ザ・グレート・展開予測ショー

君がいるだけで(16)


投稿者名:JIANG
投稿日時:(01/11/23)

「ヨコシマが人間だったからさ……!」
 攻撃しようとしていたパピリオの動きがピタリと止まった。
「え!? ベスパちゃん、それどういうこと?」
「ヨコシマはね、人間なんだよ。魔族や神族、妖怪とは違って魂を簡単にくっつけたり、
取ったりは出来ないんだよ。」
「そんなことは知っているでちゅよ。私をバカにするつもりでちゅか? そうだとしたら
ベスパちゃんでも許さないでちゅよ!」
「そうじゃないよ。よく聞きな、パピリオ。………私の攻撃で破壊されたヨコシマの霊体
基盤を補うためにルシオラは自分の霊力を大量に――それこそ自分の体を維持できないほ
どヨコシマに与えたというのは知ってのとおりさ。その為にヨコシマの体の中にはルシオ
ラの魂が大量に入り込んでいたというのも本当だよ。だからルシオラの霊力を取り込んだ
ヨコシマはたぶん人間の中でも飛び抜けて強力な霊能力者になっているはずさ。でも一時
的に使えた二文字の文珠や強力な技が時間が経つにつれて使えなくなっちまったのはルシ
オラの霊力を自分の肉体にあったものに変換していったからなんだ。」
 ブスッとした顔をしていたパピリオだったが、ベスパの説明を聞いているうちにだんだ
んと驚きの表情に変わっていった。
「じゃ、じゃあ、ヨコシマ自身がルシオラちゃんの魂を消しちゃたんでちゅか?」
 ベスパはパピリオの問いかけに無言で頷く。そこにいるものたちも皆うなだれたり目を
そむけたりしていることから、それが真実だと言うことをパピリオに悟らせた。
「そ…そんな……」
「ヨコシマが神族、魔族もしくは妖怪だったのなら自分の霊力が回復した段階でルシオラ
の霊力を切り離してルシオラ自身を再生する事も可能だったのだろうけど、人間であるヨ
コシマはそんな器用なことは出来ないんだよ。だから体の中にあるルシオラの霊力を使っ
てヨコシマの子供として転生させようとしていたらしいんだけどねえ……」
 ベスパは小竜姫、ヒャクメ、ワルキューレ、ジークフリードの順に見回す。
 それを受けて小竜姫が気まずそうに答える。
「確かに、美神さんに言われたときはそれが一番妥当な方法だと思ったのも事実です」
「だからって、人間のヨコシマに何の霊的処置もしないって言うのは小竜姫、あんたたち
の落ち度じゃないのかい! 霊力が体内にある内にルシオラの残留思念がヨコシマに言っ
たそうじゃないか――数日は自分の霊力が残っているから強力な術や力を使えるだろうっ
て――それは裏を返せばヨコシマの体内にルシオラの魂が存在できたのは数日間だけだっ
て事なんだという事じゃないか! それを後で聞かされたときは、何もしなかったあんた
ら神族は何を考えているのかと正気を疑っちまったよ。私が言うのは筋違いだとは思うけ
ど、ヨコシマの活躍がなかったらアシュさまの……アシュさまの望み…新世界の創造とい
う野望は叶っていたんだ。そうなったあんたたちは完全に消滅していたんだよ。それなの
にあんたらの代わりにそれを阻止してくれたヨコシマとルシオラに対しての仕打ちがこれ
かい。まったく恩をアダで返すとはこのことだよ。しかも神さまがさ!」
「そ、そのことを言われると返す言葉もありません……」
 ベスパが突きつけるような言葉に小竜姫がうなだれる。
「そうは言うがな、ベスパ。だいたい子供として転生させるという考えは美神令子が出し
たものなんだぞ。だったらさっさと美神がヨコシマの相手をして子供を作れば良かったん
だ」
「あ、姉上…それはちょっと……」
 ワルキューレの強引な論法に弟であるジークフリードが慌てる。
「あの意地っ張りの美神さんが横島さん相手に素直にそんなことをするかしら? かとい
って、横島さんがルシオラを自分の子供として転生させるのだと言っておキヌちゃんや他
の女の子たちに手をだそうとしても、それを美神さんがおとなしく見ているわけないでし
ょうけどねー」
 やれやれと言った口調でヒャクメが評する。それはそこにいるほとんどの者が感じてい
ることだったのであちこちから溜息や苦笑が漏れる。

*** つづく ***

ルシオラの魂消滅の理由
考えて、考えて、考え抜いて、こんなんなりました。
反対票必至だな、こりゃー。
書いてる途中で覚悟を決めました(笑)

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