ザ・グレート・展開予測ショー

大々銀河宝樹


投稿者名:ギャグレキスト後藤
投稿日時:(01/11/21)

バン!
ババンババンバンバン!
いっせいに病室のドアが開く。

「令子ちゃん!」

病室に運び込まれた令子のよぼよぼしい姿。
その横で、横島もトラウマのような、植物のような状態と化して何やら呟いている。
キヌの顔に、布が被せられている。

美神除霊事務所はほぼ壊滅したと見て間違いないだろう。
何よりの証拠は、西条の携帯電話に着信が残っていて、電話した時点で違和感を感じていたこと。
気になって駆け付けた瞬間には、応接間だった場所から電話口までもが植物のジャングルと化し、
美神たち一同を雁字搦めに固定していた。

「令子・・・・・・ちゃん〜〜〜〜〜〜・・・・・・」
もともとか細い冥子の声も、さらにか細くなって怖さを増す。
「そんな・・・・・・」
エミも、どんよりとした感じの悲しみの目で生気を吸われひょろひょろと化した美神を眼前に血の涙をかみ締める。
「そんなの嘘でしょ!令子、目を覚ましなさいよっ!」
「よさないかエミ君!」
唐巣は取り乱して暴れそうになるエミを取り押さえる。
誰だって、こんな光景を見せられたら悲しむのは当たり前だが、エミにとっては、唯一の遊び友達だった。
遊び。
それは、心からの開放。
美神の心を許した人物が、エミであり、エミの心を許したのも美神。
非常に仲のいい友達だった。

「一体、・・・一体誰がこんなことを!」
唐巣は右手をぎゅっと握り締め、病室の壁を叩くが、じぃんと腫れ上がって痛がる。
だが、誰も突っ込まないのは当たり前だ。
ピートはというと、何やら青ざめている。
まさかこんな「奴」がこの世界に存在するのかとばかりの心境だ。
まったく心当たりのないタイプの・・・・吸血植物。
親父のブラドーからも聞いたことすらない。
「この僕も、許せませんよ!今すぐにでもとっちめてやりたいぐらいだ・・・・!」
ぶるぶると体全体で咆哮を上げるかのように情熱を揺さぶる。
プライド。
純粋なバンパイアハーフとしてのプライド。

・・・瞬間、美神の手が何かを握ったままにしていることに気づく。
干からびた精霊石に、干からびて発動を許されなくなった文殊。
その片方の文殊には、「代」と刻まれたままである。

「代わり・・・?」
ピートは、美神の手を広げてその干からびて腐敗した文殊を取り上げる。
対して、西条は思わず反応する。
「まさか、令子ちゃんが横島を守ったとでもいうのかい?」
「・・少なくとも、見た感じではそうとっても代わらないだろうな・・・・。」
ガッシと顎に手をやって考え込む唐巣。
「令子ちゃんが〜〜〜、横島君を〜〜〜守った〜〜〜〜?」
冥子も同じように考える。
そう思うや、横島はふらりと起き上がる。

「横島!おい!聞こえるか!」
横島の反応に気が付いた西条が、声をかけるが何も返事はない。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
目を半分開けたような、究極超人あ〜るのような、加藤淳のようなとろんとした目。
まだ正気を取り戻していないように見えるが、西条はそれでも声をかける。
「答えろ!横島!令子ちゃんはどうしたんだっ!」

それにもまったく反応してくれない横島を見て、西条は殴りにかかろうとする。
だが当然、唐巣が・・・いや、タイガーが腕をひっ捕らえた。
「友達に手ぇ出すんじゃないケェ!横島を殴る奴は許さんケェ!」
「タイガー・・・・・・!」
エミは、タイガーを見て思わず一瞬ときめいた感じに襲われた・・・が、
言うまでもなくエミは、自分に言い聞かす。
「・・・いけない、私はね、ピートに命がけなワケよ。ピート一筋、ピート一筋・・・」

瞬間、横島は立ち上がったまま一点を指差す。
部屋一台のテレビの方向に。
指を指すなり、途端にブラウン管は明るくなる・・・。

!!!

一同はぎょっとする。
手に文殊を握ってやいないのに、横島は一瞬でテレビを着けていたように見える。
誰もがそう思うしかなかった。
白井総合病院委員長も、その瞬間を見たときには、運搬中の替用点滴の元入りの瓶を落とすなりガシャンと割れる。
「医学は・・・医学は・・・・!」

ブラウン管の映った先には、一瞬ばかり、文字が連鎖で浮き上がる。
解読不能の文字。今までに見たことのない文字。
さらに浮き上がる光景には、見覚えがある。
轟々とけたたましい溶岩の音とともに、チューリップから花粉が舞うような光景が現れる。
いや、ビッグ・ヴァーンか?
テレビの中に写る光景を、半目の横島は指先で操る。
・・・・山村志津子。
ビデオを巻き戻している・・・・?
途端、背景が変わる。
どこかの薄暗い屋敷・・・・いや、倉庫か?
暗すぎて特定できないが、箱のような中からボールのような元が飛び出す。
・・・・岩のような大きさのものだ。
岩には、「貞」と言う文字がくっきりとヴィリジアン色に輝きを上げる。
その光景を見た一同は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

次に横島が見せた光景は、なんとも表現のし難いもの。
なんと言うか、点滅している画面の中に、白色の樹らしいものが次々と克明に伸びていく。
延びる先に芽が見えるので、とりあえず樹と判断したが、それとは違うもののように感じ始めた。
これは植物なのか・・・・?
誰もがそう捉われた瞬間にまたも画面は変わる。
同時にピクリと、横島の指が間接と逆方向に曲がるなり、あっっと叫ぶピート。
「どうしたのよ?」
エミの言葉とともに、映し出された背景には、巫女装束を身にまとったおキヌらしき人物が後姿で姿をあらわす。
その傍らには・・・・・
美神の後姿・・・・・・・・・・・・?
エミとピートはそう感じ取ったのだ。
同時に、唐巣は思い出す。

「まさか!!?」
「どうしたんです、先生。」

ピートの言葉に忠実に反応して言葉を返す。
唐巣の眼鏡がピカリとテレビに向かって光を照らす。

「・・・魔性宝樹だよ。
 吸血植物ヴァンヤンが転じた姿だ。
 確か・・・空海が修行の末に持ち帰ることを許されたものだったな。
 だが、何の間違いか、魔性の気を持ち始めた結果、人間を吸い尽くし始め、これを燃やそうと企んだ途端・・・・
 それを拒むたった一人の魔性の者が現れた。
 そいつは、由羅綾麻呂【ゆらの あやまろ】と名乗ったそうだ。
 確か今、地球上の全ゴーストスイーパーに指名手配、ブラックリストナンバー1に登録されてる
 もっとも危ない奴の上、龍族のブラックリストにも載っている。
 だが、何か・・・その「奴」とは何かが違う気が・・・」

そこまで言った途端、ブラウン管の中から触手が伸びる。
31の触手がブラウン管を突き破り、その場のゴーストスイーパーに襲い掛かる!

!!!!!!

シャシャッと全員軽やかに避けたつもりだったが、タイガーは太りすぎで、冥子は元から反応が鈍い・・・
ということであっさりと捕まる2人。
更にたちまち、恐るべき画面が現れる。
濃い紫色に変化した美神とキヌの顔がブラウン管の中から現実界の方向へ向かって振り向き見つめる。

「令子ちゃん〜〜〜〜〜・・・・」

思わずホッとしたように見つめる冥子だが、それは間違いである。

「ばかっ、何してんのよ冥子、こっちへ来なさい・・・・」
「だめええ〜〜〜、反撃しようとしても〜〜〜〜霊力が吸われてぇ〜〜〜〜え!」

泣きそうな声で冥子は言うなり、式神が影の中から現れる・・・が、ヨレヨレとしたように普通に動かない。
冥子の霊力に作用しているのだ。
いくら泣いても、もはや暴発するほどの霊力もなくなっている。
一秒あたり700マイト近くの霊力を吸っている計算になる。

31の触手を持ち、17の竜の頭、23の豪腕に、29本の尾をもつ宝樹。
こんな強敵に、美神を失った今や勝てるのだろうか?
そして、タイガーの運命は?

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