ザ・グレート・展開予測ショー

あなたをScandal!【7】


投稿者名:黒犬
投稿日時:(01/11/25)




「現時刻一九五八。作戦開始まであと〇〇〇二」

「了解。これより強襲作戦、名称【YST作戦】を開始します」

ちなみにYSTは「横島の性根を叩き直す」の略である。

『三、二、一……作戦開始ッ!!』









――声。

『ヨコシマ……』

――懐かしい声。

『横島クン……』

――よく知ってる声。

『横島さん……』

――自分を呼ぶ声。

『横島せんせぇ……』

――大切なひとの声。

『横島……』

――………声……

『ねぇ……知ってる?』

――……………



『微妙に似ててもところてんとこんにゃくは別物なのよー♪』

「――なんでやねぇーーーーん!!!」







『おきるの〜。ヨコシマ、おきるの〜』

ちびちびルシオラは困ってしまった。
目の前には気絶した横島。その横島が目を覚まさないのだ。
さっきからちっちゃな手でぺちぺちとほっぺたを叩きながら名前を呼んでいるのだが、なにやら「なんでやねーん」とか「んなアホなー」とか呟くばかりで一向にに眼を覚まさない。
こまった。こまった。どうしよう。
腕を組んで小首を傾げ、うんうんと悩むちびちびルシオラ。
やがて、ちみっちゃい頭の上にピコンと耀く豆電球。そうだ!

『……おきて…ア・ナ・タ(はぁと)』

―――CHU♪

効いた。これは効いた。
瞬時に覚醒し、ガバッと身を起こす。

「な、なんや!? 今の素晴らしい感触はー!?」
『わ〜い、おきたのー』

流石は目覚まし機能付き。偉い。

「いやー、よく生きてたな、俺」

猫のように頬すり寄せてくるちびちびルシオラを頭の上に設置しながら、よっこらせーと立ち上がる。どうやら、たいした怪我もしていないらしい。本当に人類なのだろうか?

「しかし、雪之丞のヤツ、派手にやったなぁ……」

辺りを見回せば、視界の様子は一変していた。
路面のアスファルトは砕けて捲り上がり、周囲の建物は軒並みガラスが砕けている上、壁面が波に洗われたように細かく削れている。
惨事の舞台が人通りの絶えた裏通りであったのは、不幸中の幸いであっただろう。
爆心地の地面はすり鉢状に吹き飛んでクレーターとなっており、横島が立っているのはその最底だった。

「爆弾魔かアイツは……お、居た居た」
『いたのー』

意外とすぐ近くの地面に雪之丞の姿を見つけ、半ば埋もれたその躰を引っぱり起こす。

「うーむ、ピクリともせんな。―――試してみるか」
『みるのー』

おもむろに文珠を二つ具現化させると、『激』『辛』と文字を入れて雪之丞の口に放り込んだ。

「――――――△◆☆▲★▽■!!!!!」

声にならない悲鳴をあげながら、全身を痙攣させて悶絶する雪之丞。
意識も無いままに、エビのように地面をのたうちまわる。

「おー、生きとる生きとる」
『いきてるのー』

嬉しそうに言う横島。流石は【鬼モード】である。
あぁコラコラ、ちびちびルシオラ。そんなもんつつくんじゃありません。

アリの巣に爆竹仕掛ける小学生よろしく、生き地獄に悶え苦しむ雪之丞をほのぼのと観察する二人。
と、ふいに横島の背筋に緊張が走った。

「―――!」

背後からの明確な殺気に、間髪入れずに振り返る。――と。

「少女の危機を救うため!」
「お姉様の貞操を守るため!」
「天と正義になり代わり!」
「煩悩の悪魔を叩いて砕く!」

――ババーン!! ちゃーちゃーちゃーらー♪(←SE)



「…………えーと、弓さんに一文字さん?」

振り返ったその先で、何やら大見得を切っているのはそれなりに見知った二人――弓かおりと一文字魔理であった。
かおりは既に水晶観音を身に纏い、魔理は特攻服に身を包んでいる。二人とも、いつぞやのクラス対抗戦で見せた格好だ。………ただし、その顔の半分をを覆った、蝶の形をしたマスクを除けばだが。

「いや、色々つっこむ所満載なんスけど……とりあえずそのマスク、何?」
「知れた事ですわ!」
「その通り!」

シュババッとポーズをつけながらの二人。

「たとえ煩悩色魔と言えど、殺せば罪に問われるのが世の道理!」
「ああ! 警察沙汰はイヤだからな!」

自身満々。胸を張って宣言する。
どうやらバタフライマスクは警察の目を欺く小道具のつもりらしい。

(…………最近、暑いからなぁ)

冷や汗などをたらしつつ、口にすれば即瞬殺されそうなことを胸中で呟く。
なにはともあれ、よーするに彼女たちも雪之丞やピートの同類であるらしい。

「それじゃそーゆーことで。じゃ!」

シュタッと右手を挙げて爽やかに立ち去ろうとする横島。が、殺る気満々の二人を誤魔化すには少々演技力と説得力に欠けていた。
かおりの双眸がギラリと耀く。

「おーほっほっほ! 逃がしはしませんわよ!」
「おう! やっちまえ!」

かなりヤバ気な感じで高笑いをあげるかおりの両手から、強烈な光芒が撃ち放たれた。
空気を裂いて襲い掛かる、霊波の光撃。
横島はとっさに間近にあったものを盾にする。

「フレンドシップ・バリアー!!」

炸裂する光芒。そして爆風。
舞い上がる粉塵が晴れると同時に、ぱったりと倒れ伏す―――雪之丞。こんがり好い加減に焼けている。

「……友よ、お前の事は忘れないぜ。たぶん、あと五分くらい」

ちゃっかり雪之丞を盾に使って無傷の横島。外道だ。
それでいいのか、横島忠夫。

『ヨコシマ、かっこいいのー♪』

ちびちびルシオラはそれでいいらしい。

そして迸る、かおりの絶叫。

「ああっ! ゆっきー!!」

   ・

   ・

   ・

――永遠にも似た数秒が流れる……。

「……ゆっきー?」
「そ、それはともかく!」

怯えたような視線を向けてくる友人の言葉を黙殺して横島に向き直るかおり嬢。
耳たぶ、真っ赤。

「弓……アンタ今、ゆっきーって……」
「しゃーらっぷ! と、とにもかくにも、よくも雪之丞を殺ってくださいましたわね!」

ゆっきー、死んでない。

「たとえあんなのでも私の彼氏。無念を晴らせずして逝った彼に代わって、仇を討たさせて頂きますわ!」

ゆっきー、死んでないってば。

「『因果応報』―――貴方の為に先人が残してくれた言葉ですわ。それを噛み締めながら消えなさい。最後くらいは潔く!!」

勢いよく――何かを誤魔化すように――まくし立てながら、かおりの手から再び霊波が放たれる。
もちろん、それを黙って喰らう横島ではない。

「フレンドシップ・バリアー2号!!」
「うわわっ! よ、横し……うぎゃぁあぁあぁあああ!!!」

実は密かに復活していながら、ちゃっかり寝たフリをして横島の救助を胸躍らせて待っていたダンピールのロースト、完成。

「……愛が……貴方の愛が痛い………あ、でもちょっとイイかも……(ぽっ)」

黒コゲになりながら何やら寝言をほざく半吸血鬼をぽいと放り捨て、ちらりと右前方に視線を走らせる。

(くっ、3号の落ちてる場所が……遠い!)

視線の先には完璧なまでにピクリとも動かないタイガー。そろそろ本気でヤバいのではなかろうか?

「ならば逃げるまでじゃー!」

ちびちびルシオラを頭の中に押し込むと、エイリアンのようなスピードで戦場からの離脱を図る横島。
その、殺虫剤から逃げる原始昆虫そっくりの後ろ姿を追いかけながら、怪しい仮面少女二人はひそめた声を交し合う。

「首尾は上々ですわ。あとは例の場所に追い込むだけ。……一文字さん、愛子さんに連絡を」
「お、おう」

なんとなくギクシャクした動きで携帯を取り出す魔理。

(……ゆっきー……ゆっきー……)

愛すべき親友の本性を目の当たりにしてしまった魔理は、人間不信に陥りそうになる自分を叱咤しつつ、携帯に指を走らせた。


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