ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(双狼)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/12/25)




 ー終曲ー



「・・・良くありません」
 魂を奪われ、昏睡状態に陥った美智恵が横たわっている部屋から出てきた彼女・・・魔鈴めぐみはそう言った。
「空港から、ここへ運んで・・・私が調合した回復用や治癒の魔法薬を投与して・・・それと冥子さんの式神のヒーリングとを併せて外傷は何とかなりましたけど・・・」
 沈痛な顔をして言う魔鈴の言葉を、西条は苦々しさを押し殺しながら、ただ黙って聞いていた。
 魂、霊体を奪われた為に意識が戻らない。そしてそれと同調して、刻一刻と弱まる身体機能。
「先生がこんな状態だってのに・・・雪之丞と陸奥季君までが姿を消すし!・・・くそっ!」
 苛立ちを抑えきれずに、西条はそう吐き棄てた。

 セステルティウスは焦燥感を募らせていた。
 最初の一撃。それを回避されたのは、彼女にとっては痛恨の不測事態といえた。
 まずは文珠の使い手からと、彼女は判断する。
 既に攻撃出来る距離に到達していながら、彼女・・・セステルティウスは美神達と、重装備ゾンビ群との戦いをじっと観察し続けた。
 霊力の鞭、文珠、死霊操りの笛、霊波刀、発火能力。
 この中で最も厄介なのは、やはり文珠だ。鞭や霊波刀などが有効な間合いからは、遠く離れた上空一千メートルの場所から、標的を狙撃しているのだから。しかし不確定要素的な力を持つ文珠の使用だけは、何としても阻止しなければならない。
 しかし。その使い手を狙っての一撃は、人狼の少女に感知されてしまい、結果失敗に終わった。
 予想外。人間の五感では捕捉しきれぬ光撃も、人狼や妖狐にはどうにか知覚出来るのだ。
 生成した文珠は即破壊してはいるが、標的には今だに致命的なダメージどころか、ただの一撃すらもも負わせてはいない。それどころか例のあの人狼の少女は、最初は反応も出来ずにいた細く束ねた光撃に早々と適応し、霊波刀で弾くなどして文珠の破壊を阻止し始めたのだ。
 もしもこの状況で、標的の仲間でも来ようものなら・・・!
 退くべきか、否か・・・セステルティウスは、その表情に生まれて初めての迷いの色を浮かべたーー・・・

 焦りは美神も同じだった。
 あれからも何度となく、正確にこちらを狙ってくる光撃に、すっかり足止めをくらってしまっているのだから。
「ママ・・・」
 こんなところで時間を無駄になど出来ない。上からチクチクとこちらを狙ってる輩を片付けて、あの趣味の悪い城へ乗り込みママを救けるーーー!
 しかし、現在の状況が、そうはさせてくれない。
「く・・・っ!」
 またもシロが、横島の手にある文珠を狙った細い光撃の軌道をそらす。しかし続けての光撃には流石に対応しきれずに、破壊を許してしまう。結局守れたのは相手が気づく前に最初に防ぐのに成功した時の一つだけだ。
 それからは横島が何度生成しようと、シロが何回霊波刀をふるおうと、文珠の破壊は止められない。
 終わらないイタチごっこ。
 同時に二度だけ撃ってくる光撃は、横島が文珠を生成した瞬間を狙ってくる。その一つはシロが防ぐが、違う軌道での、微妙にタイミングをずらした一撃にはシロの反応速度ですらも対応出来ないのだ。文珠を射抜かれる。いつまで経とうと文珠の数には変化がない。
 もう一人、光撃に反応出来る彼女・・・タマモもいるが、シロとちがい狐火では光を防ぐ事は出来ない。最初にシロが守った文珠を手にして、それを狙う光撃をかわすのがやっとだった。
「結局のところ・・・」
 美神は頭を掻きむしった。
(最初シロが守れた文珠は一つ。それをどう使うか・・・)
 この膠着した状況を、どう打開するか・・・次に横島が文珠を生成した時は、破壊を許すわけにはいかない。横島の霊力にも限りはあるのだ。
(雨を降らせて・・・いや駄目だわ・・・)
 相手の狙いを定めにくくはしても、それで相手を戦闘不能に追い込めるわけではない。合体する時を稼ぐには有効かもしれないが、それで確実に相手の目をくらませられると・・・そう決まったわけでもないのだから。
(じゃあどうする?どうすれば!?・・・ああこんな時シロがもう一匹いてくれたら・・・!)
 次の瞬間。
 閃いた美神は満面の笑みを浮かべ・・・犬科の二人を見た。

 上空でたたずむセステルティウスはまたも、横島が文珠を創ろうとしている事に気がついた。
「無意味・・・何度やっても同じ」
 すかさず両手をかざす。左手から、やや遅らせて右手から・・・それぞれの指先から、細い光線を放つ。
 紺色の瞳が、ゴーグル越しにその光の軌跡を映す。そして生成された文珠が破壊される様も・・・
 しかし。
「!なっ・・・!?」
 セステルティウスが目を剥く。光線の一つを人狼の少女が弾いた。それはいい。
 問題は・・・もう一人。
「バカな・・・」
 一体どこから現れたのか・・・霊波刀を携える別の人狼の少女が、もう一つの光線までもを弾いたのだ。その突然現れた人狼族の少女は、鞭を片手に会心の笑みを浮かべる女・・・美神令子にいかにも不本意だという、そんな心情を込めた視線を送る。

「ほんとに大丈夫なの!?この『模』っていうのでバカ犬の頭の悪さまでコピーしちゃったりしたら、十代先まで恨むわよ!」

 またも予想を大きく外れた事態に半ば呆然とするセステルティウスをよそにし・・・人狼『タマモ』は大声で、いつまでも美神に文句を言い続けたーーー


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa