ザ・グレート・展開予測ショー

音色。(中編その3)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/12/21)

思い出せない声、おもいだせない、記憶
―だけど、たしかにあった唄。

午後三時半。学校帰り。
オカルトGメン日本支部。
「やあ、よくきたねおきぬちゃん」
ドアを開きながら長身の男がにこやかに言う。
腰まである黒髪に均整の取れた体躯。
美形と言うわけではないが整った顔立ちは『二枚目』と呼ぶに相応しいだろう。
普通の男なら軟弱に映るその髪もその男にかかるとまるで彼のためだけにあつらえたかのようによく似合う。
「はい。今日は、先生がいらっしゃると聞いていたので」
その男―西条に向かって手にはスーパーの袋を下げたおきぬが言う。
「ああ、先生も君のことをまっておられるよ」
ところで
と、こそっと声を潜め西条
「令子ちゃん風邪ひいたって本当かい?」
「あ、はい大した事ないんですけどね」
情報はやいですねーっとおきぬ。
「いや。大した事がないのなら良いのだけどね」
お見舞いに行っても迷惑じゃないだろーかという声が聞こえる。
そこには、心配するこころと少しばかりの下心がある。
横島あたりならそんなふしだらな奴をいれられるかーっと言いそうだが。(いやその前に、横島自身が邪な存在であろうが)
「大丈夫ですよ。きっと美神さん喜ぶと思います」
だが、そんな西条の下心に気付かないおきぬはふわりと嬉しげに笑いそう言う。
「そうかい。有難う」
先生は奥の部屋にいるよ
とすこしばかりの苦笑と共に西条。

奥にある応接間にしわがれたもう命がつきようとしている老婆が居た。
体は小さくそして、髪は白い。
その年月を刻む時間を表すかのように、その体はお世辞にも立派なという形容詞はつけれない、むしろ貧相なという表現がぴったりである。
だがその瞳だけは、その体を裏切っていた。
美しくそして澄んでおり全てを知っている老人のそれでありそしてありあまる情熱をもつ瞳。
もう世界に数人しかいない『死霊使いの笛』を使う術を教える人。
「先生…お久しぶりです」
「ああ、おきぬ久しぶりだね。だが変だねいつもオマエの手紙を読んでいるせいか久しぶりという気がしないよ」
しゃがれた、だが柔らかな声で老婆。
「そうですか?」
そんなにたくさん出しているかなあとおきぬ。
「そりゃもう1週間に三通は送られてくるんだからね」
ひゃひゃひゃと肩を揺らし老婆は笑う。
「すいません…」
かあっと顔を赤くしおきぬ。
「いや。おまえから手紙かくるのは嬉しいよ…そうそうこの前の手紙に書いてあった件あれはいいと思うよ」
そんな様子をおかしそうに見ながら老婆。
「そうですか?」
その言葉におきぬは顔を輝かせる。
「ああ。おまえは、ちゃんと見ているからね」
静かな、静かな言葉。
「それが一番大切なんだよ?」
わかるかい?
「はい。」
こくりと頷くおきぬ。
「死んだものの悲しみ、そしてそれを慈しむ心。それを知っているというこころ」
笛を使うものとして、それを忘れずにいることが大切なんだよ。
おまえは、それを知っているだろう
静かに、だが嘘を許さない強さで老婆。
「……―はい。」
まっすぐにおきぬ。
前の老婆に尊敬の念を抱きながら。
「それを知っているならば、いいよ」
―あとはこころのままに。
そういって老婆は、笑った。
つづく

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa