ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(開戦)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/12/20)




 ー終曲ー



 手痛い、などという言葉では言い尽くせない。

 被害を受けた空港関係者を納得させる為、まったく見ず知らずの赤の他人に、ただひたすらに怒鳴られ続けるーーー

 そうした誰もが敬遠せざるを得ない様なこの状況に、やむなくとはいえ自分は年長者。それ故の責任としてこの場へと赴いた神父は、今のこの瞬間にも『迷惑だ!』『どうしてくれる!?』などのいかにも語彙に乏しい糾弾の言葉を聞き流しながら、先の事を・・・そしてヨーロッパの通貨へ換金を終えて、ピートの知人、正確にはその曾孫がオーナーを勤める、5つ星ホテルへ向かった一行の事を思う。
 手痛い。
 考え始めた神父の脳裏に、真っ先に浮かんだのはその言葉。
 その言葉の意味はーーー何だか・・・テーブルに置かれた硬そうなこの灰皿を、対面している中年男の鼻先にぶつけて、迅速に黙りこくらせる事の出来ない心苦しさとか(この辺りしっかりと弟子の影響か)その苦しさを堪えている為生じる、耳の痛みなどーーーと、そういう事では無い。
 明らかなまでの戦力ダウン。それについてだ。
 正直ーーー苦しい。
 美智恵の統率力に判断力。それらに頼る事の出来ないこの状況に、一撃でこれ程の空港を半壊してのける相手。
 しかも、確実に相手はそれ以上の『何か』を隠し持っている筈なのだ。美智恵という強力な指揮官を欠いて、果たして勝ち目などあるのかーーー?
(いぃや・・・その事よりもまずは彼女か・・・)
 神父は今度は弟子の女性の事を考え始めた。ただでさえ気の短い彼女、それが母親の危機に直面してるとなると・・・
(何とかみんなで抑えこんでてくれよ・・・それがいくら美神君だろうと、たった一人を単独で突っ走らせるなんて事して、それで打開される状況でも、相手でもな・・・)
 コンコン!
 神父の思索は、そこで途切れた。
 ギ・・・と重々しく音をたてて、扉が開かれる。
 そして入ってきたのはーーー・・・
「君は・・・」
「ご苦労様でした、会長。とりあえず暴れる女豹はこちらで何とかしましたので、あとはこの副会長である私めにお任せを」
 神父があっけにとられてる内に、やや童顔の彼は、それに似合わぬ鋭い眼で、空港の代表と申した中年男に目を向けた。
「さて・・・」
 そうして、実に嬉しそうに・・・
『さあ、どうぞ・・・じっくりとお話をうかがいましょう』
 彼はそう言って、席についた。

 一方、その頃。

 曾孫がオーナーのホテルではーーー・・・

「魔鈴君、ヒャクメ様!・・・令子ちゃんは!?」
「駄目です!ホウキにのって空中から見ましたが、影も形も見当たりません!」
「私の『眼』でも駄目なのね〜〜・・・」
 西条が壁を叩く。
「くそ!気がつくべきだった・・・!」
 歯ぎしりしつつ、西条は空港にいる神父と連絡をつける為、携帯を取り出した。
「・・・今から考えてみれば、イタリア美人に引き寄せられた横島君はともかくとしても、薬を買いに行くといった氷室さんやシロちゃん達まで、あの事務所のメンバーが皆であんな状態の令子ちゃんをそのままにしていくなんて、おかしすぎる!」
 そう叫ぶと、ようやく電話がつながり、西条は事の次第を手早く神父に伝えた。仰天した声が携帯の向こう側から響く。
「そういうわけですんで!はい!至急お戻り下さい・・・よし!それじゃボクたちも令子ちゃん達を・・・!」
 その時、血相を変えた表情のジークが、西条らの部屋に飛び込んできた。
「大変だ!念の為、手がかりが残されてないかと、各自に割り当てられた他の部屋を見てきたらーーー!」
「み、見てきたら!?」
「ーーーエミさん!タイガー!ピート!それに雪之丞!あのアーサーとかいう捜査官!ドクター・カオスまでいない!」
 直後。

『な、何いぃぃいーーーーーーーー!!!?』

 まさに晴天の霹靂といった叫びが部屋に・・・いや。

 ー夜のホテルに、そしてローマで響きわたったー

 駆け抜ける。
「作戦?単独行動は危険!?」
 常時ならば足を止めてしまうような観光の名所も、奇異の視線を向けてくる連中なども、一切を目の端にさえ留めずにーーー
 ただーーー駆け抜ける。
「ふっざけんじゃないわよっっ!!!」
 そう吐き棄て、聖天使の名を持つ城。サンタンジェロ城についた時ーーー彼女は一度、足をとめた。
 いつのまにか、辺りに人影などは見当たらず、代わりにその付近一帯にに在るのは・・・
「・・・ご丁寧にゾンビに鎧なんかつけさせて!そんな事してママをいたぶる時間を稼ごうっての!?そんなの・・・」
 霊力により生まれる鞭をグッと握り締め、ゾンビの内一体を打ちすえる。そうしてーーー叫ぶ。
「許さないっ!絶対っっ!!!」
「そ〜っすね〜」
 突然、背後からの声。ギョッとし美神が振り向いた先には。
「んじゃ手早く片付けってっ!!?!」
「どっから涌いたーーー!?このストーカー野郎っ!!!」
 蹴たぐり、炸裂。
 更にその見知った顔をごまかし混じりに殴り飛ばし、沈黙したのを見てとると、美神はため息を一つし、辺りに呼びかける。
「あんた達も・・・いるんでしょ?」
 その言葉を受けて物陰から、あるいは木の上から現れた事務所のメンバー達。
 自分に向かい駆け寄ってくるおキヌ、シロ、タマモの姿にぶぜんとしつつも、頬を掻いて、美神は言う。
「しょうがないんだから・・・」
 そう言いつつもどこか嬉しそうにし・・・美神は鞭を強く握り締めた。
「じゃあ・・・行くわよ!目的地はあの城塞!目的は!」

 鞭が一閃。三体のゾンビが、まとめて引き裂かれる。

『ママを助けて・・・あの野郎を極楽送りよ!!!』

 戦闘ーーー開始。 そして長い夜がーーー

 始まる。


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