ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(出発)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/12/ 5)




 ー終曲ー



「でーーー何がどーなって、こーなってんの?」

 とりあえず、先の灰化する程のショックから回復した彼女は、そんな感想を口にした。
 場所は空港。政府により用意された特別機の、搭乗口付近。
 そこで彼女は、ほんの二時間前に再会した『彼』と、『とある一身上の都合』でまたも空港内で離ればなれになっていたところを、再びこの場で合流する事となったわけなのだがーー・・・
 目が、ご臨終です、と言わんばかり。
 何も映さず、ただ虚空を見つめるその瞳には、生気という人間にとり必要不可欠な『ソレ』がまるで感じられない。
 彼女が見つめる今も、彼は虚ろな眼のまま、友人のネクロマンサーの少女と、人狼族の少女に支えられたままだ。
 一体どのような事に遭遇すれば、このような状態になるのかーーー・・・?
 疑問を抱き、一同見回す。
 その最中ふとーーー彼女自身の母親と目が合った。
「さ!会長!西条君!時間は有効に使って、急いで急いで!」
 と、その途端ーーー母親、美神美智恵はあからさまに露骨な仕草で目線をそらし、急がしさから娘の視線に気がつかなかったかのように、振る舞う。
(怪しい・・・怪しすぎる・・・!)
 一層深まる、疑惑の眼差し。
 それを肌で感じとった美智恵の頬を、一筋の冷や汗が流れ落ちたりしたのだが・・・さすがにそれを娘に気付かせるような愚鈍な真似だけはしない。
(流石だ・・・実に見事な取り繕い・・・いやポーカーフェイスだよ、美智恵君!)
 そこはかとなく不穏な感想を抱きつつも、神父は関わろうとはせず、ただ黙々と女性陣の機内へ持ち込む荷物を手に、行ったり来たりを繰り返す。
 そうしてただ、時間だけが過ぎてゆき、やがて全員の荷が全て運び込まれたその時。
「う・・・!」
 彼が、目覚めた。
『!』
 一瞬にして、空気が張り詰める。
 身構える者。直接戦闘に向かない者を背後に庇う者。
 応対はそれぞれだが、皆、その男の挙動を一瞬たりとも見逃さずに厳しい眼で見据えている。
 男が立ち上がった。見る間に髪が銀の光の粒子を放つ。
 無論、既に霊的な力の拘束は施してある。ましてや男の能力もほぼ解明済み。
 しかし全てが解りきっているわけでは無い以上、理由も無しに気を緩めるわけにはいかない。
 先までとはまるで異質な、張り詰めた空気の中で時が刻まれる中、男が口を開いた。

『・・・・・・ここ、どこだ?あんた達は?』


 ー15分程経過ー


「記憶喪失っっ!!?」
 いきなりの耳元での大声に、美智恵は顔をしかめて娘を見返した。いくら機内に居るのが知った顔ばかりとはいえ、突然こんなリアクションを取られるのは困る。
「機内ではもう少しだけ静かにしなさい・・・それと、喪失したわけではないわね・・・」
 一行は既に、離陸する時生じるGに備えてベルトを巻き付けている。シロやタマモはその必要性が解らずに、ゴネたが、ようやく立ち直った横島やおキヌの説得により、渋々従った。
「恐らくは・・・一時的な記憶障害。彼に取りついていた思念が離れた時のショックで、記憶が混濁してるのよ」
「ふーん・・・」
 そう言い、あの後すぐに麻酔針で眠らされた銀髪の男に、美神が視線をやった時。
 突如、横島が割り込んだ。
「ち、ちょっと待ってください!俺、空港であいつに『見つけたぞ!』とか言われて・・・!?」
 そこで横島は、自分を見る美智恵の視線が、微妙に平時と違う事に気がついた。まるで自分を値踏みするかの様な眼だ。
「横島君」
「な、何すか?」
 美智恵は一瞬だけ迷った素振りを見せたが、すぐに口開く。
「・・・深く考えずに、そうなのか、そうでないのか、それだけで答えてほしいの。・・・彼の事、憎い?」
 問われた瞬間ーーー
 横島は質問の意味が理解出来ないといった表情を見せたが、その問いの持つ意味を噛みしめるかの如く、間を置いてーーー
「初めて会った時、敵だと思いました・・・でも何ていうか、今は・・・ただ言える事は・・・」
「言える事は?」
「憎く、ない・・・です」
 ややはっきりしない物言いとはいえーーー横島が答えると、美智恵は「そう・・・」とだけ言って、目を閉じた。
(記憶障害を起こしても、彼は横島君だけは憶えていた・・・横島君も恐らく本能で察している・・・これは令子にも『絶対』教えない方がいいわね・・・)
 その時、GS協会から派遣されたスチュワーデスから、離陸に備えるように指示される。
(敵は強大。私の予想では多分、あの三姉妹と『彼』の能力を併せ持ったようなクローンもいる筈・・・)
 そこで美智恵は、Gメンの制服のポケットにある『何か』を握りしめ、気を落ち着かせ皆に言った。
「イタリアのフィウミチーノ空港まで、約15時間。向こうで休めるとは限らないんだから、各自コンディションだけはちゃんと整えておいて」

 そう言った瞬間、機体が走り出してーーー大きく揺れる。

 この世の終わりが来たかの如く、おののくシロとタマモをよそに、GSチームを乗せた翼は、空高く舞い上がったーーー


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