ザ・グレート・展開予測ショー

八年後物語


投稿者名:NGK
投稿日時:(02/ 1/16)

第二話:意志

西条は立ち尽くしていた。
病室では医者と看護婦がせわしなく動いている。
医者が何か叫んでいる。
看護婦がそれに答える。
やがて・・・
ピー
その音を西条はどこか他人事のように聞いていた。

「西条君来ていたのかね」
西条が振り向くと鉄仮面をかぶった男が立っていた。
美神公彦。
自分の師である美神美智恵の夫。
しかし、なぜ・・・
「なぜあなたが日本にいるのですか?」
失礼だとは思いつつも西条は言った。
「・・・・・・」
公彦は答えない。
鉄仮面に覆われた表情からも読み取る事は出来ない.
しかし、推測はできた。
「あなたはもしかして最初から日本にいたのではないですか」
公彦が再びアマゾンに発ってから三ヶ月になる。
もし、アマゾンにいたとすれば妻の死の直前にこの日本にいることは不可能である。
「・・・・・・」
公彦は何もしゃべらずに妻の下へと歩み寄った。
そして妻の髪をなでる。
「・・・妻は最後まで生きていたかった」
公彦が重い口を開いた。
「もし、周りの人間が妻の病状を知ればどんな態度をとるか・・・わかるだろう?」
ひと区切りうって公彦は言葉を繋げた。
「それが、例え家族であろうと・・・いや、家族であればこそ態度に出る。
そして、僕は日本にはいたが病院には行かなかった。行けなかったんだ。
妻にはこの仮面をつけていても・・・関係ないからね」

ききぃ
事務所の前に一台の車が止まる。
「タマモちゃん。今日は本当に楽しかったよ」
男がタマモの顔を見つめながら言った。
顔にあどけなさが残るもののその風貌は紛れも無く男だった。
「真友くん・・・ありがとう。ここまで送ってくれて・・・」
タマモはそう言いながら真友の手を握る。
「タマモちゃん・・・」
タマモの目が閉じる。
そして真友の唇とタマモの唇が近づいていき・・・
ばん!
・・・初めてのキスはシロの妨害で延期となった。

「じゃ、じゃぁ・・・ぼ、僕はこれで・・・」
車を走らせて立ち去る真友。
「・・・この馬鹿犬!いいところでジャマしないでよ」
タマモはそう言うとシロを睨みつけた。
シロは体を震わせている。
ぱん!
タマモの顔に平手打ちをした。
「な・・・」
タマモは、なにするのよ!と言い返そうとしたが。
「タマモのばかーー!!」
シロが突然泣き出したため言うことも出来なかった。
「・・・シロちゃんどうして泣いたの?」
「・・・さぁ?」
ひのめの問いに横島はただ首を傾げるしかなかった。

「あれ?美神さん?」
おキヌは果物屋の前で腕組みをしている令子を見つけた。
「美神・・・さん・・・?」
話し掛けても令子は答えようとしない。
側によると令子はなにか考え事をしているようである。
おキヌはなにか思いついたように指をぴんと上げると、
令子の後ろにまわった。
そして、
「わっ!!!」
と大声を出してみた。
しかし、令子は何事も無かったかのように腕組みして考え事をしている。
おキヌはそっと令子の目線の先を追った。
そこには、高いメロン(1万円)と安いメロン(四百円)がある。
おキヌは続けて、令子の口元に耳をやった。
「・・・ママの病気が・・・早く直ってほしいから高いものを買うべきか
・・・それとも家族と言うことで安くても大丈夫か・・・?」
「お嬢ちゃん。この人の知り合いかね?」
果物屋のおやじがおキヌに声を掛ける。
「この人、一時間もこっちで立ったままでちょっと迷惑でさ。
なんとかしてくれねえか?」
おキヌは財布を取り出し、おやじに、
「・・・一万円のメロンを下さい」
そして、
「美神さん。このメロンを持ってお見舞いに行きましょう?」
と言った。
・・・令子の金縛りが解けた事はいうまでもないだろう。

話しているうちに病院が見えてきた。
「そう言えばおキヌちゃん今日は何所に行ってたの?」
「そ、それは・・・あ、ほら、病院に着きましたよ」
おキヌは病院を指さした。
令子は母のいる病室を何気なく見た。
そこには鉄仮面をかぶった男の姿が見える。
「おやじ?」
世の中、千差万別の人間がいようとも、
あんな物をかぶっているのは自分の父親しかいない。
しかし、父はアマゾンにいたはずでは・・・
令子は胸騒ぎがして病室に向かって走り出した。

はぁはぁはぁ
がちゃ
令子は病室のドアを開けた。
そこには、目を閉じている西条と窓を見下ろしている公彦と
そして・・・
白い布を顔にかけられた母の姿が。
一瞬、令子は何があったのか理解できなかった。
「令子ちゃん・・・」
西条は暗い顔をしている。
なぜ?
なぜ?なぜ?なぜ?
やがて令子は口を開いた。
「うそよ・・・」
紙袋が手から離れ落ちた。
中に入っていたメロンが ごろごろ と転がっていく。
理解した。
しかし、にわかに信じられるものではなかった。
「うそよ・・・ね?ママ・・・あ、あのときも本当は死んでなかったじゃない・・・
ねぇ、うそだと言ってよママ・・・ママー!!」
令子は母の布を取った。
そして、母の体を抱き起こす。
「ね?ママ?なに寝ているのよ?も、もう昼よ?寝た振りしてても・・・
む、無駄よ?ねぇ、起きてよ。ママ・・・ママ・・・」
令子は半笑いを浮かべながら母の体を揺り動かす。
「ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?」
令子の顔は涙でぐしゃぐしゃになっている。
「やめてください!美神さん!!」
おキヌがたまらず令子の体を抱きかかえる。
それを令子は振りほどくとまた、
「ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?」
と揺り動かした。
公彦は令子に歩み寄ると、
ばしーん
と、強く平手打ちをした。
たまらず倒れこむ令子。
「令子・・・ここから出て行け」
公彦の表情は鉄仮面で覆われて見えない。
だが、西条とおキヌはその目に怒りが込められているような気がした。
そして、妻の体を抱き起こし、再びベットに横たえた。
「もう一度言うぞ。令子・・・ここから出て行け」
令子はよろよろと立つとふらふらと歩きながら病室から出て行った。
「令子ちゃん!!」「美神さん!!」
西条とおキヌはそれを追う。
・・・・・・
「なぁ、僕はこれでよかったのかな?なぁ美智恵・・・」
公彦の問いに美智恵は無言で答えを返したような気がした。


次回予告
「西条・・・てめぇ本気でそう思っているのか・・・!?」
西条の一言に横島は西条の胸ぐらをつかむ。
「・・・こんなもの!こんなもの!!」
チケットを破り捨てるおキヌの真意とは?
次回 「八年後物語」 第三話:四人の気持ち
お楽しみに!!



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