終曲(狩竜)
投稿者名:AS
投稿日時:(01/11/21)
ー終曲ー
ーその日は確かに、終わりを告げたー
だが。
「く・・・っ!」
『キキッ!』
恐らく、誰も気が付かないであろうこの場所で・・・それは行われていた。
「はあっっ!!!」
誇張無しに、空間までもを斬り裂かんとする、斬撃。
『キィッ!』
横薙ぎのその斬撃を、漆黒の色を具現化したかの様なソレは、身を屈めてかわす。前のめりになった彼女に、漆黒の化身はすかさず反撃の足払いを仕掛けるが、それは彼女にとっては既に予想の出来ていた、見え見えの一手だった。
だから、あえて、その足払いを受ける。
前のめりになったのは、見せかけに過ぎない。空振って体勢を崩した様に見せて、この足払いを誘ったのだ。
更に足払いによって完全に体勢を崩し、地に転がったところを、禍禍しき力を宿したあの『狩腕』で屠らんと、漆黒が迫る。
しかしそれさえも、彼女は読んでいた。
目前に迫る、狩腕。
その腕が自分に触れるか触れないかというところで、漆黒は大きく後方へ跳んだ。
『キキ・・・アブねぇモノ持ってるじゃねぇか・・・!』
その言葉が終わらぬ内に、ゆっくりと彼女は身を起こした。
(流石ね・・・あそこで『コレ』に触れてくれれば、即座に土角結界に封じ込められたのに・・・!)
そう胸中で独りごち、彼女はただの石にも見える、その結界を発動させるアイテムを後ろに放り投げた。
明らかになった以上は、先にあの狩腕を封じ込める事は出来ない。それでは例え発動させ取り込もうとしても、それより先に狩り取られてしまうだろう。
(楽は・・・させてくれそうにないですね・・・)
もはや用いる策など無い。元来、そういったやり口は彼女の性分では無いのだ。
油断無く漆黒を見据え・・・神剣を携え、構える。
(結局のところ、これで斬り捨てるしかない!)
達人のみが放つ事が出来る、必殺の気合いが彼女・・・小竜姫の全身から放たれる。
そして同じく、漆黒から放たれる凶悪なる魔気。
決着はーーー間近だった。
ー銀髪の男との闘いー
その闘いで傷つき、意識を失った美神、ピート、タイガー。
彼女達三人をGメン本部へと運んだ後、小竜姫はそのまま、横島や新米オカルトGメン達を襲ったとおぼしき『もう一人』が、欧州へと帰還する為訪れるであろう場所を、GS協会副会長と共に手分けして捜索してまわった。
何か緊急事態が隠れ家で発生したと言って、詫びながら副会長が立ち去った後も、単独で捜し続ける小竜姫。
ーそれから、しばらくしてー
漆黒と戦闘を開始するほんの二、三十分前。
小竜姫は、とある閑散とした、手入れもされていない空き地にどこのものとも知れぬセスナ機があるのを発見した。
同時に、その周辺には多くの家屋が在った筈だというのに、その飛行機が離陸する事が出来るだけの距離分、消失してるという事も小竜姫はすぐに看破する。
そして、背後から、あの耳障りな嘲笑が聴こえてきたのだ。
振り返ったーーー先にはーーー
全身の感覚が研ぎ澄まされる。
(いける・・・!)
小竜姫が得意とする、超加速を利用しての必殺の一撃。
恐らくその一撃を完全にかわすのは、例え相手が上級の神族、魔族だとしても、難しいだろう。
ましてや剣技に精通した小竜姫の技。
回避する事も出来ずに、戦闘不能なまでのダメージを相対するモノに与えるのは、もはや必定だ。
そして、更に、今の小竜姫の一流の剣土としての感覚は、これから放つ一撃がこれまでで最高の速度と威力を約束すると、そう告げている。
空気が張り詰め、全ての物音が遠く感じられる様になる。
風が吹く。一際強く。
その風に吹かれ、小竜姫と漆黒の悪魔の間を多くの枯れ葉が、お互いの視界を遮る様にして、舞う。
そして、その葉の一枚が、まさに二人の視線がぶつかりあう空間へと・・・
ーーー瞬間。
両者がーーー動く。
その葉が地に落ちるより先に、交錯する二つの影。
葉が、落ちる。
まるで・・・その葉と同じ様に、糸が切れたかの様に、その二つの影の内、一つが崩れ落ちる。
悪意が込められた、笑い声が響く。
『キ、ヤ、キャーハハハハハハ!!!!』
愉快でたまらないといった風に、その主はただ笑い続ける。
そして。
意識が闇に沈む直前・・・小竜姫は自分に向かい、あの『腕』が振り下ろされるのを確かに見・・・
ーーー竜は、狩られた。
今までの
コメント:
- 「続きです・・・読んでもらえれば、嬉しいです」 (AS)
- ↑はいはい、見てますよ(笑)
(ペス)
- エミかと思いましたら・・・小竜姫様まで、大ピンチ!?腕って霊力吸い取るんでしょう?神様激ヤバなのでは・・・ (けい)
- うむむ、あっと言う間に小竜姫を討つとは、まだまだ強敵揃いですね。こんな連中にどう対抗する?! (Iholi)
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