ザ・グレート・展開予測ショー

ルシオラ復活の日々五日目『現と幻』後編(そのいち)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/11/ 9)

「あ、でもちょっと遠いんだよなあ…電車とか乗り継ぐ事になるぞ。いいか?」
とルシオラのほうを向き横島。
疲れないか?と言外に聞いている。
もちろん、その言葉に対するルシオラの返事は聞くまでも無く。
「いいよ、ううん連れて行っていきたい。」
じゃあお昼ご飯の用意とかしないとね
どうしようとうーんと考え込みながらルシオラ。
「いいってなんか買っていこう」
創ると間に合わない。
「間に合わない?」
「ああ、間に合わないと言うか…」
うーんと、行き着くまでまでが時間かかるんだよなあ
少しだけバツの悪そうな顔で横島。
「そう?じゃあ急ごう?」
着かなくなっちゃうかもよと悪戯を思いついたような顔で笑った。
「ああ、急ごう」
―時間がないから
無意識のうちに出そうな言葉を飲み込み横島も笑う。
こんなに、こんなに幸せなのに
失う
いなくなる。
また、ひとりでいきていく。
だから、彼女と生きることのできる時間をひと時でも、一瞬でも大切に、慈しむ。
全てを覚えていられるように。

そして夜。
太陽も西の空に沈み空には無数の星星が並べられている。
「…うわああ」
とは連れて来られたルシオラの第一声である。
そしてどこか得意げに傍で笑う横島。
つれてこられたのは海沿いの公園。
聞こえるのは海の漣のみ。
光は、よっぽど辺鄙な場所らしく街灯すらない。
ぐるりと見回してみても町の明かりも、人家の明かりも無い。
光があるのはその灯台だけである。
空にある星は、月が無い為にか常に無いほどよく見え『降って来そうな』という表現がぴったりである。
そして、灯台から放たれる光は地上と空との道を作っているかのようであった。
ひどく幻想的で、美しい光景。
「綺麗だろ?」
問い掛けの形を取っているが絶対の自信を持って横島
もちろんその返事は
「うん!すごく綺麗!!」
満面の笑みでルシオラ。
「ここ、親父につれてきてもらったんだ」
小さい時に一回だけ。
ここで、プロポーズしたんだってさ
だからつれてきたいって思ったんだと物凄く顔が赤くなるのを感じつつ横島
「…うん」
滲み出そうな嬉しさを隠せずにルシオラ。
「有難う、私、この景色忘れない」
絶対に
「そして、ごめんね…」
不意に零れる言葉。
「え?」
何のことか分からずに横島。
ルシオラのほうを見ると先程までの嬉しげな表情ではない。
あるのは泣くのを堪えている、哀しげな表情。
なんで、こんな顔をするのか分からない。
益々困惑の表情で横島。
だが、ルシオラの表情は益々泣くのを堪えているようになる。
そして紡がれる言葉は―
「先に…居なくなってゴメンね」

がん
と体が叩きつけられるかと思った。
「な、なにを」
声が掠れている。
いや彼女が知っているのは…知っていた。
だけど、実際に自覚しているのを言葉で聞かされるのは―

「うん、二度も置いていくでしょ?だから謝って済む事じゃないけど…あやまりたくて」
一方ルシオラは、ひどく穏やかに言う。
顔は泣きそうなのに。

ぐいっ
瞬間横島は傍にいたルシオラの腕を引き抱きしめる。
それこそ、強く
腕の中の存在を確かめるかのように。

「っ?ヨコシマ?」
「―んでっ」
「?」
「なんで―あやまるんだよっ!!!俺が、俺が、謝らなきゃいけねえのに!」
勝手に生き返らせて!
もう、俺の娘に生まれ変わらせてやれねえのに!
それはずっと思っていた事
だけど、絶対に言わないと決めていた事。
言えば彼女は許すから。
全てを
おれのこのこころを
全部許してしまうから。

「違うよ…ヨコシマ」

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