ザ・グレート・展開予測ショー

Endless story(1)


投稿者名:アストラ
投稿日時:(02/ 1/19)

お初にお目にかかります、アストラと申します。
G-A-JUNさんの友人で、ここの創作を何度か拝見させていただくうちにどんどんと影響を受けて(特にシロに・・・)今回投稿することにしました。我が家ではネットを繋いでいないのでG-A-JUNさんのお宅でたまに見させて貰う程度ですがどうぞよろしくお願いします。
作品に対してのご意見、ご感想などを書いていただけたら幸いです。


「今晩は冷えるでござるな・・・」
 シロはそう言うと、おねだりをする子供のような仕草で自分の頭を横島の肩に預けた。
「わ、馬鹿! 離れろ!」
 横島は慌て、半ば突き飛ばす形で強引にシロを引き離した。
「言っとくけどな、今日は美神さんもおキヌちゃんもいないんだから、悪ふざけはほどほどにしておけよ」
 なぜこの場に美神がいないのか。
 答えは簡単、『寒いから』である。もっとも、いくらなんでもそんな単純な理由だけではない。本当の理由は、今回の仕事の敵が持つ特性にあった。
・・・・・・「今回の敵ってのが“ピー・タイ・フー”っていうタイからきた奴なんだけど・・・」
「ピー・・・何です? それ。どうしてタイの霊が日本に?」
「分からないわ。ピー・タイ・フーという呼び名は現地読みで、日本語に直すと死霊、あるいは怨霊になるわね」
 タイでは、悲惨な死に方をしたり夭折(若くして死ぬ事)したりするとその人間の魂は怨霊、すなわちピー・タイ・フーになると言われている。この種の霊は非常に邪悪であり、その中でも特に恐ろしいのは“メナック・パカノ”で、日本の霊に例えるなら四谷怪談のお岩さんといったところか。このメナックの話はタイの子供で知らない者はおらず、一時期は警察が出没場所に集結して警備にあたるという大騒ぎになった。結局、最後は力のある呪術師(モー・ピー)によってパカノという地に封じられ、今も祠が残っている。
「で、そのピーは剣術使いだったらしいの。ほら、あんた霊波刀使いだし、シロは侍でしょ。二人で除霊して欲しいの。頼んだわよ」・・・・・・
「拙者に任せてください、横島先生。拙者も武士の端くれ、そんな怨霊ザムライなんてすぐに叩き斬ってみせます」
「ああ・・・それはいいけどなんでお前刀も一緒に持ってきているんだ? 霊波刀で十分じゃねーか?」
「確かにそうでござるが、虫の知らせとかいうやつで持ってきたのでござるよ」
「虫の知らせ・・・ねえ・・・」
 のちにシロの持ってきた真剣が思わぬところで攻を成すとは二人は知る由も無かった。


「うわっ・・・! これは酷いな」
 指示された廃ビルの中に侵入すると、ピー・タイ・フーが宙を舞いながら仲間同士で斬りあっている。だが、すでに死んでいる彼には決着が訪れるはずも無い。
 ふと横島がシロに視線を向けると、シロはいつに無く厳しい表情で中空を睨みつけ、何かを探るように感覚をフル回転させていた。
「・・・・・・美神どのは数については特に明言してなかったけど、こいつら仲間の霊気に共鳴して徐々に集まってきているようでござるよ」
 そう言ってシロは持ってきた真剣を壁に立てかけて、霊波刀を出した。
「横島先生、掩護を頼みます。文珠を使ってあいつらを一箇所に集めてくだされ」
「よし、分かった」
 横島は文珠に“集”を込めると中央にいた霊に向かって投げた。それと時同じくしてシロは宙に跳躍し、霊が一箇所に収束した頃合を見計らって上段に構えた霊波刀を勢いよく振り下ろし、いくらかの霊を消滅させた。仲間が消されて怒った霊がシロに向かって斬撃を浴びせようとするが、シロは半歩下がって上体をやや後ろに傾けて斬撃を全て捌き、その隙に霊の背後に回り込んだ横島は破魔の札と凝縮の“凝”を文珠にこめ、一網打尽にした。
「あとは残った雑霊を各個撃破すればOKだ。シロ、行くぞ!」
 横島の霊波刀が唸りをあげ、シロの霊波刀が閃く。かつては侍であったピーたちも実力の差があり過ぎた。やがてピーたちはじりじりと交代を余儀なくされ、二人の霊波刀を辛うじて切り返すと脱兎の如く上の回へ逃げ出した。
 シロは刀を引っ掴むと一目散に逃げる霊を追う。横島もそれに続く。すぐさま二階へ駆け上るがそこには何の姿も見当たらなかった。
「あれ、おかしいでござるなぁ・・・」
 その時、横島の脳裏に恐ろしい予感が走った。
「罠だ! シロ、壁から離れろ!」
 言い終わる前にシロは壁から飛び下がったがその刹那、シロの立っていたすぐ横の壁が轟音を立てて崩れ、中から繰り出された青竜刀がシロの体に直撃した。
「がはっ!」
シロは反対側の壁まで吹き飛ばされ、背中を強打して息が詰まった。
「てめぇ!」
 横島は先刻までシロがいた壁へ、正確には壁の向こう側にいた何者かに踊りかかった。しかし、向こうもその動きを予測していて、青竜刀で霊波刀を受け止めた。しばしの間刀の押し合いになり、膠着状態が続く。その時、横島の隣からシロが飛び出してきて横薙ぎに切りかかり、相手は勢いよく跳ね飛ばされて壁の奥へと吸い込まれるように倒れた。
「シロ! 大丈夫か!?」
ひとまず壁から離れ、充分に距離を取ってから横島が心配そうに言う。
「・・・なんとか無事みたいでござる・・・。刀の腹が当たっただけでござったから・・・」
「ふん、悪運の強い奴だな・・・」
 背後で声がし、急いで振り返ると生気が吸い取られたように顔がどす黒くなっている男が立っていた。

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