ザ・グレート・展開予測ショー

明かり<ライティング>=ブレードスナッパー=


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/11/15)

陽光を全身に浴びて、白い肌と金色の髪が照り映える。
「結局あたしかぁ……まったく犬は役に立たないんだから……」
「コラーッ!聞こえてるぞーッ!飛べるくらいでいい気になるなーッ!!」
罵声が飛んできた方向、すなわち真下を一瞥し、独り言のように、しかしハッキリと呟く。
「とりあえず…邪魔すんな。役に立たないんならせめて、ね」
「なんて腹立つヤツでござるッ!!」
「まぁまぁ、タマモちゃんのおかげで助かったんだから…一時は本当にどうしようかと…」
「まったくねー。相手が空飛べるなんて夢にも思わなかったもの」
その言葉の主、美神令子に向けて、二人の顔がぎぎぃっ、と動く。ハッキリいって恐すぎる。
「タマモちゃんが飛べなかったらどうなっていたのやら……自身満々に取り返すって…」
「そもそもこんなトコに来てしまったのも美神殿が欲に眼が眩んだ所為で…」
「な…何よッ!過ぎたことをいつまでも愚痴愚痴と…私だって人の子だしミスぐらい…」
そうこうするうちに、一行は獣道から街道にでた。
「本ッ当にここって何時の何処なのかしらね?ヒャクメやマリアみたいのがいないし…」
ストッ
「街道なんだから旅人が通る筈でしょ?それに訊けばいいのよ」
美神の疑問に、降下してきたタマモが答える。
「アンタ簡単に言うけどねぇ……」
「勿論、一工夫するのよ」
そうして、タマモ以外の三名は茂みに潜み、タマモは怪我をしたフリで岩の上に座っていた。
「お嬢ちゃん、その怪我はどうしたい?俺らが看病してやろうか?」
(ハズレか……でもまぁ、思いのほか治安が悪いってことが解って収穫ね)
待つこと三分ほどで、食いついてきたのは帯剣したガラの悪いのが三匹。
(でもまぁ、悪者なら殴り倒して質問すればいいんだから大当たりかも)
と、思った矢先、声をかけてきた男とタマモの間に割って入った影が在った。
「なぁ、この娘の足は魔法医に診せた方が早いんじゃないか?」
長身で屈強な体格にブロンドの長髪。腰に吊るした長剣も含めて、中々絵になる男である。
「聖王都も近いし、そうしようぜ?」
人を見る眼が全くないのかからかってるのか、男はガラの悪いチンピラ達に言う。
「何だテメーはッ!?」
「関係ねーやつぁすっこんでろッ!!」
おそらく、下心丸出しの自覚があるのだろう。
からかわれてると思ったのか、激怒しまくるチンピラ達。
「おいおい…そんなに怒らないでくれよ。ただ、同じお節介焼きとして手を貸そうって…」
「ウルセーッ!」
三人が剣を抜いて金髪男に飛び掛る。瞬間、タマモが助太刀すべく飛び出す。が、
ビギッ、バキィィィンッ、ベキッ
金髪は迫りくる凶刃の三刀のうちニ刀をまず居合抜きで撃ち弾き、目にも止まらぬ速度で
残る一刀を返す刃で吹き飛ばした。しかも相手の三刀すべてを根元から切り飛ばしている。
「あ〜あ…おい、弁償しろとは言うなよ?こっちはそんな持ち合わせないぞ」
『ひゃああああああああ!!』
三人は悲鳴さえハモらせて一目散に逃げ出す。
「……とと…」
飛び出したものの全く何もできず、少し気恥ずかしいタマモ。
「ん?あんまり無茶すんなよ。聖王都セイルーンシティまで連れてってやるからさ」
「セイルーン?」
「あぁ。俺も知り合いの家があるから少し覚えてたんだけど、白魔術が盛んらしいから」
ちなみに、この金髪の彼はかなり特殊なパターンである。
白魔術都市の二つ名を冠する聖王都セイルーンシティの知名度は半端ではない。
それこそ「盛んらしい」などという呑気な台詞は戯言に均しい。
「……そんないかにもな名前、ちょっとでも聞いた事あれば覚えてそうなもんだけど…」
「どっちにしろ、この先の宿場町までは歩かなきゃならんし、そこからはすぐだ」
金髪の青年が指し示す方向は、どうやら横島の行方とも重なっているようだ。
「……助かるわ。あたし、タマモ。ねぇ、地図とか持ってる?実はなくしちゃって…(嘘)」
「ガウリイ・ガブリエフだ、よろしくな。……いや、地図は持ってない。
街道どおりに進めばキチンと次の町に着くし、街道からそれたら地図は役にたたんだろ?」
「イヤ……それはそーなんだけどね……なにやら凄まじいこと言ってる気がするわ…」
こうしてタマモ達二人(+三名)の珍道中が幕を開けた。

宿場町で昼食を済ませた少女とその金づる…と、いうか横島は王都を目前としていた。
「ふぃー、流石にあんだけ長距離をかっ飛ばすのはしんどいわぁ…でもまぁ、
どうにか日が暮れる前に聖王都ご到着ってトコね」
ずりずるずりずる……
「そんじゃ俺の命は明日、明後日中にーーーッ!?助けて、美神さん……」
「んっんっんっんっんっんっ。無駄よ。増幅版翔封界に追いつけるわきゃないんだし…」
心底意地の悪そうな笑みを浮かべる少女。
「だいたい、あんたシャレ通じなさ過ぎだぞ!」
「シャレで済ましてやる義理ないもん♪せいぜいあたしのふところあっためてね」
「お、鬼ぃッ!あんた美神さんに勝るとも劣らない鬼畜だーッ!
むしろナイスバディがない分美神さんより…むぶッ」
「あら、ごめんなさい。ついうっかり脚掴んだ手捻っちゃった♪」
仰向けから一転、うつ伏せ状態でひきずられる悲惨な横島。
何か掴もうにも取っ掛かりはなく、手は顔を防御する程度にしか役に立たない。
ぢゃりぢゃりぢゃり………
そんな横島の脳裏に、突如ヤな記憶が過ぎる。時間移動する前に味わった絶望。
「な……なんか胸騒ぎが…ヤバいっす!なんかヤバイのが近づいてますよ!!」
叫ぶ横島に視線を送ることもせず、少女はつまらなそうに嘆息して口を開く。
「あのねぇ……なんかヤバイのって…もう少し信憑性ある……と…」
言いながら、なんとなく言われるままに気配を探った少女は驚愕する。
『魔族!?』
二人は偶然にも同じ予感を口にしながら飛び退く。
ズシャシャッ
二人が一瞬前まで立っていた大地に亀裂が走る。
「これは……?そ、そうだよな…考えてみたら…アイツがこっちにいるわきゃねぇ…」
横島は相手の攻撃方法が刃物の類であるのを見止め、微妙な違和感を覚えていた。
「覚悟してもらうぞ、人間。我とまみえたが最期、何人たりとも逃げおおせるものではない」
それは六本の巨大な爪をもつ漆黒の塊だった。何処から声を出してるとも覚束無い。
「逃げる?冗談!あんたはキッチリ倒しとくつもりよ、再会できた以上ね」
「あんたの敵かーッ!?こんなんで死ぬのはイヤーッ!!」
しかし、その叫びを聞きとめたものはいない。
「クックック……汝にあんな術が使えることがわかった以上、もう喰らわんさ…」
そう、あの六本の爪をくぐり抜けて本体に術を撃ち込むのは困難極まりない。
「それは……どうかしらね…」
不敵に言い放つ少女。
ダッ
いきなり踵を返し、横島の首根っこを引っ掴んで走る。
「勝てへんのにつよがっとったんかーーーーいッ!?」
しかし少女は答えない。そして日照が一瞬遮られ、上方から先程の魔族が飛来する。
「追ってきたところを狙おうという腹積もりか?愚かな!!」
「冥王崩魔陣<ラグナ・ブラスト>!」
黒い光の柱が、逆五紡星の頂点となって魔力の檻が完成し、魔族を飲み込む。
バグシャアァァァッ
魔族は、確かに追いすがる自分を狙い撃つ策自体は読んでいた。警戒した術はハズレだが。
「ぐぃがるぁぁぁぁぁぁ!!」
荒れ狂う魔族は我武者羅に爪を振り回し、光の柱を破って斬撃を飛ばす。
「わああああ!?やめろぉ!!」
『防』
ギィンッ
爪はすべて文珠の干渉で目標に到達できない。
「え!?なにこれ?」
驚くのは少女である。今までにこんな術は見たことも聞いたこともない。
「ほぅ?汝も我と戦うか…それは叶わぬ事だな……なぜなら…」
「…なぜなら……君の遊び相手はボクだからだよ。また会えたね、お兄さん?」
漆黒の魔族の声にあわせるようにして、姿を見せたのは垢抜けた感じの女性だった。
これで、あの「ボク」の微妙なアクセントに聞き覚えがなければ人間だと思っただろう。
「う…うわあああッ!!何で貴様がこんなトコにぃぃぃッ!?」
「くす・酷いなぁ…今言ったでしょ?遊び相手なんだよ、ボク達。君がいるからいるんだよ」
「じょ……冗談じゃねぇッ!!こんなヤベェ奴と関ってたらホントに死んじまう!!」
タタタッ
横島は脱兎の様相で逃げ出す。
「あ…バカ、待ちなさい!あたしから離れたら余計危険よ!!」
少なくとも、魔族に狙われてるのであれば、フォローし合える距離にいるべきだ。
「どれ…それならば我と汝の決着も急ぐべきかな?」
「…く……」

「あはははは♪自分の影を振り切ろうとするようなものだよ?でもまぁ、頑張ってね」
耳元で、忌むべき声がバカ陽気な調子で語りかけてくる。
「ううううう…ちくしょうぅぅぅぅぅッ!なんか…なんか役に立ちそうな字は…」
激走する横島の周囲を、並んで飛翔する晧い光の群れがどんどん増殖してゆく。
「怪我したくなかったら、『爆』で吹き飛ばすのが一番だよ。でもねぇ………」
「ゴチャゴチャうるせぇぇぇぇぇっ!!」
「むー?そぉゆぅ態度ね、なぁるほど…」

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