ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラ復活の日々五日目『現と幻』後編(そのに)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/11/12)

「謝らないといけないのは、私のほう。」
抱きしめられたままそっと手を背中に這わせ抱きしめ返すルシオラ。
「だからっ―!!」
なんでだよっ!!
と叫ぶように横島。
ほかに言いたいことはたくさんある。
だが、強すぎる感情が溢れ出すこころが、言葉にできない。
だから―強く抱きしめる。
その感情のままに、強く。
そんな横島とは対照的に、穏やかに、柔らかにルシオラ
「だって私は幸せなんだよ?」
すごく。
とかみ締めるように。
「―しあわせ?」
初めて聞く言葉のように、意味の分からない言葉を聞くように、横島。
「だってオマエと出逢えて、好きになれて、好きになってもらえて、もう『私』のまま一緒に居れることは無いって知ってたのに、なのに、一緒にいれて一緒に過ごせて、最期までオマエがいる。私に残された最期の時間までオマエがいる…すごく、幸せだよ」
本当に、本当に幸せそうにルシオラ。
確かに死は怖い。
だが、その恐怖を覆い隠すほどのひとつの事実が彼女の中にあった。
それは、必ず自分が先に消えると言う事。
―横島の居なくなる姿は、苦しむ姿は見なくていいと言う事だ。
だけど
それと同時に横島は、自分のいなくなるのを見るのだ。
それも二度も。
自分がその立場と考えると、それだけで怖い。
そう、なによりも、
―いなくなることよりも。
それを自分の大切なひとに味あわせてしまう。
それがひどく哀しい。
だから―
「オマエにだけに、そんな思いさせてゴメンね」
と、言う。
「ん、んなこと…ねえよ…そんなこと」
ぽたり
と涙が一筋流れた。
本当は、自分が彼女に謝らないといけないのに彼女は謝る。
いなくなったあとの自分の事まで考えて―
何百回も夕焼けを見ると約束したのに。
それを守れなかったのは自分なのに。
その上自分の勝手な理由で生き返らせて、そしてまた消える恐怖を味あわせて。
怒ってもいいのだ。
『勝手なことをして』

『なんでこんな事をしたの』

だけど、彼女は、ルシオラは、言うどころか心配するのだ。
自分のことを。
こころが溢れすぎて
何をいえばいいのかもう、わからない
「ルシオラ…ルシオラ…ルシオラ…ルシオラ…ルシオラ…ルシオラ…………」
その代わりに名を呼ぶ。
もうすぐ呼ぶことの出来なくなる言葉を―
何度も、何度も、思いの強さを表すように。
「わかってるよ。うん。わかってる」
宥めるように、幼い子供をあやす母親のように横島を強く抱きしめ返す。
「知ってるから―全部。」
だから、幸せになって。
オマエに逢えて私は嬉しいんだから、幸せになれたんだから。
私は幸せにしてあげれないけど。
そういってルシオラはひっそりと寂しげに笑う。
だが、その言葉に返ってきたものは
「―なに言ってるんだよ。」
といういささか怒ったようなものである。
「え?」
ぐい
と体を一旦離しそして顔をつき合わせる。
目の前にあるのは真剣な顔そして
「幸せに決まってるだろ―おまえに会えて」
真剣な言葉。
「…うん」
「好きだ」
「うん」
「すきだからな」
「…うん」
何度も何度も何度も繰り返させる言葉。
どれだけ重ねても足りない言葉。
けれでも二人は言葉を重ねる。少しでも、伝える事のできるように

そして、どれだけたっただろうか?
ルシオラは再び抱きつく。
それは先程のような強いものではなく柔らかい抱擁。
「また、逢えるよ」
いつか
と確信をもってルシオラ。
「ああ。ぜってえ生まれ変われよ」
どんな形でも。
それが、今の二人でもなくても。
この魂をもって。
いるならば―そしてまた逢おう。
そして今度は長い時間を過ごせるように。
約束を交わす。
そして闇の中、二人は夜どおし話した。
すっとだきあったままお互いの存在を確かめるように

海の見える公園。
父親がプロポーズした場所で息子も約束を交わす。
幻のように儚いだけど、現実の事となる約束を。

おわり

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