ザ・グレート・展開予測ショー

Endless story (2)


投稿者名:アストラ
投稿日時:(02/ 1/19)

今回の話は横島とシロが主役の話です。戦闘シーンに力を注いでみましたので、そこらへんに注目してみて下さい。


「そうか・・・ピー・タイ・フーや青竜刀の奴を操っていたのはおまえでござったか」
 前に出ようとする横島をシロが手で制してその男に詰問する。
「ほう・・・気付いていたか。まさにその通りだ。建物の中に入ったときから探りを入れていた様子だったからいずれ気付くであろうと思っていた。どうやら・・・」
 男は一旦視線をシロから逸らし、大きく穴の開いた壁を凝視し、ゆっくりと目線を戻す。
「アモックやピー・タイ・フーを撃破する力量といい、罠だと気付いた洞察力といい、貴様らは今まで来たGSの輩とは少しばかり出来が違うみたいだな」
 男は黒曜石のように光を失った目をシロと横島に注いだ。二人はその視線を見るや否や生理的嫌悪感が募り、たまらず目を逸らした。
「アモックというのはこのレアック様が作り出した最高級の殺人鬼だ。普段は極大人しい人間も厭呪術(人を呪う術の事をさす)でいとも簡単に狂暴になる。・・・厭呪は高度な技量が必要だから誰にでも出来る術ではないが・・・」
「そうか・・・お前・・・呪術師だったのか」
 横島は自らが壁に近い方に立ち、壁の奥にいるであろうアモックの奇襲に備えシロを庇える体制を整えた。そして、それは無意識の内の行動だった。
「正解だ。青竜刀に念を込めて奴に渡した。受け取るなり奴は狂いだし、瞬く間に家族を惨殺した。一晩のうちに奴の住んでいた地域の人間全員が死に絶えた。奴の普段の素行が極めて模範的だったから奴が犯人とは思われなかった。そして奴の働きで名高い呪術師にのしあがる。それこそが俺の最終目的だった」
「ふ・・・ふざけるな! お前はそんな身勝手な理由だけで何人もの人の命を奪ったのか!」
 そう叫ぶとシロは体を屈めて地面すれすれに飛び、レアックの足に切りかかった。されど外見と裏腹にレアックは軽やかに身をかわし、すれ違い様に蹴りを打ち込もうとする。が、シロは反転して後ろに下がることでそれを回避し、着地すると両足と左手で地面を蹴って腹に霊波刀を突き刺した。
 ところが、刺した瞬間にふっと感触が無くなり、レアックは忽然と姿を消した。直感でシロは上を見上げたが、そこにもいない。壁のほうを見るとピーたちに体を支えられて壁の奥の方へ尋常でない速さで引き返すレアックの姿があった。
「まずい!」
 横島は横っ飛びになってシロにタックルし、地面に押し倒した。ワンテンポ遅れて二人のすぐ上をピーたちが投げた霊刀が一斉に通過した。
「さすがだと誉めてやりたいところだがそうもいくまい。お前ら、この人数(霊数?)とまともに遣り合って無事に済むとは思っていまい?」
「無事に済むとは思っていない。でもな、お前ら全員を除霊してやるくらいはするさ」
 横島は立ち上がって右手に霊波刀、左手に文珠と迎撃態勢を整えた。シロもそれに呼応する形で霊波刀と真剣を構えた。
「ふむ・・・霊波刀のほかに真剣も保有していたか。アモックには霊波刀の霊的な攻撃よりも真剣の物理的な攻撃の方が効果的だ。何せ元々は人間だからな。アモック、あの長髪を殺れ!」
 アモックは指示を受け、青竜刀を頭の上でぶん回しながら真剣をシロの所まで一足で行き、裂帛の気合と供に青竜刀を振り回した。シロは腰を捻ってかわすと同時に側面に迂回し、刃を立てて青竜刀の腹を打つ。水晶をぶつけ合うような鋭い音を立てた。
 アモックは横薙ぎに刀を払い、休む間も無く二撃、三撃と引っ切り無しに斬り込んで行く。シロはそのたびに身を屈めたりあるいは飛び上がったりしてかわしながらうまく捌き返し、相手の体力を消耗させていく。身のこなしは軽く、さながら飛鳥のようでもあった。一方アモックは元が脆弱な人間だったので、精神が呪いに蝕まれていても体力の限界はある。青竜刀をぶん回しながらぜいぜいと息をしているのが容易に見て取れた。そして刃を交える事数十合。痺れを切らしたアモックが一気に片をつけようと刀を振り下ろし、それが勢い余って床に埋まった時、初めてシロが攻撃に転じた。素早く横に回りこみ、青竜刀の腹を再び打った。当てた場所はさっきの位置と微塵も違わず、スピードとパワーがより増幅された渾身の一撃が炸裂し、青竜刀の刃は真ん中から真っ二つに折られた。
意外と知られていない事だが、刀の腹というのはあまり強度が無い。刃を立てて闘うのが基本であるから必要最低限の強度があれば充分なのだ。シロはそこを狙い、アモックが隙を見せるまでひたすら待ちつづけ、千載一遇のチャンスを見逃さずに斬りこんだのだ。
 シロは続けて袈裟斬り(左肩)に一太刀いれ、返す一手でアモックの手の甲を斬りつけ、最後に鞘でアモックの顎を突き上げ、最初の罠のお返しと言わんばかりに壁に放り投げ、すぐさま踵を返して横島のところへ向かった。


「横島先生!」
 先程まで文珠と喚起(悪魔を呼び起こす事)のやりあいだった横島とレアックの動きが止まった。
「シロ・・・あいつを倒したのか?」
 尋ねる横島の声はいつものとは程遠かった。シロが闘っている間中、文珠を使ってレアックやピーたちと闘った結果、すっかり霊力を消費してしまったのだ。当然シロはそれに気付き、うれしそうに横島の顔を数回舐めてヒーリングを行なった。横島はくすぐったそうに身悶えしたが、ヒーリングの必然性を充分に理解していたので何も言わなかった。霊力は然りとて回復したわけではないが、何もしないよりはマシである。
「ほう・・・貴様、アモックを倒し・・・た? だと?」
 レアックの言葉が破綻をきたした。が、突然含み笑いをすると甲高い声で笑い出した。その声を聞いて未練がましく横島の首筋に腕を絡め、なおも顔を舐めようとしたシロは自分の場違いな行動に気付いて臨戦体制に入り、霊波刀を出した。
「この男のせいでピー・タイ・フーは全滅した。俺もなかなか痛手を被っちまった。このままお前さんたち二人がかりで攻撃されたら負けは必至だ。まあ、本当にアモックが死んでいたらの話だがな・・・」
「なんだと・・・・・・・・・」
 その時、背中に激痛が走った。

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