ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(思惑)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/12/ 2)




ー終曲ー



『そう。彼の正体は・・・です』


 感動の再会から、三十七分後。

 静寂に支配され、もはや『彼ら』以外には全く人気の無くなった空港内で、威厳に満ちた怒鳴り声が響いた。
「な、何よ・・・そんな怒らないでも・・・!」
 彼女を知る者ならば、耳を疑わずにはいられない、そんな気弱な囁くような声。
 それはーーー男性に思わず『これは助け舟を出してやらねば』と思わせるある種、独特の魅力を備えた声だった。諦観していた一人のGメン捜査官ーーー西条が一歩前へと進み出る。
「先生!令子ちゃんもっっ!!?」
 一言。衝撃。
 足が止まる。二の足を踏む。
 動けない。あともう一歩、その足を踏み出した瞬間、己の身に圧倒的と評してもよい程の災厄が降りかかる事を察知する。
 目線だけを動かすと、恐らくはその尋常ならざる怪復力により、既に再会した時の傷は癒えている筈の煩悩青年だが、何らかに脅えきって身を縮こまらせてうずくまってるのが見えた。
 額に青筋を浮かべた女性、が、ニコリと微笑む。
「そんな?怒らないでも?怒ってなんかいませんよ?」
「嘘!」
「本当よ・・・ただおいたした『子供』には躾が要る・・・そうよね令子?」
 美神が口をつぐむ。どれほどその発言を否定したくても、目前で笑顔を絶やさずにいるこの女性が放つ、不可解な迫力がそれを許さないのだ。そうこうしてる内に、追い打ちがかかる。
「そうねー・・・貴方って前に、Gメン捜査官として子供達と触れ合う。そんな経験があったらしいけど・・・」
「マ、ママ!まさかっ!?」
「今回の事件が片付いたら、十日間その経験を生かしてあるスクールに臨時の教師として勤めてきなさい。そうしてキチンとしっかりお勤めを果たせば、今回の空港側から請求された金額については全部不問にしてあげる」
 ーーー直後。
 この世の終わりを告げるにも等しい・・・絶叫が響いた。

「良いんですか?」
 とりあえず実の娘に引導を渡し、空港側から特別に用意された部屋のソファに腰かけた彼女の耳に、そんな問いかけが届く。
「・・・・・・」
 その問いにはあえて応えず、黙って視線を巡らすと、窓ガラスの向こうで今だ注目を集めている見知った集団の中に、灰化した女性の姿が見えた。
「良いのよ。あそこでは先輩になる雪之丞君もいるし」
 きっぱり言った彼女、美神美智恵に対して、ヒャクメと呼ばれる神族の彼女は少なからぬ畏怖感を抱いた。そして。
(そんなスクール・・・絶対死んでも通いたくないのね〜〜・・・子供心がナイフどころか、チェーンソーで両断されそうなのね〜〜・・・)
 と、同時に抱いた気持ちを悟られぬ様、必死で平静を装う。
「あの・・・」
 そんなヒャクメを気遣うかの如く、右隣のジークが絞る様に声を出した。喋らずに様子を見守っていた神父。それに美智恵とヒャクメの目線が彼に、集中する。

「・・・彼の事・・・現状で解ってる事を報告します」

 灰化した事務所の所長は、皆に医務室へと運ばれたが・・・煩悩青年だけは、その同じ事務所で働くアシスタントの少女や、人狼族の少女に引き留められ、そのままその場でヒーリングを施されていた。
 無論その間には嵐の如くに質問責めを受けたが、それでも彼は、そして質問した彼女達も、久しぶりに自分達の居るべき空間へ帰ってきた事で、穏やかな気持ちで微笑んでいる。
 しかし。
『み、見つけたぞ・・・』
 居心地のよい空間を斬り裂く、敵意に満ちた声。
 揃って振り向いた先には・・・
「こいつっ!」
 人狼の少女、シロがーーー跳ぶ。
 勢いのままに、灰色の髪の男を蹴り飛ばし、よろめき体勢を崩した瞬間、首筋に霊波刀をピタリと近づける。
「観念するでござる!よくも先生を・・・!」
 眼差しを怒りに燃えたぎらせ、シロが更に霊波刀を当てると、男の首筋から紅の滴が垂れた。
『ぐ・・・!』
「さあ!とっとと謝罪を・・・」
 その時。
 ふいに、シロの肩に手がかかった。
「・・・先生?」
「悪い、シロ・・・」
 不思議そうな表情をするシロを押し退け、横島はただ、息荒く苦悶の色が見てとれる男を見つめる。
「お前・・・」

「!本当なの?」
 驚きに満ちた美智恵の声。
 重々しく、しかしジークは頷いた。
「間違いありません・・・霊波の相似点、霊体の構成も、全てがこの結論が正しい事を証明してくれています。彼は・・・」

 瞬きする間に等しき、一瞬の沈黙。

 そして、告げられる。言葉。


『そう。彼の正体はルシオラの、彼女達の複製です』



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