ザ・グレート・展開予測ショー

炎の槍<フレア・ランス>=VS@〜COOL〜=


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/11/16)

バスッ
横島の脚を、熱い何かが貫通する。おそらく、光弾の一つだろう。無論走っていられない。
ベシャアッ
「ぐぅッ!?」
「ハーイ、追いついた。そんで、なんかいい手を閃いたかな?」
あくまでも軽い調子で語る魔族。
「も…もう勘弁してくれ…俺じゃあんたに太刀打ちできねぇよ……」
「ありゃりゃ情けない。……散々考えた末、使い古した泣き入れ不意討ち作戦とはねぇ。
忘れないで欲しいな、君にはボクを目覚めさせた責任があるんだ」
「…………クソッ!だったらテメーが死にさらせ!!」
横島は霊気を練って『栄光の手』を発動させ、そのまま本体の悪魔めがけて突っ込む。
「ボクが死ぬのは君が殺す以外にない。勿論、君が魔族の命を何とも思ってなければ死ぬ。
だが、それはボクの永遠なる勝利だよ。君は自身の心に抱いた矛盾に一生を蝕まれる」
正直なところ、横島はその言葉の内容を理解できてはいなかった。だが、迷う。
そして、光が軌跡を描き、また鮮血が迸る。横島はバッサリ裂けた自らの肩を抱いて倒れる。
「フフッ…なんだ、もう動けなくなっちゃったの?人間なんてこんなものか…」
独りごちて、魔族は自らの手足も同然の光球を手元に集める。
バシュウッ
魔族の手に、ぽっかりと穴が穿たれる。自身そのものであるはずの光弾に撃ち抜かれた?
「なんで?……こんなはずは…」
「ほーっほっほっほっほっほ!随分と人間様をナメてくれてるから、
どれほどのものかと思えば…ま、悪魔なんて所詮こんなものなのかしらね?」
声は、街道脇の巨木の前に佇んだ女性のものだった。しかし凄まじいのはその格好。
なんとゆーか、「戦隊モノにありがちな悪の女幹部」といえば、雰囲気が伝わるだろーか?
無意味に、というかむしろ常識に反発するかのような露出度の高い黒のコスチューム。
そしてそのヒモ服にアクセントを添えるトゲトゲ付きのショルダーガードに
しゃれこうべのデザインが毒々しいネックレス。漆黒のマントが一番控えめである。
こんな理解不能な格好で高笑いする、鮮やかな黒い長髪に長身の美女が唐突に現れたのだ。
「君がなにかしたの?人間にしてはやるね…それにしても何故こんな真似を…」
魔族が問うと、女性は、ばさぁっとマントをはねあげ喋り始める。
「ふっ、人間を貶めるという事はこの白蛇のナーガを貶めるも同義!
そんなことを見過ごしにはできないわね。そのついでに人助けで謝礼もいただく寸法よ!!」
「……そんなつまらないことでボクに喧嘩うろうっての?笑っちゃうね」
言って、魔族は光球たちに指示を出す。その瞬間、
「螺光衝霊弾<フェルザレード>!」
晧く、淡い輝きを帯びた魔力の光条がナーガの掌から解き放たれ、光球の群れに紛れる。
ズドムッ
魔族の咽喉笛にぽっかりと穴が開く。多分先程も、外見が酷似した術で奇襲したのだろう。
「ふふふふふ♪中々愉しませてくれるじゃないか……でも、ボクは君とは遊べない…」
音もなく、魔族は影に滑り込みそのまま消え去る。
「ほーっほっほっほっほっほ!たとえ魔族といえど、
この白蛇のナーガには敵わない事が理解できたようね!」
「うああああ……絶対関っちゃいけない…関っちゃいけないのは解りきっているのに…」
高笑いするナーガの足元目指し、横島が匍匐前進してたのは言うまでもあるまい。

時は流れて翌日のこと――
ガウリイとタマモはセイルーンシティに到着していた。
「着いたぞ、ここが魔法医の診療所だ。
俺は知り合いに会いに王宮に行ってくるから、先に診察受けときな」
「う…うん……」(らっき♪これで足の怪我がフェイクだってバレずに済みそう…)
タマモはガウリイが背を向けた瞬間、音もなく跳躍し診療所の屋根に飛び乗って
早速横島の捜索を再開する。
結局ガウリイから聞き出せた話を総合しても、解らないことだらけだった。
地球上の、自分達がいた時代以前ではないことまでは間違い無さそうだが。
残りの三人も、ここに到着した後はシロが先頭になって捜索を進めている。
「……このままのカッコだと、ここじゃ目立つかも…」
何故突然そんなことが気になりだしたかというと、
突然このタイミングで殺気を向けられたからだった。
シュオウッ
風を纏い、屋根の上に降り立った、白い簡素な服に白マント、白フード、白マフラー…
白尽くめの服装で腰に帯びるは肉厚な長剣。そして微かに見える目元は不思議な色の肌。
「貴様…何者だ?お人好しをからかうにしても荷物を盗むでもなし、
足の怪我はフリだったとて術無しでの人間離れした跳躍力……最初は穏便に訊いてやる」
声から察するに男であろう。淡々と言葉を紡ぐ。しかし、どうもこちらを敵視している。
少なくとも、敵だった場合に備えて警戒してるといったところか。
「答えなきゃなんない筋合いないんだけど?」
タマモは軽口叩きつつ間合いをはかる。素直に事情を話すのは火に油だろう。
「吐かないんなら、少々派手な訊き方もあるぞ……」
言って男は剣を静かに引き抜く。タマモは距離をジリジリと離し、男はジリジリと詰める。
「烈閃砲<エルメキア・フレイム>!」
フヒュッ、ゴグォウッ
男の術が完成し放たれると、タマモはそれを狐火で撃ち落す。
「バカなッ!?」
男がうめく。それもそのはず今の術、対象を精神面世界から攻撃する術である。
普通の火炎で撃墜できるものではない。狐火は火という形を取っているがれっきとした念。
それゆえ今のような芸当ができたのだが、タマモも気づいてなかったのに男が知る筈ない。
ズダッ
その隙を突いて、タマモは身を翻して猛ダッシュで逃げる。
「…クッ!………翔封界<レイ・ウィング>!!」
屋根まで追ってきた時と同じように、男の周囲を風が渦巻き、男の身体が中を舞う。
「どひゃああああっ!?ズルイっ!逃げきれっこないじゃない!!」
ボゥオッ
叫びつつ追いすがる男に正対し、再び狐火を放つタマモ。
「氷の槍<アイシクル・ランス>!」
男の術が完成し、またも狐火と相殺する。この瞬間、男は高速飛行の術を解除し、斬りかかる。
「くぅっ!?」
ガキィン
タマモは狐火の時の要領で、発火エネルギーを掌に集中して剣に打ち据えて防ぐ。
「チッ!なら………魔皇霊斬<アストラル・ヴァイン>!!」
男の声に呼応して、剣の刀身に赫い魔力の光が灯る。
ギキィン
しかし、まだ僅かにタマモのガードを破るには足らない。
いや、タマモの念と相殺し、少しづつだが削っている。打ち合いが長引けばタマモが不利。
タマモもそれに気づいたのだろう、いきなり防御を捨てて全力攻撃をかける。
(正気か!?)
男の内心をよそに、タマモの攻撃は男に一歩届かず空を切り、そのまま足場に到達する。
ドゴガガンッ
瞬間、屋根瓦が爆裂して視界と足場とを失う。
「なんだとっ!?」
「喰らえッ!!」
ボグゴゥン
タマモの最大火力狐火が放たれ、白尽くめの男を飲み込んだ。
「また氷作っても防ぎきれるもんじゃなし、そのうえこの高さじゃ助からないでしょ……」
タマモはそこまで一息に言うと、ぜぇはぁと肩で息をした。

「ほーっほっほっほっほっほっほっほ!なんと言われようと、この坊やは私の固有私財よ!
まだ最初の謝礼も貰ってないし、私の許可なく持ち逃げさせはしないわ!!」
昼食時の食堂で、唐突に女性の高笑いがこだました。それを間近で聞いた三人の女性は、
「………だ、そうよ二人とも?こんな無分別な男とは、縁切りましょ」
一人は、無感情に言い放ち、
「横島さん………不潔……」
もう一人は暗澹な様子でポツリと呟き、
「………………………………」
最後の一人はうつむいて絶句している。
「ちょ…ちょい待ち!俺は死にかけてたトコを助けてもらっただけで……」
「ふっ、そのとおり!そこでその謝礼を払えなかった坊やの身柄は私のものというわけよ!」
横島が誤解を解こうとすると、不条理なほど露出度高い服装の美女が「私のもの」と言う。
これでは誤解が解けようはずもない。
「あああああああああ!終わりやー!なんでいっつもいつも俺ばっかりー!!」
「えぇーい、大人しく聞いておれば好き放題言いおって!
だったら拙者だって先生が死にかけてるトコを助けて自分のものにするでござる!!」
無論、争点が随分ずれてはいるのだが、
高笑い女の大仰過ぎてわけ解らん説明では理解するのに大分順序が要る。
それがシロの頭の中でこんがらがってこんなわけ解らん結論に行き着いてしまったのだ。
「ふっ、ならばやってみることね!
この白蛇のナーガがついてる限り、この坊やを死にかけさせるなど無謀もいいところよ!」
ますますずれたことを言うナーガ。これではシロが横島の命を狙う刺客である。
「その言葉、決闘受諾と取るに充分!いざ尋常に………勝負!!」
ギャギン
シロは言うや否や、霊波刀を繰り出す。それを、腰に差したダガーを抜いて受けるナーガ。
「気をつけなさいシロ!ここじゃ私達の知らない術が出回ってるのよ!!」
美神の言葉に、横島も思い出したように言う。
「そ……そうだ!その姉ちゃんも無茶苦茶強いんだ」
「…………」
「…………」
無言の視線を横島に送る美神とおキヌ
「……え?ど……どしたんです?…二人そろって…」
恐る恐る尋ねる横島。するとおキヌが躊躇いつつ口を開く。
「横島さんは一緒にいたのに弱点とかなんか知らないんですか?」
若干の間を置いて、横島がやや気まずそうに答えはじめる。
「えー…と…残念ながらそういうのは解らなかったんだけど……」
「無駄よ、おキヌちゃん……コイツは敵陣営の人間なんだから…」
「…最低……」
「違いますよ!!」
美神が諦めたような心地で呟くのを力いっぱい否定する横島。
「じゃ、弱点は?」
半ば放り投げるように質問する美神。
「知りませんてば!!」
「ほら、やっぱり」
ヤケクソ気味に怒鳴る横島に、冷めた調子で美神が言う。
「なにが「ほら、やっぱり」なんスかーーー!!」
横島は駄々っ子のように手足振り回して喚く。
その間、シロとナーガの攻防も進展していた。
シロの敏捷性は、ナーガのそれをはるかに上回っている。
とはいえ、ナーガとしては術を唱える時間が稼げれば問題無い。
すなわち防御に徹すれば、あるいは避け、あるいは受け、と巧い具合に凌いでいる。
そして、ナーガの詠唱がやむ。術が完成したのだ。

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