ある夏の風景
投稿者名:来栖川のえる
投稿日時:(01/11/20)
「○×駅―、○×駅―」
俺はアナスンスと共にホームに降りた。
地面から来るもわっとした熱気が俺を包み込む。
電車が駅を離れていく音を聞きながら、俺は改札口を出た。
さっきまで聞こえていた電車の音に変わって、今度は幾多のせみの声が聞こえる。
吹いてくる風はベタベタの肌に心地よかった。
俺は暑さでもうろうとするなか、重い足を運ぶ。
なににもさえぎられずに照りつける太陽が肌にささる。
一歩歩くごとに汗が道路に垂れる。
・・・・・・・・・・・今、何度だ?
・・・・・・・・・俺は夏が嫌いだ。
照りつける太陽がいや。
道路の熱気がいや。
海でカップルがいちゃついてるのもいや。
・・・・・・・ほんとはどうかしらんが、とりあえず今嫌いになった。
だがまあ、今日はこのまま踵を返すわけにゃいかんのだが。
俺は今、彼女と一緒に見下ろした街の中を、汗だくになりながら歩いている。
いや、俺だけじゃない。歩いている人みんなみんな、汗だくになって必死になって歩いている。
そんな風景を見下ろしながら、俺たちは空の中を二人で飛んでいた。
彼女のぬくもりを腕に感じながら。
彼女の声を聞きながら。
・・・・この頃になって、あの時以上に俺は彼女を必要としているような気がする。
また、彼女と一緒に空をとぶことはできるのだろうか・・・・・・・・・・?
彼女と、一緒に・・・・・・・
気が付くと、俺は目的地についていた。
俺はエレベーターに乗って最上階まで行く。
最上階まで行ったら、今度は西側の窓へ。
・・・・・・・ずっと前、彼女と一緒に口付けを交わした、あの場所へ・・・・・・・
もうすでにうっすらと空は赤くなっていた。
俺は持っていた花束を、文殊で「透」と念じ、窓を通り抜けさせて置いた。
・・・・・・・・彼女はここで、微笑んでいた事もあった。
・・・・・・・・彼女はここで、不安を打ち明けてくれたこともあった。
・・・・・・・・彼女はここで、唇を重ねてくれた。
・・・・・・・・彼女はここで、・・・・・・・・・・・・・
消えてしまった。
あの笑顔も。
あの声も。
あの表情も。
あの仕草も。
あの優しさも。
・・・・・・・・・・・全部、消えてしまった。
「・・・嫌な訳、ないでしょ」
「昼と夜の一瞬の間だから・・・」
「お前の思い出に残りたくなっちゃうじゃない」
「ヨコシマ!」
「ヨコシマ」
「ヨコシマ・・・・・・・」
「一緒に、夕焼けを見たよね・・・・・・・・」
「一瞬しか見れないから・・・・・・・
・・・きれい・・・
」
ポタッ・・・
・・・・一筋の雫が、俺の頬から流れ落ちた。
そしてそれは止まることなく、床に落ちてゆく。
・・・・・・・・俺は彼女と一緒に、赤く染まった空を日が落ちるまで眺めた。
・・・・・・・・・・彼女と、一緒に・・・・・・・・・・
そして何分かすると、外は暗くなり、したの方に見える町では、電灯がつきはじめた。
俺は袖でめをごしごしこすってから、彼女にそっと、こう言った。
また来年も、一緒に夕焼け・・・見ような
{あとがきのようなもの。byNOE。
いやはや、一ヶ月一回ペース説はどうなったことやら。とにもかくにも、二回目。半年前にはやった(?)墓参り編です。いちおーこれで、墓参り編は完結です。僕の中で。トンプソンさんやら、その辺のうまい方々がどうまとめるかは知りませんが。てへっ☆。
ちなみに舞台は八月十五日です。まあ、分かるとは思いますが。でわでわ。これで。}
今までの
コメント:
- 風景がとっても
イメージしやすいですね〜 (ペス)
- 私もどっちかとゆうと、夏は嫌いです。
なので、その描写力に賛同! (みみかき)
- 墓参モノ完結おめでとうございます。
アレな導入部分から徐々にソッチに転換していく様子が面白いです。 (Iholi)
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