ザ・グレート・展開予測ショー

FORCES(14)―叶わぬ道に尚ひとり立ち―


投稿者名:二エー
投稿日時:(01/12/ 7)

 全部、この瞬間の為の複線だったって訳だ・・・

隣のおキヌちゃんが俺の手を強く握る。

俺は、完全に包囲されていた。左手は切り立った崖。
そして前には美知恵隊長率いるGメン部隊―全員がフル装備だ。ご丁寧に俺の文殊による撹乱に備えてかガスマスクまで着用している。だが・・・何故か銃器らしいものは持っていない。代わりに俺達が仕事で良く使うボウガン・・・霊体ボウガンを一斉に俺のほうに向け構えている。美知恵さんが本気なら一歩動いたとたん俺はハリネズミになるって寸法だ。美知恵さんのあの目・・・アシュタロス戦の時のあの冷酷な。・・本気だな、本気で俺を・・殺す目だ。

そして後ろには・・・・美神さん。少し前までは俺が信じ切り、頼り切っていた人が・・

振り向きたく無かった、だが放たれるその殺気でどんな構えで居るかはイヤでも解った。

美知恵隊長がガスマスクの群れから一歩前にでる。・・顔に冷たい笑みを浮かべながら.
「何故・・・って聞かないのね、横島君?」

黒い何かが込み上げて来る。気付けば俺も喜びとは正反対の物で頬を緩めていた、
「聞けば、教えてくれるンスカ?隊長?」

「あら・・・せっかくだから聞いてよ。これでも準備に苦労したんだから」

「まず、この場所。ここならどんなに俺が暴れても周りに被害はゼロ、おまけに俺を誘う餌まである・・・次にこのところのハードスケジュール。これも俺の霊力を最低限に絞っておく為。ってことはこの策は俺がベヘリットを手に入れる前から進行していた。そして美神さんが誰に連絡してたのかは・・聞くまでも無いでしょう。違いますか?隊長?」

「あら凄い。その通りよ。でも一つ抜けてない?・・・何故こんなことをするのか。」

それは・・
「俺がもし魔族にでもなったら面倒な事になるから。ですね。」
そう、だからその装備はあいつを・・あいつを取り戻した後に使ってもらわなきゃ困るんだ・・だから、だから今は俺の、邪魔をするんじゃねえ。

美知恵隊長から笑みが消え、一瞬悲しそうな光がその目に浮かんだように見えたのは・・多分、俺の気のせいだろう。

「・・アシュタロス戦の後、貴方が何時かはこういう衝動に駆られるとは思ってたわ。最愛の人を失った上にそれを取り戻す材料が自分の中にそろっているんだから・・当然ね。
そして貴方は人間を眷属にかえる目鼻付きタマゴ・・・ベヘリットだったかしら?を手に入れた。となれば貴方がとる行動は一つでしょう?」
隊長の目つきがまた変わった・・・気がした
「ともかく、我々としては、貴方一人の勝手な「思い」の為に人類全体を危険には晒せません。あなたがそのベヘリットの使い方を知る前にしかるべき処置を取らせてもらいます。・・・構え!」

ザザッッ

改めて俺を目標として陣形が組まれる。半円を描くように俺に矢の軌道を集中させる構えだ。まずい。まだここでくたばる訳にはいかねえ。時間を・・時間を稼ぐんだ。

「そういえば、西条はどうしたんです?あいつが喜びそうなイベントなのに?」
俺は必死で余裕があるフリをする、が美知恵隊長相手では無駄かもしれない。

「ああ・・・彼ね、丁度別の仕事が入ってて・・残念がってたわよ?」
そうかい。あいつが残念がるってことは・・・

「つまり、面倒になる前に俺を消しちまおうって訳ですね?」
俺を消す・・・美神さんも、おキヌちゃんも・・・そのつもり・・・なのか・・・

「いいえ、違うわ横島君。消えるのは貴方じゃない。私達が何で『霊体』ボウガンを持ってるのか・・・考えてみなさい」

霊体ボウガンを使う相手といえば・・・

!!!!!!

また俺にルシオラを失えってのか!

「解ったみたいね・・そう、消すのは貴方じゃなくて貴方の中にある魔族の零基。・・・どうする?横島君?このままおとなしく従えばそれなりの施設で処理してあげます。それが嫌だ、と言うなら仕方ありません。この抗体付きのボウガンで貴方を射貫く事になります。この場合、命の保証はできませんが。」

ちくしょうッ!
あいつは、そういう運命だってのか?
消えなければならない・・死ななきゃならない存在だってのかよ!
頼む。俺はどうなってもいいから、あいつは、ルシオラだけは・・・・

「・・・横島クン」
俺をハメた張本人の声が後ろから聞こえた。

「何です」

「言ったでしょう、もしアンタが道を踏み外すことがあればこの手で殺してあげるって、これがその証明よ。・・・おキヌちゃん、横島クンから離れなさい。怪我するわよ。」

気付かなかった・・・
おキヌちゃんはずっと俺の手を握っていた。
俺の手を握るその横顔は強く、儚いものに見えた。

・・なんて浸ってる場合じゃねえ!おキヌちゃん、俺から離れるんだ!一緒に居たら巻添え食うぞ!

ふと、俺の中の黒いものが語り掛けてくる。そう、このまま彼女を盾にしてればあいつらは手出しできないと。俺が戦った虻野郎のように。

馬鹿野郎!何考えてるんだ俺は・・・
俺はその手を引き離そうとする・・・がおキヌちゃんはますます力を込めて来る。

「・・・・いいんですよ?横島さん・・・」
彼女は微笑んでいた。

・・・・俺には出来ない。

「おキヌちゃん・・・ありがとうな」

ポケットをまさぐる・・今ある文殊は・・・二つか。足りねえけど、しょうがねえ。
その一つに「盾」の文字を込める。・・これでのこり一個か。
俺はおキヌちゃんの手を振り解き、ガスマスクの群れに向かい駆け出す
即座に矢が俺に降り注ぐ。
エネルギー状の盾がそれを弾き飛ばす。

後ろから誰かが俺の名前を叫んでいた・・美神さんか、おキヌちゃんか・・そんなことはどうでも良かった。今はただ・・・目の前の障害を排除する。それだけだ。

走ってくる俺を見てガスマスク達が二手に分かれる。多分前にでてきた奴らが俺の動きを止め、その間に後衛が改めて狙撃する。といったところだろう。

だが・・・その前にこの「盾」をブチこんでやらあ。
俺はサイキック・ソ―サーの倍はあるそれの投擲体制に入る。

「来たぞっ!全員B装備解除!」

美知恵隊長の号令でGメン全員が・・・何だ?ガスマスクを外して・・・

!!!

投げかけた「盾」と一緒に足も硬直する。

・・・そこまでやるかよ。

ガスマスクの下にあったのは、皆女性の顔だった。そう・・・全員女だったわけだ。
さすが美神さんの親。俺の弱点をよく知って・・・クソッ!

動きが止まった俺に矢がうなりをあげて飛んでくる。咄嗟に盾を構える・・・駄目だ!間にあわねえ!

ドスッ

クッ・・・一本貰っちまった!な・・何だ?体から力が・・
右太股から血が流れ落ちているのを感じると同時に急激な脱力感に襲われる。

このままじゃ・・・あいつが・・・
俺はためらうことなく刺さった矢に手を掛け、返しごと引きぬく。

・・・・!!
肉の裂ける嫌な音とともに血と激痛が噴き出してくる。
普段の俺ならとっくに気絶してるな。だが・・・今は俺の中の黒い何かが意識を鮮明にしていた。Gメン達が再びボウガンに矢を番える。今度は前衛も後衛も無い一斉射撃をするつもりのようだ。俺は「治」の文字を文殊に込め傷口に当てる。だが傷は治っても失った血までは戻らない・・・おまけに文殊はゼロだ。

「もう文殊は無いんでしょう?横島君?」
ばれてやがる。

ここは「逃げ」の一手だよな・・
俺はエネルギー状の盾を圧縮させる。

「今度は良く狙え・・・放てっ!」

今だ!
俺は圧縮した盾を開放する、と同時に両手で顔を覆う。

目の前にもう一つ太陽が出来たような光が生まれる。

「ああっ目、目が・・・」
「くそっ!」
「落ち着けっ取り乱すなっっ!」

悲鳴と怒号が錯綜する。今度こそ・・あばよ。
俺は混乱している奴らの間を掛けぬけ、走りつづけた。足の痛みも気にならない。

後少し・・・ここを抜ければ小竜姫様の所に・・・

ヒュン、という風を切るような音がした。
同時に胸の当りに激痛が走る。いつのまにか地面に突っ伏していた。

最後に視界に飛びこんできたのは、ここに居ないはずの西条がボウガンを右手に持った姿だった。

・・・また・・・やられたって訳か
・・・俺の・・甘さが・・・憎い。

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