ザ・グレート・展開予測ショー

魔曲(開戦)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/12/20)




 ー魔曲ー



 その存在は赦されざるモノ。

 この世に生まれ落ちた己の運命。抗うには余りに巨大なその敵に対し、その存在が選びしは、新たな世界の創造主か。

 それとも『死』かーーー

『どちらにせよ、愚かですよ・・・所詮貴方は・・・』

 敗北者ーーーその言葉は呑み込む。

 清らかにして、荘厳なりし光に満ちたこの聖堂を、骸が徘徊するかの如き魔気に溢れ、闇以外、総てを拒む魔城と変えて。

 しかし、その美しさだけは変わらない。

 四方全てを闇の結界で覆う・・・陽光さえ届かぬ闇の魔城。

 それでも、その聖堂が120年の歳月を費やす事で生まれた、その『美しさ』だけは、今も魔城は残していた。

『さて・・・』

 テラスを後にし・・・目を閉じる。

 そしてーーー再びその瞳を開きし時、そこは祭壇だった。

『いかがですかな?』

 声は返らない。ただそれだけでも呪い殺せるのではないかという憎しみの感情が、一斉に刺すように降り注いでくる。

 それを心地良く感じながら・・・

『じきに・・・貴方の可愛い娘さんが・・・』

 その言葉のーーー瞬間。
 それまでとは比較にならぬ程の・・・『憎しみ』という言葉さえも遥かに超越した、強い強い負の念が渦を巻く。
 声はやはり返らぬまま。しかしその念は途切れる事無く、間断無く空間にただーーー在るーーー
 だが。
『クククッ!・・・貴女に出来るのはそれだけだ・・・』
 実に歪みきったーーー法悦の色を濃くする瞳で、彼は闇の中の一点を見据える。
『さぞお悔しい事でしょう・・・この城に入る事により、彼我の戦力差がどれほどなのかを理解してしまった貴女には、誰よりも己の身を案じて飛び込んでくるであろう・・・おや?』
 そこで悦に侵りし、その言葉が途切れた。
『これはこれは・・・思ったよりずっと早い・・・どうやらよほど貴女は慕われているらしい・・・しかし』
 ス・・・と仮面が手をかざす。
『それが、それこそが貴女を無限の苦痛にさらす事となる』
 仮面が手をかざすと闇がーーー漆黒の空間がーーーその一部が、円形状に切り抜かれた。やがてそこには最初は曖昧に・・・しかし瞬間の経過と共に明確となる映像が映し出されてゆく。
『ホウ・・・やはり真っ直ぐ単純に、最短のルートを・・・』
 パチン!と仮面が指を鳴らすと、それと共に、瞬時に祭壇を取り巻く邪気が強さを増した。それに続いて一つ、二つと・・・仮面の背後に幾つもの気配が生まれる。
 真闇に従いしーーー闇の住人達。
 それら己の下僕の『気配』には背を向けたまま、闇に浮かぶ仮面は更に言い募る。
『まずは小手調べ。既に日本での借りはお返ししましたが、もう少しだけ、私の溜飲をさげていただききたい・・・』
 前もって『聖天使の城』に配した、重装備のゾンビと戦闘に突入した美神令子、横島忠夫・・・他三名の姿を見つめながら、仮面の奥にある眼は妖しさを増してゆく。
 そしてーーーその口元より紡がれる言葉は。
『セステルティウス』
 その言葉を・・・己が主によって与えられしその御名を呼ばれた一人の女性が、他よりも一歩、前へと進み出る。
 スラリとした長身に、癖一つない美しく長い髪。
 顔立ちも美しいが、余りに物静かなそのたたずまいは、彼女を人間というよりは精巧な人形として見てしまいそうになる。
 そんな事など気にすらせずに、目線を映像に向けたままーーー仮面は言葉を続けた。
『さあ行きなさい、セステル。この5人の内・・・そうですねぇ二人・・・二人であれば誰であろうが構いませんから、ここに二つの心臓を持ち帰って来てください』
 平然と吐かれた、残忍極まりないその言葉。
 しかし。
 セステル。そう呼ばれた紺色の髪の女性はーーーまるでその事自体を野に咲く花でも摘んでこいとでも言うように、軽い口調で命令してきた仮面に、何ら感情を抱く事も無くーーーただその髪と同じ色のその瞳に、今もゾンビと奮闘している5人の姿形を焼き付けた。
 桜のような唇がーーー開かれる。
『はい・・・ご命令のままに・・・』
 抑揚も無く、ためらいも無く。その言葉だけを残して彼女・・・セステルティウスの姿は闇へと溶けこんだ。

 それを背後に感じて、満足げに笑みを浮かべる仮面の男はまたも、祭壇へと目を向ける。

『さあ美智恵さん・・・いい手土産が期待出来ますよ・・・』

 始まりし長い夜。

 その夜の舞台の幕は、今こそあがろうとしていたーーー



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