らしていた。
故に気が付いた。
「なぁ。オッサン。良く見るとピンクと赤の羽があるぜ?」
カオス、ボタンを外すのを一時やめて、
「・・・雄雌の番(つがい)じゃろうな、これはこれは、大変じゃぞ」
エミに忠告するがもう耳にはいらないようだ。
「これは、きつい仕事になるようじゃぞ、坊主」
「そうっすね。じゃあ、どうしるんすか?」
カオスは即答。
「雄じゃな。わし等が狙うのは、番であれば弱っていよう」
「へっ?どうして」
「それはのぉ。わしの仮定があっておれば、子作りじゃろう。雄は弱っとるし」
メスは気が立っている。自然の摂理である。
「なるほどー。して色が濃いほうが雄っすか?」
「いやいや。色が薄いの雄じゃよ。生物はすべからく女の方が強いじゃろうが」
見事に納得する横島である。だが、感心している暇はない。
「オッサン!来た、色の薄い方が!」
「なんじゃとぉ?」
闇目は横島のほうが聞く。音もなく無気味な目をこちらに向けているのが一匹。
「なるほど、弱ってるっすね」
慌ててるのがカオス。
「不味い!くるぞい!」
老人には似合わず素早い動き。
横島とて、そんじょそこらの男ではない。いささかばたついたが、
「うわっとぉ」
コカトリスの雄が吐く息は臭い。直接浴びる事はないが。
「あ、あれでよわってんのかよ!」
大地までが石となっている。
再度息を吸い込んだ時、すさまじいまでの風速が観測出来る。
そこがねらい目である。
「いける。『霊の盾』」
口に爆弾ともいえる物体を目掛ける。
同時にカオスもコカトリス(雄)の顔に向って霊気の波動をぶちかます。
目と口が塞がれた時、
「おどき!」
エミからすさまじいまでの波動。
飛び立つ事も敵わないコカトリス。
重い物が落ちた。
「産卵後の雄だったから、簡単にいったの。じゃが本当に恐いのは・・」
メスなのである。
 
次号、意見分かれに続く。

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