ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラ復活の日々、最終章後本編 エピローグ


投稿者名:アルフレッド・トンプソン
投稿日時:(01/11/18)

山間の夜は蟋蟀(こおろぎ)の大合唱である。まるで今宵の満月に届けとばかりに。
二人は、ルシオラと横島は先ず腹ごしらえとになった。
「いただきまーす」
「はい、どうぞ、あなた」
「貴方って、どしたんだよ、ルシオラ」
「ルシオラは嫌、なんか他の呼び方でよんでくれる?」
「んじゃ、お前?」
「はい。どうぞ、と言っても私の手作りじゃありませんけどね。あなた」
「しょうがないじゃん。おまえ、ガスまであるだなんて、な」
暖炉が燃えているのがその証拠だ。
「実はね。べスパに頼んだの。ここ、使えるようにしてって」
「そうなんだ!水くせぇなぁ。お前は」
「えへ。ごめんなさい。あなた」
味は均一に統一されている弁当でも二人で食べれば美味しいはずだが最後の晩餐である。
横島は食べるのを止めて、じっとお前の顔を眺める。
「あら?どうしたの?あなた」
「・・なぁ、後悔・・してないか。おまえ」
「馬鹿ねぇ。もしあなたが、あの時判断してくれなかったら、こうして一緒に食事も出来ないじゃない」
「でも・・さ、カオスのオッサンが言ってた。『このまま実験を終えればボウズの娘として転生できるぞ、』って」
両の腕で机を叩くルシオラ。
「やめてよ!そんな事いうの。わ、私だって蘇るなら長く生きたいわよ。永遠なんて言わない!」
とうとう、泣き出してしまった。
「そりゃそうよ!横島だって、私に気を使わないで付き合いたかったでしょうけど!」
横島、何も言えず。
「恐いわよ・・あとほんのちょっとなんですもん、忘れようとしてるのに・・」
席を立って、玄関へと足を運ぶ。
「待ってくれ!俺が、俺が悪かったよ!」
慌てて横島も外へと向った。
風が強い。
「ルシオラ、済まねぇ、何処にいるんだよ??」
横島は、ルシオラが何処に向うか判っていたかのようだった。
以前横島が居住していた部屋から見える裏庭。そこにいるのだと。
それは正しかった。
「済まねぇ、ルシオラ」
崖を覗き見るようにしていたが、声がかかるとこちらを振り向く。
涙を拭い去る。
「あのさ。ヨコシマはここに来て私のパジャマ。さがしたんだよね」
きょとん、とした表情を見せた横島だったが、
「あぁ、そうだぜ」
「大変だったでしょ?探すの、布のきれっぱしだったんだし」
「・・・」
実際大変だった。崖を上り下りして、あてもなく探し回った。
ゴミを漁るような真似もした。そこまでして欲しかった理由は、
「おまえの・・形見が欲しかったんだ」
ルシオラは横島の胸に顔を埋めた。
止めど無く涙がもう一度出た。横島は不器用だが優しく抱いてやる。
崖下より更に下。車が停まっている。
車内には三人、といえるか。2匹と1人だ。
べスパ、パピリオ、そしてDrカオス。
パピリオはすやすやと、夢のなかであった。
「わたち、もういちどルシオラちゃんの声をききたかったでちゅ。でも・・最後はポチに渡すでちゅ」
寝言のようだ。
「なぁ、爺さんどうしてここまで来たんだ?」
「ん?言ったじゃろ、小僧の忘れ物、文珠を届けにな」
ポケットから四つ、ビーダマ大の物を出す」
「・・・本当か?」
「嘘とは、いえんがな。・・もしかしたら、ワシのこの脳が突拍子もない方法を思いつかんかと・・」
その為には、ルシオラの近くにいなければ、ならないのは、真理である。
「で、どうなんだ?」
「・・・・。それより、御主等こそ、このような場所に残っているのじゃ?」
「ふっ。あと少しの時間。あの子が何を望むか、判るだろ?なら二人きりの方が・・」
「そうじゃのぉ。若いとはうらやましい」
「おい」
カオスはべスパに睨まれてやや萎縮したようだが、
「あの横島は、時にとんでもない力を発揮する」
「あぁ、奇跡みたいな事まで起すわな」
「それを・・」
期待している、とは口にはしなかった。
「風が更に強くなったようじゃ」
フロントガラスに落ちてくる枯葉の速度が増したからだ。
「・・ゴメンヨコシマ。泣いちゃった」
「いいよ、俺が悪いんだから。気晴れたか?」
「うん、戻ろう。寒くなっちゃった」
「あぁ」
横島はルシオラの顔を抱いていたのを、先ずは自分の口へと持ってきた。
「今度こそ、ちゃんとな、寝起きとか、寝ているふりとかじゃなくてな」
「うん」
数秒たった。
顔から腰に手をやって同じ方向になる。寄り添うように。
「ねぇ、あの時私が言った事、覚えてる?」
「ん?」
「・・・もう一度言えるわ。部屋で待ってて」
驚きも、喜びもしなかった。何も言えなかった。
「せめて、生きている間に、ヨコシマの一生を決める日の・・心に残りたいの」
まだ反応が無い。
「ねぇ。なんとか言ってよ」
「駄目だよ」
「えっ?」
「待ってるなんてな、それっ」
足が宙に浮いた。横島、ルシオラを抱きかかえて、
「今度は一緒に、部屋に行こうぜ」
「ちょっと、ねぇお風呂ぐらいはぁ」
「おまえの体は、風呂にはいらなくてもいい臭いだぜ」
気障ったらしい台詞の返答は、
「うふっ。誰にならったの?そんな台詞」
「やっぱ、わかる?親父の受け売り」
二人の笑いは蟋蟀だけが聞いていた。あとは風音と、綺麗なまでの月が観ていた。
月から太陽に変った時、山荘に一台の車が停まった。
「・・爺、なんて言えばいいだろうかな?」
「あぁ、小僧を見てから決めればええじゃろ。どんな顔をしているか、な」
車のエンジン音に反応してか、玄関があく。
「おぉ、こぞ・・ん??」
「・・え!?」
「あぁ、べスパ、何よ鳩が豆鉄砲食らった顔して。Drカオス、おはよー」
次に顔を見せたのは気だるそうな顔をした横島だ。
「むにゃ?・・あり、どうちてルシねえちゃんが??」
パピリオもおめめぱっちりである。
「カオっさん。どうしておめぇこんな所に?まぁは入ってくれよ」
「それよりさぁ、ねぇ私ってもう時間切れじゃなかったの?」
リビングにつくまで目を丸くしていたカオスだが、
「ふむ。ちょいと舌を出してくれんか?」
すると、その場にいた全員が舌を出す。
「おい。この蛍の嬢ちゃんだけでいいわい、えとほい。次は脈をはからして・・」
一通り医者の真似事をしたカオスだ。
「あのー。計算間違い、とかですか?」
「・・いや、計算はマリアがした間違いはないのじゃろうが」
「だが、こうやってルシオラは生きているではないか!」
べスパの質問も当然だ。
「なぁ、どういう事なんだ?ほら。俺ルシオラ触れるし、幽霊じゃないみたいだし」
ひょいと、お尻をひと撫でした結果は、
「きゃっ!助平」
拳骨の答えである。
こほん、と咳払いをしたカオスが、
「そうじゃのう。小僧の体には、ルシオラの未来が託されたのは事実じゃよな」
「あぁ、そうだな」
とべスパ。
「つまりじゃ、その一部がその行為によって、このお嬢ちゃんに吹きこまれた、と言えば有る程度辻褄はあうじゃろう」
ルシオラが真赤になるのは当然だ。
「じゃが、それはこじつけに過ぎん。実際の所、ワシでも判らん。そうじゃな言えることは」
「言える事とは、何なんでちゅか?」
パピリオには難しい言葉の羅列であったか。
「・・おそらく人間と同程度の生命を得たと事かの」
それを聞くとパピリオが嬉しそうに姉であるルシオラに飛びつく。
「わっ。こらちょっと、私、ちょっと疲れてるんだから」
どうして疲労が溜まっているかはそちらに置いといて、じゃれるパピリオをあしらいつつ、
「あの、そう言えば、横島の文珠があるって、それくれませんか?」
「あ、あぁ、構わんぞ」
カオスから文珠を受け取るとそこに一文字記入してから、横島にあたえる。
「ルシオラ、何ていれたんだ?」
「『忘』ってね」
えっと、驚くべスパである。
「そう、私が人間と同じに生きられるなら、これからが本当の勝負よ!」
「勝負とは?」
「えぇ、ヨコシマを慕う人って少なく無いわ。オキヌちゃんとか、美神さんとか、でしょ?カオスさん」
「まぁ、な。これでなかなかモテる小僧じゃわい」
「だからね。今までは例外だったの。タイムリミットがあったから、でも無くなったからには!」
「ふっ。あんたらしいね。ルシオラ。そうか、残りの奴は私とパピリオと」
あとの残り一つ。
「それは私の!私も忘れるわ。昨日の事は、カオスさんの分は・・」
「あぁ、ワシなら1ヶ月もすれば忘れるわい、と言いたいのじゃろ」
そう言いながら、既にパピリオに文珠を使い、ルシオラは自分に文珠をかけている。
「さて、では私もな。その前にカオス」
「ん?」
「昨日の言葉、訂正する。感謝するぞ、Drカオス」
「言われる事でもない」
呆けた横島が漸く目を覚ます。
「あれっ?俺はどうして、えっと昨日は・・どうしてこんな所で倒れてるんだ?」
「どうしたのよ、ヨコシマ」
「えっ?ルシオラ!?」
皆それぞれの思いはある。
(・・気まぐれの女神かのぉ。今回の仕儀は、成る程、この小僧の事を考えると、面白くなりそうじゃわい)
風が舞う。

-FIN-


エピローグ                  ・・・・・・・・・・・・・・
おや?建物の中で風だと? 馬鹿な!ここは、 『バチカンが誇る最高の牢獄だぞ』
そこは陽光の一筋も蛍光灯も無い薄ぐらい部屋である。有る特殊な牢屋だ。
貴方はどうしてもこの薄ぐらい牢獄の奥へと、足を進めてしまう。
悪魔ラプラス、確実に未来を映し出す能力を持つ。
おい、貴様が着た事で風が吹いて、横島の髪の毛が何処かへいっちまったじゃないか。まぁ、これも判っていた事だがね。
まぁいい。興が乗った。いいだろう。貴様が知りたい未来を教えてやろうじゃないか。
さぁ、誰の事をが聞きたい?さぁ早く言え。ハリー、ハリー、ハリー、ハリー!!

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