人間と少女と妖怪と【7】
投稿者名:眠り猫
投稿日時:(02/ 1/ 5)
お化けや幽霊って言ってもいろんな奴等がいる。
俺はお化けや幽霊や妖怪の細かい定義なんて知らないけどな。
幽霊ってのは・・・そう、人間が肉体を失くしたもんって言ってもいいんじゃないかと思う。だからさ、元・人間?ああ、動物とかもそう。
この世に満足してたり悔いがなかったら成仏できるけど、その「心残り」がでかかったら、思いが強すぎて、暴走しちまったら・・・それは「悪霊」と言われるべき存在になってしまう。あー・・・間違ってるかも。まぁ、いい。今はテストとかじゃないんだ、言うなりゃ、俺が勝手に思い込んでる幽霊講座。それで、「今」はいい。
頭の中を整理させる為のものだ。俺がわかってりゃ問題ない。
詳しいことは後で美神さんに聞こう。
とにかく、いろんな奴等がいる。
人の話ぜーんぶ無視しちまうのとか、納得してくれるのとか、怖いのとか、優しいのとか。個性たっぷりさ。生きてる人間だってそうだろ?
で、問題は目の前にいるこの少女。(そーいや、名前も知らない。聞けば教えてくれそうだが、とてもじゃないがそんな状況じゃない。)
この子・・・多分・・・
文殊は残り一個。さーどうする、横島忠夫。
失敗は許されねぇぞ。そりゃ、倒そうと思えばできると思う。
でも、俺は絶対やりたくない。俺自身も嫌だし、何より・・・もっと悲しむ奴も、いるからな。
小さい子ってな、説教して、ちゃんと納得できるのならちゃんと反省してくれんだ。
あ、別に小さい子って限定しなくてもいいけど。
問題なのはどーいう言い方なら納得してくれるか。
だって、小難しいこと言ったってわかんねぇだろ。「自然の流れが〜〜で、だから君も自然の流れにのって成仏しなくちゃいけない。」とかさ。
「高校生」か・・・・・・
(・・・まーな、学年1位だろ、なんか考え出してくれ。)
(・・・と言われても・・・。このままだと、悪霊になりかねませんよ。止められるかな・・・。)
『もうヤダ!キライ!ハヤく出っててー!!!』
欠片が横島の方へ向かう。キラと光る破片がより一層鋭さを強調した。
もう、文殊1個目の「壁」は消えている。
愛子の脳裏に、・・・それはそれはとても、想像したくない映像がかすめた。
幾十ともある破片が今、横島の方に向かっている。
とても、想像したくないが、・・・想像することはあまりにも容易かった。
一瞬、声がつまる。
ようやく出かけた叫び声は・・・横島の声のほうが早かった。
「文殊!「止」!!」
横島の手の中にある小さな文殊が光った。正確には、文殊に浮かび上がった「止」という文字が。そして、光ると同時に、この理科室という空間にあるもの全てが止まった。
光る欠片も、少女も、あの時計の針さえも、文殊の力を使った横島以外は全て。
つまりは、愛子すらも。動けなかった。
数多い欠片一つ一つ細かく止められるのは、さすがに出来なかったのか。
ならば、空間全てのものを止めてしまったほうがいい。
しかし、この人数だ。そうそう長く止めてられないだろう。もって1分くらいか。
横島の顔にも疲労の色が見えた。
一歩、一歩、少女に歩み寄る。
少女は動けない。欠片も動かせない。そう、今の少女なら文殊なしの横島にも退治することはできる。
それは、少女も含め、全員が知っている。
――――――嘘・・・嘘でしょ・・・?
――――退治なんてできないって言ってたじゃない。確かに、この方法しか道はないのかもしれない。わかってる、この子を退治させたら私はもう、ここにはいられない。それはとっても辛いことだけど・・・それに巻き込んじゃいけないって。
でも、でも・・・こんなのって・・・嘘でしょ、ねぇ・・・やだ、横島クン?
『ちょっと、ヤダ!こっち来ないでよー!!なんで!?なんで高校に居ちゃいけないの!?来ないでーっ!!!』
横島は、もう少女の目の前にいた。少女の言葉には答えず手を伸ばした。
――――――怖かった。
『やめてぇ―――っ!!!』
叫びながら目を閉じる。嫌!あの子が退治されるところなんて見たくない!
ふにいぃ
が、愛子の耳に届いたのは間のぬけた少女の声。
『ふぎーっ!?ひらい!ひたいぃーっ!!』
恐らくは「痛い」と言いたいのだろうがうまく言えない。
それはそう、横島が少女のほっぺたをふにいぃと強く伸ばしているのだから。
・・・『え・・・?』
少女のほっぺたは柔らかいらしく随分と伸びている。しかし、それは案外痛く少女は泣き声に近い。
「ったく、悪い子にはおしおきじゃっ!」
『ひたいーーーっ!!ふえーっ!』
いつのまにか、文殊の効果は切れていた。そして、ようやく横島も手を離す。
欠片が重力に従い床に落ちた。少女はそれを再び操ることもせず、いや、忘れているのだろう。赤くなった頬を両手で押さえている。
『う〜、痛いよぅ。』
そうしている少女の肩に手をのせた。
「あのな、お前は高校生にはなれないっ!」
単刀直入。
『なっ!』
当然反論しようとした少女より早く、横島が話した。
「いいか、高校ってのはなぁ、テストを受けなきゃいけねーんだよ。」
『てすと・・・?』
おとなしく、意外な単語に目をぱちぱち瞬かせ、横島を見た。
「そ。高校はな、入りたかったら皆入れるって訳にはいかないんだ。ちゃーんと、テストを受けて!それで合格した奴は入れるんだ。これにはお兄ちゃんだって頑張ったんだぞ。」
『てすと・・・ごーかく・・・』
「わかったか?だから、お前は高校に入れない。そーいうことなんだ。」
てっきり、そんな理屈なんておかまいなしに攻撃してくると思っていた。今、話している本人達以外は。前に「成仏しろよ。」と言ってもあの少女は納得せずに攻撃してきたのだ。
しかし、静かなままだった。
そして、ぽつりと少女は呟いた。
『わかった・・・』
その答えを聞いて横島はにこっと笑顔になる。そうして、少女はいくらか浮かんでいるのだが、視線を合わすために少ししゃがんだ。
「よーし、いい子だ。」
なでなですると、少女は、やっと、初めて、微笑んだ。
さっきまでの緊迫した空気はいつのまにか消えうせていた。
『・・・じゃぁ、ジョーブツしなくちゃ・・・』
かといえ、納得はしているものの、寂しそうに呟く。ちょっと心残り。
その時、愛子は少女のそばに行った。
きっと誰よりも少女の気持ちがわかるから。
そうして、愛子はぼそぼそと少女にだけ言葉を伝える。周りにいる人たちには全くわからない。
聞き終えた後、ぱあぁと少女の表情が明るくなった。
『うん!』
そう、ハッキリ言って。ふわっと浮き上がる。
その表情は楽しそうで。『トモダチつくるの』と言っていた時も笑顔だったのだが、それとは全く違う、対照的ともいえる笑顔だった。
『えぇっと・・・メーワクかけてごめんなさい・・・。でも・・・』
『ありがとう!』
笑って、そのまま・・・消えていった。
ずっと、悲しそうな表情だった愛子も、いつのまにか笑顔が戻っていた。
「かーっ!疲れた疲れたー!」
「今回、1番がんばってましたからね。ご苦労様です。」
「よく、あの子を説得できましたノー。」
少女のことを教師に報告して、除霊委員はすぐ帰る事になった。随分、時間がかかったらしい。もう、辺りは暗くなり始めていた。
男3人は途中まで同じ帰り道。愛子は学校。
「ああ、説得ね。ちょっと考えりゃ、な。」
「?」
「あの子、自分が幽霊なの自覚しつつもしたくなかった、カンジだったからさ。幽霊も関係なく説得してみたんだよ。もっとほかのことでもよかったんだけどな。ま、あの子が納得してくれたんならいいさ。」
2人が感心している横でフと後ろを振り向いた。まだハッキリ学校が見える。
小さい頃は夜の学校が怖かった。どうしようもなく寂しい、あの昼間とは全然違う静かな空間。
暗くて、寂しくて、たった一人きりになったような・・・
「ワリィ!忘れ物!時間かかると思うから先に帰っててくれ!」
そう言って有無言わさず、学校に向かって走り出していた。
残った2人は顔を見合わせる。
「・・・横島さんも嘘が下手ですね。」
「まー、そこがいいとこケンノー。」
「どうする?」
「邪魔者はさっさと帰ったほうがいいと思うんジャが・・・」
「そうだね、じゃ先に帰ろうか。」
今までの
コメント:
- あー!前回、今回で終わるとか言っときながら終わってません!
すみません・・・(ーー;)
で、でも次回には次回には必ず・・・・・・
読んで下さった方ありがとうございました!
で、できれば次回も読んで下さると嬉しいです。あうう・・・。 (眠り猫)
- うっわー!うっわー!
なんかすっごくいいですよー。相手の気持ちを分かってあげられるひとでないと、こんな説得はできませんよね。これで、女の子も愛子ちゃんも救われたと思いますー。
横島君と眠り猫さん、エライ!♪ (猫姫)
- 横島、色々考えてますね。美神のある意味プロフェッショナリズムに徹する除霊の仕方を間近に見続け、彼にも考えるところがあったのでしょう。ギャグの土台ではない、等身大の横島少年の成長の様を見た気がしました。素晴らしいですね。 (黒犬)
- 露骨にではなく、さりげなくかっこいい横島・・・イイですね。 (二エー)
- ほっぺた、ふにぃぃって、いいよね。
「あい」が無いとやれないよね。
ぽじてぶで、あったかい攻撃だよね。うんうん。
なんか、ききましたよ、これ。 (みみかき)
- ↑ さあ、そのまま「学級文庫」と言ってみよう!(初歩的な罠)
突然の横島視点に最初驚きつつも、読み進めていく内に納得。成る程、おばけにゃ学校も試験も無いんですね(違う)。
やっぱり「頭……いや、「ココロと文珠は使い様」と云った処でしょうか。
さてさて、横島さんの動向が気に成りますノー(寅吉風)。 (Iholi)
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