ザ・グレート・展開予測ショー

人間と少女と妖怪と【4】


投稿者名:眠り猫
投稿日時:(01/11/23)



いつからだったろう―――
仲間になりたいと思ったのは・・・
勉強したいと感じたのは・・・

・・・意思を・・・持ち始めたのは――――


『どうしよう・・・』
黒髪の少女、愛子は低く呟いた。廊下に響くこともなく声は消えた。

「おーい!青春妖怪ー!!」
そんな時、聞き覚えのある声が届く。

ああ・・・そういえば・・・

「あ、んなとこにいたのか。本当、大丈夫かよ。」
『横島クン、別になんでもないわ。ここ、涼しいのよ。ね?』
下手な嘘。
「あ、本当だ。詳しいな。」
『まかせてよ、ここのことならなーんでも知ってるんだから。』

私がここにいるのも・・・

「それからよ、放課後もう一回行くんだけどお前来れるか?」
『あったりまえじゃない!青春だものね!』
「わかった。でも、無理すんなよ。」
彼の口調は特別なものではなかった。真剣そのものというより、普段の友達感覚のいつものそれ。
・・・優しいのよね、こーゆーとこばっかりは。



『でも、横島クンどうするの?説得できるかしら?』
「んー・・・問題はそこなんだよなぁ。」
痛いとこをつかれたとばかりに横島は髪をくしゃくしゃと、かく。
『考えてなかったの・・・』
半分呆れたように肩をおとした。その後、表情を読み取られぬよう俯いた。
だって、どんな表情しちゃうのか、わからないもの
『除霊・・・しちゃうの?』
「・・・・・・もし、まったく説得を聞き入れなくて攻撃してきたらやむを得ないと思うな。実際、仕事はそうだしね。」
なるべくやりたかねーけど・・・と付け加えた。それが彼らしいな、と愛子は少し微笑んだ。いくら悪霊になりかけているとはいえ、相手は子供。時には非情にならなくてはいけない職業なのだが、それができない横島に愛子は安心した。

私の時と同じだ

放課後まで数時間ある。それまでに覚悟を決めとかねばならない。
愛子は大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。
いきなり、横で深呼吸を繰り返す愛子に横島はどう反応すればよいか迷っていた。



『・・・オナジ・・・?あの、オンナのヒト・・・』
少女は自分とよく似た黒髪の女生徒を思い出した。
赤いバンダナ少年に気をとられて気づかなかったが、金髪の人もなんとなくそうだが黒髪の少女と自分の雰囲気がなんとなく似ていた。
なんでだろう?もう一度会えば分かるかな。
指先に力をこめた。なんとも言葉で言い表せない力。その細い指を大きく割れたビンに向けた。指、というより腕をゆっくり持ち上げると同じように破片が浮き上がる。
その指先に溜まった力を黒板にぶつけるように腕を思い切り振る。すると、浮き上がったビンの欠片も同じように勢いよく飛ぶ。
黒板にあたると今後こそ粉々に砕けた。少女は粉々に砕けた欠片と自分の周りに散乱した欠片をジッと見つめる。
少女は座っていた棚から飛び降りた。これが、人間の子供、重力に逆らえない者だったら周りから「危ない!」の一言くらいあるのだろうが、もう少女には重力なんてものはなかった。
そして欠片に触れ・・・ようとした。
触ろうと指を欠片の位置に置いてもなんにもなかった。
自分の指で直接触れることすらかなわなかった。
・・・なにも言葉をつくらず、少女は自分の手をただ見つめる。

イタイよぉ、イタイ
ああ、どーしたんだろう
なにがイタイんだろう?・・・わかんない。
でも・・・・・・イタイ・・・


時計の針はゆっくりと・・・確実に動いている。
全く変わらない、規則正しい針の音。

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