ザ・グレート・展開予測ショー

君がいるだけで(21)


投稿者名:JIANG
投稿日時:(02/ 1/18)

(どうも、この教授は苦手だねえ。やっぱ、あの女たちの家族だからかねえ)
美神母子に何度も出し抜かれた思いのあるベスパは、軽く眉をひそめるてから改めて公彦
に今回の依頼の件を話し始めた。
「それでこの蛍なんだが、――たぶんあんたは解っているかと思うけど――、霊力が足り
なくて元の姿に戻ることが出来なくなった私の姉、ルシオラの霊波片なんだ」
 公彦はそれまで楽しそうにしていた表情を引き締め、何も言わずに肯いただけで話の続
きを促した。
「私たちはこの霊波片の蛍を何とかして元のルシオラの姿に戻してあげたいと思っている
んだ。そこでまず、教授の能力を使ってこの霊波片の中にルシオラの情報がどれだけつま
っているか、――ルシオラが復活するだけに足る霊力が本当にあるのか、あったとしたら
どれだけの情報が詰まっているのか――、それとも、致命的なまでに霊力が足らないのか
調べて欲しいんだ」
「それは構いませんが、この霊波片は霊力が足りないのだから元の姿に戻らずにこのよう
な蛍の形になっているのでしょう? その霊力が足りない状態で本当にあなたのお姉さん
が復活すると思っているのですか?」
「それは私も正直なところ解らない。ただ、本当に霊力が足りないだけなら、こんな風に
ルシオラの本性である蛍にはならずに、ただの霊体の塊にしかならないはずなんだ。私の
考えが正しければうまくすればルシオラはきっと……」
 ベスパはそこで言葉をきって、この蛍を見つめる。


 自分はなぜこんなにもルシオラ復活にこだわるのだろう?
 アシュタロスの手駒として生まれ出た3人である。当然姉妹としての絆を感じている。
 けれど自分たちは袂を分かち敵味方に別れた……。
 しかも惚れた相手の未来をかけてお互いに殺し合いもした。
 そして……自分は負けて、愛する者も失った。

 あの時、たしかに私は一度、死んだのだ……。

 だが、最終的に生き残ったのは自分であり、ルシオラは男のために死を選んだ。
 納得がいかなかった。
 勝ったのが自分だったなら――自分たちだったなら、きっとこんなことはしない。
 負けた自分が生き残ったから、勝ったはずの彼女も生き返って欲しかった。
 そして、…………彼女の本当の望みを叶えて欲しかった。
 ―――たぶん…。


「ベスパさん」
 ベスパはビクッとして顔を上げ公彦を見た。
「そろそろ、はじめましょうか。もう説明は十分です。あなた方に協力しますよ。」
 公彦の瞳には何か理解の光のようなものが宿っているようにベスパには見えた。
 ベスパは気恥ずかしそうに一瞬顔をそむけたが、すぐに公彦に向き直った。
「それじゃあ、頼むよ。それで私たちはどうしたらいいんだい」
「この蛍――ルシオラ――を詳しく調べるためには、この仮面を外さなければなりません。
ですが、それだとあなた方の心の中まで覗くことになってしまいます。ですからなるべく
この小屋から離れて下さい。そうですね、出来れば河岸まで離れてくれれば安心だと思い
ます」
「まあ、あんたのジャマになるかもしれないからね。言うとおりにするよ。ほら、少尉、
いつまで落ち込んでいるんだい。ジャマにならないように外に出るよ。」
 ベスパは衿の部分をつかむとズルズルとジークフリードをドアの向かってズルズルと引
っぱっていく。
「こ、こら、何をする。おい離せ、ちゃんと立って歩ける」
 この扱いにジークフリードは抗議の声を上げるがベスパはかまわず引っぱっていく。

*** つづく ***

もう自分でもあきれています。
やっとの事で、ルシオラの霊波片を調べようと言うところまで来たけど、続いてます(汗)
次はちゃんと、その話に持っていけるのかなあ。
でも、自分は楽しんで書かせてもらってますよ(笑)

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