ザ・グレート・展開予測ショー

ま、いっか


投稿者名:みみかき
投稿日時:(01/11/22)

 なんか、過去の展開予想で誰かやってたネタかもしれないけど
 ま、いっか。(←そーゆー意味かい!)



 むか〜し、むかし。(某家政婦の声で)
 ある山奥に、若いマタギがすんでおった。

 このマタギ、体力と才能はあったが、どーも要領が悪かった
 ので、ふもとで売るほど獲物は取れんかった。
 じゃから、ずっと貧しかった。
 もちろん、未だに一人身じゃ。

 「こんなキャスティングはいやー!なんでネーチャンも
  TVも無い山奥に住まにゃならんのやー!
  露天風呂ぐらいあって、解放感を求める女子大生達が
  裸体を拝ませに来るのがスジちゃうんかぁー!!」
 ガンガンガン(←木に頭をぶつける音)

 ほっときましょう。
 どうせキャストはアイツです。

 或る日、男がいつもどおり、獲物を探したり、妄想に夢中に
 なって断崖から落っこちたりしていると、どこからか
 動物のうめく様な声が聞こえてきます。
 声のする方へ近づくと、一匹の狐がいました。

 まだ小柄の狐が、後ろ足を鋼の罠に噛まれています。
 彼と違って、要領の良い他のマタギがしかけたのでしょう。
 狐は一匹では脱出できない様子です。

 男はあたりをキョロキョロと見回しました。
 誰もいません。
 なぜかその狐の尻尾は、お約束通り九つもありましたが
 男にとっては「ありがとうキャンペーン!10%増量!」
 ってなぐらいにしか、意味はありませんでした。

 罠を外して狐を捕らえようとしゃがみますが、狐は小刻みに
 息をするばかりで、動こうとしません。
 男に見つかるまでに体力を消耗したのか、それとも痛みなのか
 。
 ハァ〜と深くため息をついて、カクッと頭を垂れると
 男は罠を外し、向こうにほうり投げると、狐をそのままに
 背を向けて帰ろうとした。
 根はとことん善人らしい。お人好しとも言うが。

 振り返ると、まだ狐は逃げていません。
 足の傷は少し深い様子です。
 「だあぁぁ〜〜、もおっ!」
 男は狐に駆け寄ると、ご愛用の傷薬を後ろ足に塗り
 なけなしの金で買った「MISTERジパング第七巻」を
 裂いてギプスにし、手ぬぐいを巻いてやった。

 割り切れなきゃ、狩人なんてやらなきゃいいのに(笑)




 グゥゥゥウ、キュルルル〜。
 ギャグ漫画の王道を突き進むハラの音を鳴らして
 マタギは自分の小屋へ帰ってきた。
 無言で扉を引くと、家の中に誰かいた。

 「おかえり〜、勝手にやってるわよ」
 一人の娘が、囲炉裏のそばで飯を食っていた。

 何でコイツは他人(ひと)ンちに上がりこんでんだ。
 何勝手に備蓄の少ない材料だして、鍋作ってやがんだ。
 何ガンガン火をたいてやがんだ。乾燥した薪は、これから
 貴重なのに。
 人間、ツッコミたい事が雪崩の様に起こると
 かえって無口になる。

 ゾバゾバ飯をかき込みながら、娘は手招きをして言った。
 「ボサッとしてると無くなっちゃうわよ。ちなみに私は
  道に迷って、怪我したあわれな旅人だから、ちょっと
  宿を借りるわね。」
 彼女の左足を見ると、見覚えのある手ぬぐいが巻いてあった。
 信長さまの凛々しいお顔も、そこから出ている。
 思わず男は、偏頭痛を覚えた。

 「しっかし、汚い小屋よね、アンタ彼女いないでしょ?」
 「ほっとけ!お前、機(はた)ぐらい織れんだろなぁ?」
 「何で”鶴の恩返し”みたいな事、アタシがしなきゃ
  ならないのよ!あんな需要の低いもん、今時金になるわけ
  ないじゃない。だいたいアタシ、あわれな旅人だし〜」
 「だああぁ、俺の食料ぉ〜!」
 「まあまあ、狩の仕方ぐらい、レクチャーしてやるって。
  あ、でも要領よかったら、アタシここに来る訳ないし
  無駄な努力ってこと?はははははははは!
  それと、さっき水飲もうとしたら、瓶にボーフラが
  いたわよ。なんとかしてよねー」
 「俺はなんともないわい!」
 「アタシはイヤなの!おなか壊すじゃない。恩返しに来た
  乙女に気ぐらい使いなさいよ」
 「密やかにやるもんだろ!恩返しは」
 「あ、大事な事忘れてた」
 「なんだよ」
 「あぶらげぐらい、置いといてよね」


 布団は一応、二人分あった。
 暖房の無い山小屋をしのぐために用意してあったものだ。
 狐娘は、厚手の方を当然のごとく権利の主張をして
 ぶんどってしまった。
 髪の毛のやたら多い彼女の方が、薄手の布団でもいいように
 思えるが、男の主張は却下された。

 「布団に忍び込んで来たら、ケシズミだからね」
 「せーへんわい!」


 「それじゃ、おやすみ」

 夜の挨拶なんて、いつからしてなかったんだろう。
 この小屋で、こんなに話をしたの、初めてじゃないかな。
 外は寒く、布団はうすいが、なんだか暖かかった。

 「ああ、おやすみ」

 狐はふと瞼を開けたが
 やがて穏やかに瞳を閉じていった。


 そして山奥の小さな小屋で、男と狐はいつまでも
 そこそこ幸せに暮らしましたとさ。

 どっと、はらい。


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