ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラ復活の日々、最終章 別版


投稿者名:アルフレッド・トンプソン
投稿日時:(01/11/29)

そのバチカンが誇る最悪の牢獄の一室の風がやんだ。
「おや?ほぉ、これはあの坊やの髪の毛じゃないか、そうかまだここに」
腰を屈めてその一筋の糸を指に取る。
「ふむ、成る程な。こういう結末もあるのか。どうだい?知りたいか?」
貴方は恐る恐る首を縦に振る。
「くくくく。知らないほうがいいかもしらないぜ。・・・好奇心か。
 人間とは面白い存在だよかろう。私はこの全知魔は何の責任もとらん。
  それでもいいな。悪いことは言わない。本当は・・・いや、言っても無駄だろうな」

その日、タマモとシロはあまり良い顔をしていなかった。
「むぅ、で御座るよぉ。拙者のテレトリーを犯された気分で御座るぅ」
「・・・・・。横島の心情としてはわからないでもないけど・・、確かにね」
ルシオラがどうしてもいたい、と言った先が事務所の屋根裏であった。
「落ち着くわ。ここって」
簡易ベットの一つ、タマモが使用している所に腰を据えているのがルシオラである。
「そうか?折角なんだから、天気のいい所とかさぁ」
「忘れたの?私は蛍の化身、こういうところの方が落ち着くのよ」
本来の蛍は儚さの代名詞にも使われる、弱弱しい虫なのだ。
「まぁ、おまえが言うなら、いいけど」
くすりと、ルシオラが笑う。
「でも悪いことしたかな?あの狼と狐のお嬢ちゃん達はあまり良い思いはしてないでしょうに?」
「大丈夫だよ、あいつらなら、飯でも食えば機嫌直るさ、むしろ怖いのは・・」
「そうね。あの人は嫉妬深い女性ですもんね」
本人の前で聞かせられる台詞では無い。
その本人である美神令子は、一階のガレージで珍しく車洗いをしている。
「くそぉ。こういう事はアルバイトにやらせる事なのに」
タマモとシロはオキヌちゃんに連れられて何処ぞへと、出かけたようだ。
美神だけ、事務所に残っている。
「そうね・・あの三人には、出かけてもらったほうがいいわね」
初冬のガレージでつぶやいた一言は、ホースの水を被っても冷たさに気が付かない現実さが見舞える。
「・・人工幽霊一号」
【なんで御座いましょうか?】
「コトが始まったら、伝えて」
【了解いたしました】
そのコトとは何か、人工幽霊一号にも、正確なコトはわからない、
そればかりか、美神も判らない。
まだ陽光は高い。
だが、屋根裏独特の雰囲気は丸で夕暮れのさながらである。
「ねぇ、ヨコシマ」
「なんだよ?」
「・・ううん、なんでも無い。名前を呼んだだけ」
少し髪の毛を弄った横島は、
「ヨコシマってのはな。俺の親父やお袋もヨコシマだろ?俺の名前は」
ぽん、と手を打って、
「タダオ、なのよね。そうだわ、私ったら・・」
ふぅ、と呼吸を置いて、
「ねぇ、タダオ」
「ん?なんだい、ルシオラ」
「ううん。何でも無い、名前を呼んでみただけ」
「うん・・なぁ、ルシオラ」
「なぁに?ヨコシマ」
「なんでもねぇ、ただ名前を・・」
呼んでみただけ、ではすまなくなった。
それは、事務所の外からでも見えただろう。緑色の光がルシオラの体から、発せられている。
「・・蛍ってね。今際には、いっとう体を光らせるの」
「・・・・知っていたのか」
ルシオラ、答えずに手を差し出して、
「お願い触っていて」
迷わず両手で以前華奢と表現した女の子の手を握り締める。
「私ね、嬉しかったよ。本当に短い間だったけど、もう一度私としてこうやって」
咳が出た。
「コンコン、こうやってお話ができたんだもん」
更に輝きが増す。
「私がほんのちょっとしか生きられないと知っても、迷わず生き返らしてくれて」
ないている。
横島は何も答えずに、手から腕へ、肩へと体全身を持っていく。
嫌がるワケでもなく、ヨコシマに体を任せるルシオラ。
「大丈夫?ヨコシマ」
「あぁ、気持ちのいい、光だよ、まぶしくのないし」
「・・・嬉しい・・・・」
とうとう、光が薄れてきた。
「ダメ・・もうあとほんの数秒」
横島は声も無く涙。
「・・・覚えていてね。私のような女の子がいた事を」
「あぁ」
不意に、ルシオラの体が震えた。
「やだ・・死ぬのはこわいよ・・ヨコシマ」
「俺もだよ、でも!でも!」
抱きつく力が更に強まる。
「・・ごめん、ヨコシマ。・・・・ねぇ、タダオ・・・」
「なんだよ?」

なんでも無い、よんだだけ、と言いたかったのだろうな。
だが・・な。これは全知魔である俺ですら予想でしかない。
そう。もういなかったんだよ。実際に起こらなかったことは俺でも知ることは出来ねぇ。
実際に起きることは見通せてもな、それ以降の世界に属することは、俺でも判らん。
後には蛍の死骸すらのこっちゃいなかったそうだぜ。
おっと、これで終わらせるわけにはいかねぇか。

【オーナー美神、コトが始まりました】
「うん・・じゃあ私、屋根裏に行くわ」
車掃除を途中で止めると、今まで被った水の感覚が戻る。
「寒いわ、暖めてもらうわよ・・せめてそのぐらいしか、出来ないじゃない」

とても重い足取りであったが、美神は屋根裏へと向かっていったのさ。
呆然としているヨコシマを現実に引き戻そうとした方法はな。
熱いキスって奴だな。
だがね・・そんなのが、何の足しになるのかね。
人間てのは、悲しみを現実に理解したら、虚無ってやつになるようだね。
あまりにもむごい別れに、味の無い唇か。
ヨコシマにとっても、美神にとっても、後味の悪い結末だな。
・・。後味が悪いな。

・・・。後悔してないか?・・このラプラスですら、どうもな。
せめて話し口調を変えるのが精々だったよ。
くくくく。らしくねぇなぁ。この俺としたことがよ。
そうだな、前から言っているが未来ってのは無限の可能性がある。
当然、だれそれとくっつく結末も種種様様だ。
よかろう、興が乗った。
性別不問、種族問わずの奴をピックアップしてやろう。
ちったー陰気晴らしにはなるだろうからな。
さて、どうするかね。目の前のお客さん。

THE END

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