ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(苦痛)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/12/18)




 ー終曲ー



  深いーーー傷。

 それは、もはや、助かる見込みなど無い程に。

 背中から、斜めに彼女の心臓を射抜いた、あの光弾。
 そう。それまでの穏やかな、緩やかな空気を、膨らんだ風船を割るかの様に、突然に吹き飛ばしたーーー魔性の光弾。
 それが今度は、美智恵の命の灯さえ吹き消そうとしている。
 許せない。その思いが募る。
 しかしーーー
(何故だ・・・!?)
 呪縛は解けた。
 解けた筈・・・あの声に乗せられた、言葉のままに服従を・・・いや懺悔を強いる何らかの魔力は、既に感じ取れない。
 しかし、それでもなお、身体は動かない。動こうとしない。
 美智恵を看る。呼吸もしてるし、心音、脈拍も弱まっているだけ。あれほどの深手を負ったにも関わらずに。それは医学的な知識はある程度しか持たない神父やピートにも・・・否、その傷は、紛う事無き素人にも解るレベルの異常なものだ。
 そうこうする内、ドクター・カオス、エミ、それに魔鈴めぐみが駆け寄ってきた。即座にバトンタッチする。
 こうなった以上・・・神父やピート、西条に出来る事は、元凶を捕縛し、何をしたのか吐かせる事なのだが・・・
 怒りはある。確かに。しかしそれをも上回る感情が在る。
 恐れ・・・違う。これは畏れだ。
 あの仮面の男は勿論の事、かしずく様にしているゴーグルをつけた二人からも、異様なまでの威圧感を感じる。
 神父は見る。その威圧すら押し退けるほどに強い怒りに胸を焦がして、無意識に放つ霊力のオーラによって、あの美しい長髪をなびかせながら、今も真っ向から彼らを睨み続ける己が弟子。
 そう。彼女を、神父は見た。
(神も悪魔も恐れやしない・・・あのアシュタロスにそう言い切ったらしいが・・・いやはや何とも)
 味方にすれば、どこまでも頼もしく。
 敵にするなら、とことんなまでに恐ろしい。
(そうだね・・・君も立派に畏れるべき存在だよ)
 複雑そうに、しかし頼もしげに美神を見つめる神父。
 その耳にもう一度、『あの声』が響いた。
『流石だ、美神令子・・・!今の私に初めて接したというのに、そこまで噛みつくとはね・・・』
 ピクリ、と美神が眉を動かす。
「いちいち勘にさわる喋り方ね・・・!それにその言い方だとまるで、あたしと会うのが初めてじゃないみたいな・・・」
『そう・・・』
 あざけり嘲うーーー仮面。
『久しぶりだよ、実にね・・・さて・・・』
 仮面は美神の背後に視線を送った。神父達もつられるように、視線を巡らせる。
『君達もたいしたものだ・・・まあもっともそこの君とは、他のイタリアGメン捜査官達と一緒にいる時に、一度だけ顔を合わせた事もあるがね・・・』
 仮面が見る先ーーーそこには三人の男がいた。
 GS協会副会長、イタリアのGメン捜査官。伊達雪之丞。
 彼ら三人も、美神と同じく威圧に屈する事無く、敵意の眼差しで仮面を見据えている。
『まあ、しかし・・・それでも逆らえるというのは・・・』
「うるせえ」
 金髪のGメン捜査官が、仮面の言葉をそこで遮った。
「てめえなんぞに賛辞なんてもん送られたかねぇんだよ・・・それより聞かせろ・・・俺の同僚達はどうした!?」
 捜査官はやや激昂しているのか・・・全ての言葉がイタリア語であった為、ピートや西条など、その場にいる一部を除いては彼らの会話が理解出来ない。
 ともあれ、その問いに仮面はオーバーに肩をすくめた。その芝居がかった仕草はまた更に、彼の激情を募らせる。
「てめえ・・・」
『慌てないでください』
 今度は仮面が、彼の言葉を遮った。
『ご安心を・・・皆さんここにいらしますよ・・・美神令子、貴方の母親もね?』
 ーーー瞬間。
 信じられぬ光景が、全員の目に飛び込む。
『クク・・・中世時の秘法の一つ・・・肉体を生かしたまま、魂だけを光弾により撃ち抜く。皆、ちゃんと生きてますよ』
 開いた黒衣。そこにあるのは無数の顔。
「ママ!」
 そこには美智恵の顔もあった。
『おっと・・・彼女は特別に扱いますよ・・・何しろ、この私を激しく侮辱してくださりましたからねぇ・・・!』
『貴・・・様・・・!』
 全員等しく、憤怒の声を絞り出す。
『さて、そういうわけで私はこの特別な魂に苦痛を与える仕事がありますので、これで失礼しますよ・・・あ、そうそう』
 仮面は横島の方を向いた。
『先人の時同様、貴方は人の道具を掠めとる天才ですね。もっとも今回はあえてそう仕組んだのですが』
「あ?」
『もう『それ』は貴方に差し上げますよ。壊れた道具は必要無いですし・・・元は貴方の恋人だったと言える存在ですしね』
 そこで横島がハッとし、銀髪の男に目を向けた瞬間。
『私には、貴方の恋人の『力』さえあればいい・・・さあ、セステル、デナリウス!』
 黒衣の二人、その二人が同時に手をかざしたと共に、その掌から圧倒的なまでのオーラが、光となってほとばしる。
 床も、壁も、天井さえも焼き、そのままその空港そのものを貫き通した。
 地上の何物より疾く、駆け抜ける閃光。
 それが駆け抜けてから、しばらくして・・・反射的に身を伏せた全員が、よろめきながらも身体を起こす。
 既に仮面の、彼女らの姿は無い。

「う・・・ぐ・・・!」

 血が滲むほどに強く、唇を噛みしめーーー
 美神令子は叫んだーーー



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