ザ・グレート・展開予測ショー

あなたをScandal!【8】


投稿者名:黒犬
投稿日時:(01/11/25)




ちゃっちゃちゃちゃらちゃちゃ♪ ちゃっちゃっ♪(パフッ♪)

愛子の携帯から『笑天』のテーマソングが流れ出す。

「こちら、愛子。…一文字さん?」

お気に入りの着信メロディに、慌てて応答に出る愛子。

(………ぱふ?)

傍らで聞いていた小鳩の胸に小さな疑問が浮かぶが、今はそれどころじゃないと黙殺する。

「…そう。わかったわ。…あなた達はタイガー君達を病院に。…え!? いや生きてるでしょ? 確かめなさいよ……ええ、こっちは任せて…」

――P!

携帯を切った愛子の顔には清々しい笑みが広がっていた。

「どうですか、あちらの様子は?」
「上手くいってるみたいよ。もうすぐ、ココに横島君が届くわ」
「そうですか。楽しみですね……」

腹の中のニヤリ笑いを隠して会話する二人。

「……ところで。その猫、そろそろ放してやった方がいいんじゃない?」

愛子がずびしと指差した先には、小鳩に抱かれて何故かぐったりした様子の三毛猫。野良の割には丸々と太っていて毛艶も良い。

「これから捕り物なんだから。ジャマでしょ?」
「え、そんな。大好きなのに……」
「いや、いくら好きって言っても」

「だって、こんなに太っていて、美味しそうなのに…」
「はぁっ!?」

一瞬、愛子の脳裏を「君が代」を熱唱しながらスキップをするアシュタロスが駆け抜けていく。

「――ってあなた、食べる気!?」
「え、そんなに珍しいですか? 戦時中は、貴重なタンパク源の一種だったんですよ」
「今、戦時中かってーの!」

その時、よせばいいのに愛子の好奇心が首をもたげた。

「あれ? でもそういえば、肉食獣の肉って不味いって聞くけど?」
「その辺は問題ありませんよ」

小鳩がポンと両掌を合わせる。

「まだ離乳前の…」
「ご免なさいご免なさいご免なさいぃぃっ!! 聞こえないったら聞こえないんですぅぅぅっ!!!」

愛子は自分の耳を塞ぎ、イヤイヤと首を振りまくった。
既に半分マジ泣きが入っている。

「ふぅ、仕方ないですね。この猫ちゃんは逃がす事にします」
「うん! うん! ありがとう! ありがとう!」

心底安心したように礼を繰り返す愛子。この際、小鳩が小さく呟いた「まぁ、昨日捕まえたのがいますし」というセリフは聞こえなかった事にする。心臓に悪いし。

「と、とにかく、これで横島君は袋のネズミよ!」

強引に話を戻そうとする愛子。必死だ。

「ふふふ。たっぷりとお仕置きしてあげましょうね、愛子さん」
「ええ。もちろんよ、小鳩さん」

ふっふっふと、怪しく笑いあう二人。

当然と言えば当然の事として、二人共に横島にお仕置きするのが思惑の全てではない。真の目的は、その更に後にあるのだ。
すなわち横島を(力ずくで)更生させるとともに、この機に乗じて隣に立つ友人を含めた他の女たちを出し抜き、想い人を自分のモノにする。
共同戦線も同盟も、かの男を捕えるまでの話にすぎない。
甘美なる果実が一つしかない以上、それを口に出来るのは当然一人。なればその一人とは自分であらねばならぬ。
カナン。約束の地。ミルクと蜂蜜の流れるあの場所を我が手に。
そうすれば――



―――ミ〜ンミンミンミンミン。
校舎の外から、セミの鳴き声が聞こえてくる。
「…なぁ、愛子」
「なに、横島君?」
「なんだって、あんなに必死で俺を更生させようとしたんだ?」
「……本当は……わかってるんじゃないの?」
「わかってても、聞きたいんだ……愛子の口から……愛子の言葉で……」
「横島君……あたし……あたしは……」
「……愛子……」



―――リンゴーン♪ リンゴーン♪
チャペルの鐘が鳴り響く。まるで、若い二人の門出を祝福するかのように。
「なんだか思い出すな。プロポーズのきっかけになった事件のこと」
「ふふふ。まさか『良い父親になるための練習』だったなんて、思いもしませんでしたよ」
「笑うなよ。君と一緒になるために、自身をつけたくて必死だったんだ」
「ふふふ」
「ちぇっ、まぁいいや。――さぁいこう、小鳩。みんなが待ってる」
「はい、横島さ……いえ、あなた」



「青春……これぞ青春だわ……(じゅるり)」
「あなた……初夜の下着のリクエスト、ありますか?……(ぽぽっ)」

焦点の合わない瞳で空を見つめ、たらーりとよだれを零す愛子。
真っ赤に染まった頬を両掌で挟み、いやんいやんとツイストをかます小鳩。

類は友を呼び、友は同朋となる。彼女達は紛れもなく、似た者同士という名の心の友だった。

(どうか、何があってもほどほどで済みますように……)

そんな二人の様子を見ていた貧ちゃんが、思わず自分の立場も忘れて神に祈ったとして、いったい誰が彼を責められよう。

(出来れば、このまま横島のガキが永遠に来ませんように……)

憐れな自分と横島のために祈りを捧げる。

――が、生憎と神は留守だった。

きゅぴーん☆

愛子と小鳩の瞳が、二人同時に怪しく耀く。

「来たわね」
頭頂部の髪の毛を一本、アンテナのように立たせて愛子。なかなか芸風が広い。

「来ましたね」
鼻をクンクンいわせて小鳩。匂いでわかるのだろうか。たぶん、わかるのだろう。

二人は、まさしく肉食獣そのものの笑みを浮かべながら、ゆっくりと立ち上がった。
その身ごなしは歴戦の狩人を思わせる。
そして瞳。獰猛な、狩猟者の瞳。


――サァ、狩リヲ始メヨウ。



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