ザ・グレート・展開予測ショー

オリジナル(18)


投稿者名:いたけし
投稿日時:(02/ 1/19)

つづきっす

「はぁ〜、やっと治った」
一時間前アイスを食べ終わったゆいは当然のごとく腹痛に襲われた
そのため僕はゆいがどこかのトイレに入っている1時間の間、ゆいが来るまでずっと寒いお空の下でゆいを待っていたことになる
「アイスなんか食べるって言うからおなかを壊すんだ、あの時ちゃんと間違いでしたって言ってれば僕がこんなに寒いおもいをしなくても良かったんだ」
「ちが〜う、ジュンイチがあんなに大きなバケツ型のアイスなんか買ってくるからいけないのよ、普通のソフトクリームにしておけば私がおなかを壊すことなんか無かったの、だからそれは当然のむくいなのよ」
僕らはそんないまさら後悔したってどうにもならないことを話して家へと帰っていった

「あっあれ〜?」
ゆいが突然奇妙な声をあげた
僕がゆいの視線の先を見てみると、男とゆいと同じ制服を着た六女の生徒らしき人が暗い路地裏に入って行くところだった
「あの六女の生徒がどうかしたの?」
「いや、あれはアヤだったのかな〜って」
アヤと言うのはゆいの友達でキリスト教を信仰してる人と聞いたことがある
「それがどうしたの?」
「アヤはね、確か彼氏はいないって言ってたはずなんだけど」
彼氏のいる女の人は彼氏を自慢するため話すが、なかにはいないと隠す人もいる、それはいない人への優越感かそれとも紹介するのが恥ずかしいのかわからない
もし、今日僕が六女の前でゆいを連れ出したところを見て僕をゆいの彼氏だと勘違いしたら、ゆいは僕をどれほど最低の男か散々コケにしたあげく彼氏じゃないと言うだろう
最初から彼氏じゃないと言ってくれ、最初から・・
「ぷぷぷ、路地裏に消えたってことは、なんかえっちよねぇ、ちょっと尾行しよ〜」
そう言ってゆいはアヤさんたちが消えた路地裏へと向かう
えっちなことに対してゆいは人並である、極力避けてる僕とは違い、姉さんにこの前翔君に見せたようなビデオを借りたりしているのを見たことがある
姉さんは僕への『からかい』のため買っているのであって自分では見ない、姉さんいわく「女が見てもおもしろいものじゃないし」と言ってた
確かにそうだけど、ならなぜ女のゆいは見るのかとゆいに尋ねて見たところ「んなこと、私に聞くなぁぁ」と言われて殴られた(姉さんに聞いたところ友達と話ててそういう話になったら彼氏のいないゆいは困るからだと教えてくれた)
と言うことで、ゆいは友達のアヤさんとその彼氏らしき人の後を付いて行く
僕もゆいを家まで送ることが目的なのでゆいに付いて行くことにした

なんとなくゆいに付いて行った僕は尾行の結果になにも期待してはおらず、もう真っ黒になっている空を見上げていた
周囲が明るすぎて星は見えないが、月だけはその周囲の光さえも吸収してより一層輝いて見えた
「なっ・・・なにあれっ!!」
ゆいの驚いた声に気付き視線を向けると首筋の辺りから血が流れている六女の生徒、アヤさんの姿があった
さっき、いっしょに歩いていた男はアヤさんを覆うように抱いていた、口には紅い血がついていた
血を・・・・吸ったのか?
バンパイア?
僕の中でこの男はそう認識された
「ふんっ、こいつも能力を持つべき者だったか」
この男は何を言っているんだ、僕には理解できない
ただ、ニュースで言っていた、吸血事件とはこのことだったのか、とそれだけは理解できた
とっとにかく逃げないと
「ゆい、早く逃げ・・・・」
「こら〜、そこの吸血鬼、アヤを今すぐに離しなさい、私が相手だ」
僕が逃げようと言う前にゆいは動き出していた
バンパイアの方はアヤさんを離すと
「どうやら、お前も能力者のようだな、仲間連れなら一気に終わらしてやる!!」
仲間連れって僕のこと?
バンパイアはゆいと向かい合うと右手を開きこちら側へ向けた
瞬間、僕は霊波を放つと思った
周囲を見回す、人が・・・五,六人ほどいる
「逃げろぉぉー!!」
僕は叫んだ、だがその言葉を一瞬で理解できる人はこの中にはいなかった
「無駄だ」
僕は身構えた・・・・・が何も飛んで来ない
だが周囲にいたの人たちは、いきなり人形になってしまったかのようにバタッと倒れていった
バタッ、バタバタッ
周囲にいた人がどんどん倒れていく、いったい何が起こっているんだ
バンパイアは右手を開きこちらに向けているだけだ、霊波を放った様子はない
バタッ
また倒れた、とうとう立っているのは僕とゆいだけになった
「れっ、霊力が吸血鬼に流れてる、ううん吸収されてる」
僕には見えないがゆいには霊力の流れと言うものが見えているらしい
「とにかく逃げるぞ、ゆい」
「でもアヤが」
アヤさんを見ると血はたくさん出ているように見えるが、傷口があまり深いとは思えないので大丈夫だろう
「大丈夫だ、ニュースで辻斬りも吸血事件でも被害者だれも死んでないって言ってたから」
ヤツらの狙いは能力者のゆいだ、朝は受け流してニュースを聴いていたが組織でおこなっているらしい
ここですぐに逃げないとゆいをターゲットにされる可能性が高い
僕はゆいの手を引き、そうそう立ち去ることにした
「ちっ、あの女、なんて霊力の多さなんだ、ぐぐっ、霊力を吸収し過ぎたようだ、危うく『ヤツ』になるところだった、どうやらあの女がバランスを崩していたようだな、早く殺さねば」
僕はこの時、バンパイアが自分の肉体を霧にしているのに気が付かなかった

「ちょっと、どこまで逃げるの」
僕はゆいの手を引っ張って逃げていた
ほっと速くもっと遠くに僕は逃げようとしていた
どこに行っても追い付かれるような気がしてならなかった
ニュースで被害者はだれも死んでいないと言っていたが、今回はゆいが殺されると直感で思った
目的は解らない、だがゆいを殺させる訳にはいかない
ゆいは僕の日常生活の一部だ、ゆいが死んだら僕の日常が崩れる、日常が崩れるのが恐い、それだけは避けたい
僕がゆいを守らないと、自分のためにゆいを守る・・・それで良いじゃないか、ゆいのためじゃない自分のため
僕は正義のヒーローでも特別な力も無いのだからそれでいい・・・はずだ、偽善者にはなりたくない
「見つけたぞ、死ぬ!!」
突然声が聞こえたかと思うとゆいの前にはさっきのバンパイアが立っていた
バ・・バンパイアミストか
さっきまで走っていたふたりの足が止まる
バンパイアは腕を少し引いてからゆいに向けて伸ばした
爪が伸びてる、それで刺すつもりか
グサッ・・・・・
「ちょっと、ジュンイチ何やってんのよ」
「何って、ゆいを・・・かばって」
僕はゆいを殺させない一心で伸びた腕とゆいの体との間に自分の体を割り込ませ、バンパイアの腕がゆいに届くのを防いだ
その代わり、僕の背中の肩あたりにバンパイアの腕が突き刺さっているけど
「ちっ、仲間に助けられたか」
「うるさいっ」
ゆいが細かい大量の霊波を放つ、バンパイアは霧となりそれを避ける
それと同時に、僕の背中から突き刺さっていた腕が抜け大量の血が流れ、激痛が走った
「ぐっ・・・!!」
「ちょっとジュンイチ、あんた霊力無くて私のヒーリングの効果が無いのに、何大きな怪我してしてんのよ、私のためにかばって」
「ちがうっ!!自分ためだ、僕はそんなにいい奴じゃない、ゆいを殺させないため僕が勝手にしたんだ、狙いはゆいだ、早く逃げろ」
「ジュンイチを置いて行けるわけないでしょ」
ゆいはそう言うと僕を道に座らせ臨戦体制に入った、手は霊力が集中されいつでも放てる状態だ
「ほ〜、やる気になったか」
その声と同時にバンパイアの姿が現れる
「喰らえっ!!」
ゆいが霊波を放つとまた霧になり攻撃を避ける
だが、今回は避けるだけじゃなかった
体を霧にしたバンパイアは、霧の状態のままゆいに近づき体を元に戻す
そして、体をもとに戻した瞬間、ゆいの細い首を右手で掴み体ごと持ち上げた
「うっ・・ぐ!!」
「お前だ、お前みたいに本来覚醒すべき人物ではない者がいるから、俺たちのいた裏世界とこっちとのバランスが崩れ始めたんだ」
裏世界?
なんのことだ、わからないがなんとかゆいを助けないと
僕の日常が崩れる、何かが変わるのが恐い、ゆいがいない世界は恐い、ゆいを失いたくない
でもどうすればいい、どうすればゆいを助けることが出来るんだ

『それじゃあ、ちょっとだけ解放してあげるから、ちゃんと助けなさいよ』

頭の中で女の人の声が聞こえたような気がした
あっ頭が痛い、ガンガンする
ゆいを助けないと
そう思った僕は初めて自分が右手でなにかを握っていることに気が付いた
剣みたいな形をしてて光っている、おもちゃなのか?
だけど、おもちゃでもなんでもいい、これでバンパイアを刺せばゆいを離すかもしれない
「うわぁぁぁ!!」
僕はバンパイアに向かって突進した

僕はあまりにも自分のことを知らな過ぎたようだ

つづく

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