ザ・グレート・展開予測ショー

爆炎舞<バースト・ロンド>=VS弐〜戦闘散発〜=


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/11/17)

実のところ、ナーガの術の完成を待っていたのはむしろシロの方である。
希望は人に活力を与える。ならば逆に、絶望は人から活力を奪う。
苦労して完成までこぎつけた術を、発動の瞬間に飛び退いてかわしてやれば大勢は決する。
それこそがシロの狙いだったのだ。そして、ナーガの声が朗々と響く。
「風魔砲裂弾<ボム・ディ・ウィン>!」
それにあわせて、シロは身を捻ってナーガの左側に滑り込み……
ばぼべぇぇぇぇぇぇぇん
「だぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ナーガを中心にして、全方位に爆発的に生まれた風がすべてを吹き飛ばす!
シロも全くの無防備、至近距離で受けたためか、食堂の壁に埋まって果てている。
「ほーっほっほっほっほっほっほっほ!甘いわね、切り結んだ時の身のこなしを見れば
狙いをつけなきゃならない術は回避される恐れがあるのは目に見えてるわ!
私はあらかじめそれを読んで広範囲無差別攻撃用の術を唱えていたというわけよ!!」
高らかに勝ち誇る白蛇<サーペント>のナーガ。とばっちりを受けた美神はうめく。
「な……なんて恐ろしい奴なの………自らの手で横島君を死にかけさせるなんて…」
そう、横島もモロに無抵抗状態で爆圧を喰らい、もはや虫の息と化していた。
「ふっ!当然ね。私が死にかけさせれば他の誰にも坊やを死にかけさせることは不可能よ!」
毎度の事ながら、ナーガは無茶苦茶な事を言う。
「なんかもう、本末転倒の応酬で……結局今が正常な気がします……」
おキヌもよろよろと起き上がりつつ呟き、滅茶苦茶になった食堂を見渡してげんなりする。
「でもまぁ……私にちょっかいかけた以上、タダじゃおかないわ!」
「ほーっほっほっほっほっほ!笑わせてくれるわね!?
この白蛇のナーガを前にして何ができるというのかしら?」
美神の宣戦布告に高笑いで張り合うナーガ。その間に美神は神通棍を取り出し、伸ばす。
「ふっ!面白い得物ね。しかぁし、それで私に勝つつもりなら思い上がりというものよ!!」
ダッ
ナーガの戯言をまるっきり無視して、美神が踏み切る。またダガーで防御姿勢をとるナーガ。
ビュバチィィィィィィン
「ひあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
加速、変形状態に入った神通棍はダガーを支点にぐにゃりと曲がって
ナーガの顔面に直撃し、吹っ飛ばす。
「……虚しい勝利ね…」
「なんか、あの人…強いんだかなんなんだか……」

タマモは先程の白尽くめに化けて仲間達との合流を目指していた。
ターミネーターではないが、この格好なら目立つことも、本人とはちあわす心配もない。
ふと、こちらに視線を送る存在が目に映る。
栗色の髪の少女――先日、横島を回収していった少女だったがタマモが知る由もない。
「あらゼルガディス?奇遇ねぇ、あんたもこの街に来てたなんて」
当然、「本人」の知り合いに出くわす可能性ぐらいは考慮している。この場合どうするか。
「ちとワケありでな。急いでる。また会おう」
「らしくないなゼルガディス。そりゃいったい誰の真似だ?随分無愛想な「俺」だ」
唐突に、路地の影から聞き覚えのある声がする。
「ヤバッ!」
シュッ
タマモが跳躍するのと同時に、路地裏のゼルガディスも飛び出す。
『氷の矢<フリーズ・アロー>!』
少女とゼルガディスの声が唱和し、二方向から無数の小さな氷柱がタマモに襲いかかる。
「この……!」
たまらず狐火を出し、氷柱を薙ぎ払うタマモ。
数は多いが、必要最小限の安全地帯を作って滑り込むぐらいはできる。
「もらったッ!」
ゼルガディスはタマモとの間合いを一気に詰め、剣で斬りつける。
ギゥン
いつぞやの時同様、狐火を帯びた掌で剣を受け止めるタマモ。が、
「風牙斬<ブラム・ファング>!」
ぞむっ
少女の声が響き、タマモの右手が突然裂ける。不可視の風の刃に、炎ごと断ち割られたのだ。
「はっ!」
ゼルガディスの気合一閃。タマモは男めがけて右手の血を撒く。
彼としては目潰しを喰らうのは面白いわけもなく、一歩退く。
このわずかな間隙をぬって、タマモは幻術で無数のダミーを作って逃げを打った。
「どうする?」
「深追いはやめたほうがいい。戦い方は素人臭いが、生き延び方を心得てる奴だ……」
少女の問いに、彼は憮然として言った。

横島達三人は街外れの狭い裏路地で右往左往していた。
食堂でのごたごたをしらばっくれるために逃げ出した美神に追いつけず、
シロに捜索してもらうにも、やはり食堂での一件の調査なのだろう王都警備隊なる連中が
動き回っていてこちらが追跡するどころではなくなっている。
「どうにもならんなぁ……こりゃ、一旦街の外に出ないと………」
「でも…どうやって?」
横島の呟きを聞き、おキヌが尋ねる。無論、それがわかればこんな所で愚痴ったりしない。
「しょうがない…しばらくこのままなりを潜めてよう」
諦めて、ぽそりと声をもらす横島。と、その時――
「あーッ!報奨金ッ!!」
タマモを取り逃がした二人と鉢合わせてしまった。
「げぇ!?」
「んっふっふっふっふ……今度こそ逃がしゃしないわよ…」
「……おい、そんなのに構ってる場合じゃないだろ…」
闘志燃やす少女に待ったかけるゼルガディス。
「それがそうでもないのよ……コイツ、詠唱無しでおかしな術が使えたの。つまり…」
「ふむ……さっきのと同類かも知れん。と、いうことか…解った。つきあう」
言い終えると、彼は剣を引き抜いてなにやら唱え始める。
「クッ…逃げようにもヘタに動き回わるわけにいかんし………」
「しかし派手な立ち回りをすればどの道袋のネズミでござる」
手詰まり。そして放っておくと間違いなく攻撃されてしまう。懸命に知恵を絞る横島。
「わっ!」
突然、少女達の背後で声があがる。横島とシロはあっけに取られる。
「お…おキヌちゃん!?」
幽体離脱で背後に回って相手の注意を引くのが狙いだろう。
このドサクサで人気のないほうに逃げるしかあるまい。横島はおキヌの身体を抱え上げ…
「魔皇霊斬<アストラル・ヴァイン>!」
ビズッ
「キャッ!」
ゼルガディスの呪文が完成し、おキヌ(霊体)は赫く輝く刀身で斬り裂かれる。
「てめ…!」
横島は足を止め、そのままおキヌの身体を置きなおして『栄光の手』を生み出す。
今の一連の成り行きに一番驚いていたのがゼルガディスである。
「……おいおい、マジか?ありゃ、ザナッファーの閃光の吐息を束ねたヤツそっくりだ…。
………一対一で闘りたそうだな……リナ、残りの奴は任せる…」
「まさか、俺みたいなの相手に魔法とかは使わないよな?」
「フン、剣だけでなら愉しませてくれそうな奴だけだぜ。そんな台詞を吐いていいのは、な」
ギュギィン
ゼルガディスが先ずは先制の一撃を繰り出す。横島は後退しつつ『栄光の手』で受ける。
間合いを広めに取っておけば、横島の集中力で単発はかろうじて反応できる。
「そういう動きは時間を稼ぐ意味がある時に使うもんだぞ?剣だけで勝負するんだろう!」
そうはいうが、ゼルガディスのスピードもさることながら、彼の斬撃の重さが厄介である。
ブロードソードは見た目に違わず、いや、見た目以上に重量がある。
横島にとってはまさに未知の世界といって差し支えないその重剣を、ゼルは楽々振り回す。
ガキィィン
「うぐ……!」
第二撃で早くも腕が痺れ始める。後退して衝撃を半減させているにも関らず、である。
ザビュッ
第三撃は、巧い具合に右側に避ける。
「ほぅ、動きは拙いがよく視ているな。だが、この程度では生き死にの勝負にはならん」
ザギィィィン、ドガァァッ
ついに第四撃に耐えかね、横島は『栄光の手』のガードごと弾き飛ばされた。
一方、シロとリナも休んでいるわけではない。
シロが霊波刀を構えて突っ込めば、リナはショートソードで受けずに流すように捌く。
真正面から受けるようでは三流である。そんなことをすれば初撃でリナの首が落ちる。
「この……!」
再びリナに迫るシロ。しかし、忘れてもらっては困るのだ。
「地精道<ベフィス・ブリング>!」
術を使わん約束など、リナ=インバース一言も了承した覚えナシ!
土が、精霊の干渉で瞬時に退き、リナの手前1mほどの地面に人一人入れる程度の穴が開く。
勿論シロの反射神経を持ってすれば、落とし穴にハマる事無くジャンプして斬りかかる。
「甘い!」
どうせ一発ブチかましたトコで当たりはしないんじゃあなかろーか。
とまで既に読んだからこそ、彼女は小技でシロを浮かせたのだ。
すかさず地面に剣を突き立てるリナ。いや、正確には地面に写ったシロの影に。
「影縛り<シャドウ・スナップ>」
「ウ……!これは………身体の自由が…?」
空中から降下したシロは、自らの意思では喋る以外全く動けない。尋問用に開発された術。
しかし別に、この術を『地精道』を放った後から唱えて完成させたというのではない。
『影縛り』の術は武具に込めて発動させる術ゆえ、込めてほっといても僅かな間持続する。
そして、こちらは横島対ゼルガディス。尻持ちついた体勢の横島にゼルが迫る。
ピギィィィィィン
横島は苦し紛れに『栄光の手』を繰り出し、澄んだ音が鳴り響いた。
「そんな………どういう…ことだ…?」
うめいたのはゼル。なんとゼルガディスのブロードソード、刀身が砕け散ったのだ。
おそらく、『魔皇霊斬』と『栄光の手』は後者が圧倒的に強かったのだろう。
そして、たった数合打ち合うだけで『魔皇霊斬』の魔力が減じ、剣のみの強度では
『栄光の手』との衝突に耐えられなかったのである。
「ふーはーはーはーはー!さぁ、正々堂々剣と剣とで勝負しようぢゃないか!!」
形勢逆転とみるや、モロ棒読みでそう言って立ち上がる横島には鬼気迫るモノがある。
「うぅ…なんて底意地悪そうな面だ………リナ、パス!こういうのはお前の相手だ」
「…なんてひっかかるものの言いよう……やるけどね、一応…」
そろいも揃ってウンザリしたような声を上げる二人。実際相当ウンザリしてたろうが。

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