ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラ復活の日々最終章更に別版(エピローグ)。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/12/11)

―そうして数日後
時は、夕暮れ時、眼下に広がるのは海と空、そして港町。
時折吹く風は、潮の香りを含んでおり、ひどく心地よい。
小高い丘の上にあるせいか昇るのは少々きついが眺めのよさは折り紙つきの場所
―ここは墓地である。
横島はそこにいた。

「また、思い切ったことするわね」
と、隣にいる美神が呆れたように言う。
「でも、いいと思いますよ。これ」
とは、花束をもったおきぬ。
「そーでござるっ。せんせーがしたんならいいでござるっ」
こくこくと何度も頷きながらシロ。
「そーね、いいんじゃない?」
どこか遠くをみながらタマモ。

「ま、けじめっつーことで」
苦笑しつつ横島。
目の前には、ルシオラの、彼女の墓がある。
前から、決めていたのだ。
彼女が死んだ事を、いなくなったことを本当に認められたら墓をつくろうと。
もちろん、この墓のしたには彼女の体は無い。
自分が彼女を覚えておけばいいと言う事もわかっている。
だけど、残したかったのだ。
何かを。
そして、自分に認めさせるために。

「に、してもね…墓はわかるけど」
肩をすくめ美神。
「ちょっとこれは…」
そっと花束を置きおきぬ。
「なにやら、告白のよーでござるなあ…」
むうとさっきまでのご機嫌はどこへやら。
少しばかり不満そうにシロ。
「ま、本人がいいならいいんじゃない…似合わないけど」
肯定の言葉をはきつつふっと哀れむようにタマモ。

「わるかったな」
尚も苦笑しつつ横島。
まあ、そうであろう。
確かに、この男にソノ手のことは似合わない。
と、いうか似合う顔でも、性格でもない。

「ま、別に、ここの土地代と墓代、の貸したお金さえ返ってこいばいいしね―ちゃっちゃっと働きなさいよ」
にっこしと思わず後ずさりしそーな笑顔で美神。
言葉は柔らかいのに物凄い威圧感である。
「……はひ」
だらだらと汗を流しつつ横島。
これから暫く(?)の貧乏生活決定である。

「で、でも、良かったですね」
と、二人の間に流れたどよどよとした空気をふりはらうかのようにおきぬ。
「何が?」
とは横島。
「声。昨日までからからにかすれてたじゃないですか?」
今日は、元に戻ってますよ。
喉をおさえおきぬ
「ああ、そうでござるな」
とシロ。
「そういえば今日はなんとか聞けるわね」
とはタマモ。
「―そうだな」
ぽりぽりと頭をかきつつ横島。
それは、数日前声が枯れる…いやのどが潰れるまで泣き叫んだせいである。
一生分かと思えるほど泣いた。
あの日、事務所のみんなが帰ってきても自分は泣いてた。
だけど、誰もそのことについては言わない。
触れない。
それが、嬉しかった


日が沈んだ。
太陽の残り火はなく空には、もう闇色の帳が落ちている。
「そろそろ帰りましょ?」
風にその長い髪をなびかせ美神。
「そうですね」
空を見上げおきぬ。
また今度きましょうかと言う。
「晩御飯の時間でござるしなっ」
腹をおさえシロ。
「食べる事ばっか…」
じとっと冷たい視線でタマモ。
「け、健康な証拠でござろうっ」
そんなたわいないやり取りに目を細め横島。
「あーおれはもう少しいるから、先いっとってもらっていいっすか?」
「んじゃ、車でまってるから早くしなさいよ」
三十分でこなかったら問答無用で置いてくから
との美神のあたたかいお言葉であった。


そして一人残され横島
「……ここなら、夕日が綺麗に、見れるだろ」
ここには彼女はいない。
そう知りつつも横島は言う。
そして口を噤む。
ぐっと痛みを堪えるかのように拳を握る。
目を伏せる。
脳裏によぎるのは
―最期の笑顔。
じわりと目頭に熱いものがこみ上げる。
ぐいっ
と服の袖で涙を拭う。
顔をあげる。
「また、くるわ」
―そして踵を返した。


墓碑銘にはこう書かれてある。
彼女の名前
それと
『再び逢う場所』
と。
そして体のかわりに埋められてるのは
銀色のペアリング。
再びであった時に
今度こそ、その意味を二人とも知って嵌めるために。

おわり。

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