ザ・グレート・展開予測ショー

黒狼刃<ダーク・クロウ>=コンビネーション・ワン=


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/11/29)

シロとリナはデザートのケーキバイキングに突入していた。
かつかつかつかつぱくぱくぱくぱく…………
シロのモチベーションが幾分下がったため流石にもう取り合いは無いが、
無言でたいらげつづける二人のペースはむしろ速まる一方だった。
メインディッシュ争奪戦では大敗したリナが、己の誇りをかけてシロを突き放す。
「んぐぐぐぐ…脳味噌が砂糖漬けになりそうでござるぅぅ」
「ふふん!未熟ね、シロ……とやら。あたしはまだまだ腹八分目よ」
割愛していたが、実は前菜のスープもリナが圧勝していたのだ。
「う〜、次はこうはいかんでござる」
シロはうめき、テーブルに突っ伏していた。だがふと、食堂の入口のほうから殺気を感じる。
リナには、それはいい加減見慣れた物体だった。球体に鉤爪付きの触手が生えたような姿。
「……まさか…増幅版竜破斬でも?いえ、避けたんでしょうね…きっと…」
「知り合い……で、ござるか?」
隣でシロが問い掛けると、リナは軽く頷きつつ続ける。
「魔族……それもかなり頑丈な奴よ。術を増幅して使いたいから、時間稼いで!」
返事も待たずに、増幅の呪文詠唱に入るリナ。身につけた四つの大き目の宝玉が淡く輝く。
魔血玉(デモン・ブラッド)――術を強大化できる呪符(タリスマン)である。
「………なんなら、拙者が斬り捨てるでござる」
ダンッ
踏み切るシロ。魔族は身体を僅かに震わせ、球状の身体から新たに五本の触手を伸ばす。
ビャウッ
計十一本となった魔族の触手がシロに迫る。
バキガキギキキバキィン
瞬時に霊波刀を生み、触手を払うシロ。が、
ザゥッ
手数に勝る魔族の触手は、俊敏なシロの迎撃をかろうじてかいくぐって彼女の右腕を薙ぐ。
「ぅくッ!?」
ギキガキキキバキン
魔族の狙いはシロが痛みに怯んだ隙だったのであろうが、彼女はそれでも触手をいなす。
ズァッ、ジャビュッ
十一本の鉤爪による連撃は僅かに、しかし確実にシロの反応の限界を超えていた。
ゾグッ
「ウッ!!」
ついには腹に深い一撃を喰らい、シロは床に倒れこむ。魔族はそのままリナに近づく。
呪文は未だ完成しない。唱えながら後足でツーステップして間合いをとるリナ。
魔族が触手で追撃する。瞬間――
バシュゥゥゥイゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
「きごぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
空気が震え、魔族が叫ぶ。背中に霊波刀を刺し込まれて。
「拙者を――人狼をあの程度で倒せたと思ったのなら大間違いでござる。
背後をとるのはちと後ろめたいが、お前が勝手に背中見せたのが悪いんでござる。」
ぐぐぐ……
魔族の触手が、背後のシロに向けて、まるで蛇のように鎌首もたげる。
「ずぇりゃーっ!」
ザグゥゥゥッ
シロが霊波刀を更に深々と突き入れると魔族の全身が、びぅん!と震え動きが停まる。
「黒妖陣<ブラスト・アッシュ>!」
リナの術が完成した。人一人すっぽり包み込めるほどの大きさの球状に効果範囲を持ち、
命在りしものを飲み込む術である。ここまでの説明で気づいた人はいるだろうか?
はっきりいってこの術、混戦時には向かない。味方も巻き込んでしまうから。
ぶぁうっ
漆黒が生まれ、広がっていった。天井で。
ズズズズズズ………
天井に炸裂した黒妖陣が収まりきらぬうちに、その闇から人を象ったモノが生える。
「………先ずは見事と誉めておこう。わざわざ最初から気づいていたことを
アピールするためだけにその術を選んだ性根も含め、たいしたものよ」
その、潜んでいた方の魔族の言葉が終わらぬうちに、シロは霊波刀を引き抜いて構え直す。
「その気取った物言いはなんとかして欲しいわねぇ。
長々喋り倒した挙句あっさり死んだりされると、こっちとしても腹筋鍛えられちゃうし」
「フム…ならば簡潔にいこう。我はツェドディゥン。名乗られよ、決闘の作法である」
軽口叩くリナをまるっきり無視しまくった魔族の視線の先にいたのはシロ。
「シロ――。犬塚シロでござる」
『空気が凍りつく』という感覚は解らないが、今は吸った空気がカミソリのように鋭い。
二人の間に生ずる緊迫感は、それだけこの初撃に勝負をかけてることを物語った。
やがて、勝機を見たからか、相手の気に負けたからか、どちらからとも無く動く。
ガキッ
やけに呆気無い音を響かせて――いや、響くことも無い味気ない音を出して吹き飛んだ。
「――え?」
ッダァァァァァァァァァァァァン
店の隅に叩きつけられたのはシロ。まさに一瞬の出来事の後に、気づけば魔族の腰には長剣。
「ぐ………ぬぐぐ…!?」
立ち上がろうにも、全身に力が入らないシロは力無くうめくのみ。
「瞬時に間合いをずらすとはな………しかしそれは、我が居合抜きの速度と威力に
真っ向から抗う術をもたぬであろう汝の唯一の防御法。最早、勝敗は決した」
魔族が淡々と言葉を発する間に、倒れ伏したシロにリナが駆け寄る。
二人の位置との最適の間合いに踏み込み、勝利を確信した魔族の剣が閃く。
「魔風<デイム・ウィン>!」
リナが唱えた、低級の術を増幅したものが発動し凄まじい烈風を生み出す。
ちなみに地水火風の術は精神世界面に実体をもつ魔族には通じない。
シロは風に流されて魔族がいる方向に、彼女の本人の踏み込みの速度を上回る勢いで迫る。
がづっ
「ぐぉあぁああああ!?」
真っ直ぐに突き出した霊波刀を魔族に突き刺さし、シロはそのまま霊波刀を縦に振るう。
ザンッ
腹から頭まで引き裂かれた魔族は大地に落とした自らの影に沈んで消える。
「詠唱抜きのわりに凄い威力ね、それ」
シロの霊波刀を指差して言うリナ。増幅版黒妖陣すら通じない相手を一撃で屠る。
リナの手持ちの術から街中で撃てる規模の術に絞ると、それは窮めて難しい相談だった。
「それはともかく、怪我…治して欲しいでござる」

「…ってな具合に襲われたんだけど、あたしとシロ……とやら。どっちが狙われたと思う?」
問い掛けるリナに一同の視線が集中した。
その中でもガウリイとゼルガディスの眼は『リナ』ときっぱりはっきり即答している。
シルフィールに至っては『なんでそんな解りきったことを訊くんでしょう?』である。が、
「そういや、俺が向こうでボロメタにされた魔族…こっちの奴とつるんでたっけ…」
横島がポツリと呟くと、リナはたちまち表情を明るくした。
「そう、それよ!ようするに、あんた達を狙ってる連中がどうしてこっちにいるか?ね」
「連中?私達の敵は一匹の筈だけど…」
リナの言葉に訝しがる美神。
「それがそうじゃないみたいよ。あの魔族、彼女のパワーもスピードも
把握してるみたいな口振りだった。あんた達を知ってる魔族は複数いるわ」
人づてに聞いた情報ではああも断言できたものではない。
「あたしが妖狐だって見抜いた奴もいるしね」
タマモが付け加える。
「…だとして、だ。それでどうするつもりだ?」
「ん〜、やっぱ対策の段階じゃないわよね。なんで襲ってくんのかも解んないし」
ゼルガディスの問いに答える弁を持たず、自然に口調が弱々しくなるリナ。
「こりゃ、気長に構えるしかねぇか。しっかし、この大所帯で何時までも居候ってのもな」
ガウリイが陰鬱そうに呟く。シルフィールに迷惑かけ過ぎるのはヤなのである。
「………んーむ…それは確かにまずいわよね…それ以前に、寝泊りできやしないし」
「あら?リナ、あんた何言ってンの?路銀に困った時にあんたがすることっていえば…」
顔をしかめるリナに、ナーガは、しれっと言ったものだった。


セイルーンから少し歩いたところに、手頃な森がある。
「爆裂陣<メガ・ブランド>!」
ダゴガァァァァン
「氷の矢<フリーズ・アロー>!」
ジャキキキキキィィィン
リナの、ナーガの術が炸裂した。風に乗って、微かに聞こえる人間の悲鳴。
「ぅおしっ!どーやら当たりみたいね」
「ふっ!私に感謝することね、リナ=インバース。発案者は私よ」

「………ん…来たよ」
人の気配を一発で嗅ぎ取り、タマモが傍らの美神に告げる。
「OK!そんじゃ、一人残らずシバキ倒しましょうか」
「み、みみみみみ美神さん!盗賊って犯罪者でしょ?ヤクザでしょ?俺、イヤっスよー!!」
美神が促すのを、無意味に抵抗する横島。美神は彼に向けてにこやかに語りかける。
「ヤクザと私、どっちが恐い?」
「選択肢そんだけ!?どっちもタダじゃすまんじゃないスか!!」
「難しいことは無いわよ。戦えば多分死ぬケド、戦わなきゃ間違いなく死ぬから」
苦悶する横島に、タマモが投げやりにアドバイスする。…アドバイス…なんだかなぁ……
シロが来れば手っ取り早かったのだが、疲労もあるし、弱い者いじめに参加しそうに無い。
「ま、向こうから来てるんだし戦いたくないからって相手が見逃すとも限らないのよね」
「ひ…ひええええええ!?」
盗賊どものアジトにだいたいのアタリがついている。
とはいえ、そのだいたいの位置をまるごと呪文で強襲したりすれば大事である。
せっかくアジトから金品をガメ…いや、パチり…というかギろう…えー、没収しようという
つもりなのに、アジトごとおたからを消し飛ばしてしまっては意味が無い。
そこでこうして適当に術であぶり出し、とっ捕まえてしまおうというわけである。
こうして、夕暮れ時に、悪の組織が一つ潰えた。そして、一つの命が天に召されかけた。


リナ=インバースからの忠告:そんなひとやま幾らみたいな雑魚にてこずってちゃ、
先が思いやられるぞ。しかも、頭上がらなさ過ぎだし。

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