ザ・グレート・展開予測ショー

Danger afternoon(U)――午後の津波――


投稿者名:ロックンロール
投稿日時:(02/ 1/16)

 観察。
 簡単なようで、実はこれほど難しい事もない。現れたのは犬。……もう少し詳しく述べるのならば黒い犬。さらにもう少し詳しく述べればそれに標準よりやや小さめという形容が付加されて行く。
「……………………」
 取り合えずシロは考えてみた。いくら眺めても犬にしか見えないし、それならば犬が何故ガラスを割って事務所内に飛び込んで来たのかが解らない。
「あの〜…………お主はいったい――」
 何者なのか。……問おうとした矢先――
「ワウウウウウヲオオオオオオオンッ!!」
「へっ?」
 咆哮する、犬。
 そして、こちらを睨む。……と言うか、爛々と輝く情熱的な眼差しで見つめてくる。よく見ると、口は半開きで眼は虚ろ。……何か、意識を何処かに置き忘れたような、無駄に情熱的で元気一杯の眼差し…… そして、
『ウワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!』
 突如として、辺りに響く、遠吠え。
「こ、これは……?」
 眼前の犬が発したものではない。複数の、それも、かなりの数の犬が同時に、力一杯の遠吠え。
 どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど…………
「? ……え?」
 地響き。そして、轟音。……その中で、眼前の犬がこちらに飛び掛ってくる。
「! 何するでござるか!!」
 跳躍して、その体当たりを避ける。……地鳴りはまだ続いている。
「お前…………一体ここに何をしに来たでござるか!」
『……う……う…………』
 壁に鼻をぶつけてうめく犬。……轟音は続く、心なしか近づいてきているような気すらする。
「おいっ!!」
 刹那。
 ガラスの穴から、何かが邸内に入ってくる。――進入してきた何かは、そのまま真っ直ぐシロに向かって来る。
『雌ぅぅぅうぅぅううううぅぅっ!!』
 何か、意識が理解することを拒むような言葉を吐きながら……
「何なんでござるかぁ――っ!?」
 取り合えず、窓から外へ逃げる。……侵入者――新たな犬――は一匹だけではなかった。5匹ほどの大小さまざまな犬が、全く同じ事を叫びながら突進してくる。
 庭に無事着地し、シロは道に出て、左右を見やった。
「え?」
 土煙。……左右から、土煙が接近してくる。
『うをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! 雌だああああああああああああああっ!?』
『ヤらせろをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉっ!!』
「○×△□@%〜っ!?」
 自ら聞き取る事は不可能。道を疾走してくるのは、数え切れないほどの、犬の群れだった。
 先程突っ込んできた数匹の犬も、窓の中から再び飛び出してくる。
「う・う・うわあああああああああああああああっ!? せんせえぇぇ――っ!?」
 本能の命ずるままに、
 シロは跳躍し、屋根の上を全力で逃げ出した。


「ん?」
 近所のコンビニでカップめんを購入し、事務所に戻る帰り道。……横島は、自分を呼ぶ声を聞いた気がして立ち止まった。 
「なんだ?」
 今のは、シロの声だった。――自分を『先生』などと呼ぶのはあいつ位であるし――まぁ、シロが叫ぶのはいつもの事ではあるが、それならば数秒後に自分に飛びついてきていないのもまあ、おかしいと言えばおかしい。
 取り合えず、シロの姿は見えない。
(……気のせいか)
 そう片付けて、歩みを再会しようとした矢先、
 遥かかなたに土煙が見えた。
「? 何だ?」
 土煙りは見る見るうちに迫ってくる。
「っておい、ちょっと待――――」
 どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど…………
 土煙は通過していった。


「お、俺の……ささやかなしあわせな日が………………」
 犬津波が通過し、タマモは地面に降り立った。……道を歩いていたらいきなり襲ってきたので、取り合えず塀の上に避難したのだが、正解だったようだ。
 ちなみに滅茶苦茶に踏まれ、揉みくちゃになって地面に突っ伏し痙攣しつつ、先程からぶつぶつと何か呟く(うわごとかもしれない)物体が近くに転がっている。取り合えず、そう判断し、その物体に言ってやる。
「あんた、本気で天中殺なんじゃないの? ……生まれてきた事自体が」
 そして、物体を引きずって帰路につく。何が起こったかは解らないが、生きているうちには、分からなくてよいこともあるのだろう。

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