ザ・グレート・展開予測ショー

white hope(5)


投稿者名:二エー
投稿日時:(01/12/20)

 どのくらいのゾンビを始末したんだろうか・・気付けば教会は死体置き場になっていた
神父が見たら気絶すんな・・・
もちろん、俺も満身創痍だ・・何処がどのくらい痛むのかすらも解らなくなっている。

あとこの場で立ってるのは・・・俺と、勘九郎、陰念の三人か・・・

「へえ・・・すごいじゃない?雪ノ丞でもこうはいかないわよ?でも夜はこれからが本番よ(はぁと)」

よけいなお世話だ・・この変態が。

「へっへっへっ・・・だいぶ疲れてるみたいじゃねぇか?横島クンよ?」

二人が悪魔の笑みを浮かべながらにじり寄ってくる。
文殊はとっくの昔に使い果たしていた。
「栄光の手」の放つ光も頼りない。
要するに「チェックメイト」って奴だ。
どうする・・・どうすれば・・・!!!

こちらの逡巡を見透かしたかの様に二人が飛びかかってくる!!
一人は剣で、もう一人は獣の爪で。
脇腹と足に激痛が走り、意識が飛びかける。特に・・・足の方は折れたみたいだ。バランスを崩して倒れこむ。

「おらあっ!!まだ寝るんじゃねえぞ!!」
陰念が倒れた俺の頭を引っつかみボディに拳を叩きこんでくる。
一発ごとに胃の中身が逆流する。

くそっ・・なぶり殺しかよ・・・
でも・・まあ・・・いいか。誰も巻き込まなかっただけでも俺にしちゃあ上等だよな。
薄れる意識の中でそんな事を考えていた時だ。

何か光のようなものが俺と陰念の間を通りぬけた。
数コンマ置いて、俺を掴んでいた陰念の腕から力が抜け、俺ごとぽとりと地面に落ちる。雪の上に新しい、真っ赤なシミが出来る。

「ぎゃああああっつ!!お・・おれの俺のうでがああああっつ!!」

これは・・・超加速?まさか・・・

「だ、誰だ!!ち、ちくしょう俺の腕を・・・許さねえ、ぶっ殺してやる!」
狼狽しきった陰念がヒステリックに叫ぶ。勘九郎の方は・・流石に冷静だ。無言でその光に向け剣を構える。

その光が・・剣を右手に持ち、頭に角を生やした人の姿に変わって行く。そして正に「ゆらり」と言った感じでこちらに向き直る・・・すげえ鬼気だ。寝転がってる俺の皮膚までビリビリとする・・・

「お前達に名のる名前などありません・・・『神』の怒りをその身で知るがいい・・」
やっぱり・・・小竜姫様!?どうして・・・

その姿は「怒る」というより「荒れ狂う」といった方が正しいだろう。並の奴ならその鬼気を浴びただけで消し飛んでしまいそうだ。陰念と勘九郎も思わず後ずさる。

「あら・・・神様のおでましとはね。でもいいのかしら?私達のバックに誰がいるのかも知らずにでしゃばってきても?」

勘九郎が言葉で小竜姫様に揺さぶりを掛ける。・・そりゃあそうだろう・・怒り狂った竜神とまともにやって勝てるはずが無いからな・・でも・・そうだ、奴の言った通りこいつらのバックに誰がいるのかも解らないうちに手を出したりしたら小竜姫様の立場が・・・

クソッ俺の、俺の所為だ。俺にもっと力があれば・・・・

「言い残すことはそれだけですか・・?」
小竜姫様は平然と剣を青眼に構える。その殺気がより膨れ上がった。

「か、勘九郎よ・・」
すっかりブルッた陰念が情けない声をあげる。

「解ってるわ・・・ここはひとまず引くわよっ!!また会いましょう・・お二人とも」

そう言い残すと勘九郎は熱球のようなものを作り出し、地面に叩きつける。
急速に蒸発する雪で二人の姿が見えなくなっていく・・・

小竜姫様は奴らを追おうとはせず、倒れたままの俺に駆け寄ってくる。
それを見た勘九郎の目が光る。

「そうそうこれは置き土産よっ!!」
完全に背を向けた小竜姫様に向かって勘九郎が剣を投げつける!!

また・・・また俺の所為で・・・そんなこと繰り返してたまるかよおおっ!!

気付けば両腕の力だけで俺は飛んでいた。さらに「栄光の手」を棒高跳びの要領で地面に突き立て、加速する・・・・そして。

ドスッ

肉に刃が食い込む音がする。口から血があふれ出る。姿勢を変えることも出来ずにそのまま雪の上にまた転がる。咄嗟に振り向いた小竜姫様が信じられないものを見る顔をする。

良かった・・・間に合った・・・
意識が・・・遠くなる・・・・


何だ・・・ここは・・・真っ暗だ・・・それなのにあたたかい感触がする・・・特に唇のあたりが・・これが・・あの世ってやつなら・・・悪くないかもな・・・
そういえば前にも・・・こんなことが・・・あった気が・・・・

視界が開けて来る・・・ここは・・?
そこは、あの世でも何でも無く、教会の前だった。
俺は小竜姫様に抱かれ、・・・!?
唇を合わせていた。

それを通して吐息と一緒に生気が流れ込んでくる・・・傷の痛みも、消えていた。
熱いものが顔にかかる・・・
小竜姫様は、泣いていた。泣きながら・・・俺を・・・

俺はその頬に手を当てる。

それでやっと小竜姫様の唇が離れる。

俺は改めて全身を見渡す。
信じられない・・刺された傷も、折れた足も、全て元に戻っていた。

「良かった・・・あまりにもひどい怪我だったんで私の『竜気』を直接貴方の身体に送り込んだんです」
小竜姫様が驚いてる俺に泣き笑いのまま説明してくれる・・・そうか・・それで・・・
!!?

「小竜姫様ッ!」

「は、はい・・・何ですか?」

「身体は・・・そんな事して身体は何ともないんですか?」
つい両肩を押さえてその綺麗な瞳を覗きこむ。

「は・・・?別に・・?」

「本当ですね!!隠してたりしたら怒りますよッ!!」
そういいながら俺は「治」の文殊を小竜姫様に押し当てる。
別に怪我はしていないようだが疲れが取れるのだろう・・気持ちよさそうにそれを浴びる。

「どうしたんですか?横島さん・・? 本当に大丈夫ですって・・・貴方も一度ピートさんを治療したのを見た事があるでしょう?今回は貴方が人間なのと傷が深かったのでちょ、直接・・その・・ああいうかたちになったんです。」

俺は脱力して肩を落とす・・・よ、良かった、本当に・・・
それを見た小竜姫様は怪訝な顔で俺をしばらく見ていたが,やがて優しい顔付きになる。 
「大丈夫ですよ・・横島さん。私は・・そのくらいじゃ死にません。こう見えても竜神ですよ?蛍のように・・儚くはありません。・・・そんな事より横島さん!」

「は・・・はい?」

「何で・・何であんな真似したんですか!!あなたは自分自身を粗末にし過ぎです!!」

「い・・・いや、あの時は身体が勝手に・・・」

皆まで言い終わらないうちに小竜姫様がしがみついてくる。柔らかい、女性独特の感触が伝わってくる。とても気合だけで勘九郎を引かせた人と同一人物だとは思えないな・・・
「お願いですから・・もう二度とあんなことはしないでください・・」

「・・・・」
「・・・・」
しばらくの間、俺達はそのままの姿勢でいた・・・

「も、戻りましょうか・・皆に気付かれるとまずいですし・・・」
「そ、そうですね・・・立てますか?」

小竜姫様に肩を貸してもらいながら立ちあがる。
よし・・何とか歩けそうだ。

雪は、何時の間にか止んでいた・・・

このあと、宴たけなわの事務所に戻った俺達は美神さんと西条、ピートとおキヌちゃんがいい雰囲気になっているのを目撃する事になる。

だが・・・何故かそれほど気にはならなかった・・・それより、帰りの途中、修行不足を小竜姫様に指摘された俺はあの猿ジジイとの特別トレーニングを約束させられてしまった事の方で頭が一杯だった・・・だけど、何で小竜姫様があんなに嬉しそうな顔をするんだ?あの人・・・Sの気でもあるんだろうか?

俺はこの時、大事な事を忘れていた。
約束を二つしていた事に、そして果たした約束は「無事に帰ってくる」ことだけだったことに・・・

ともかく、今年は刺激的な・・・クリスマスだった。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa