ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(幕間)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/11/ 9)




 ー終曲ー



 ー11時27分ー

 既に深夜。
 一部の人間にとっては、これから一日が始まるのかもしれないが、大多数は帰宅、ないしは就寝につく時間である。
「ふぁ・・・」
 ほんの僅か、直接関係無い事に思いを巡らせた時、彼女はあくびをしかけ・・・かろうじてこらえるのに成功した。
(この書類だけは・・・完成させなくちゃ・・・)
 じわじわと、溜まって行く疲労感に意識が侵食され、身体が休息を求める。そうなると必然的に瞼が重くなる。
 彼女は頬を叩き、その欲求を跳ね退けた。
「大丈夫かい?」
 背後からかけられた、自分をいたわる声。
 その声に振り向き、軽く手をふって応えてから、彼女は再びモニターと向き合う。そうした時ふと、豊潤なコーヒーの匂いが鼻腔をくすぐった。
 見るといつの間にか、手元に『湯飲み』が置かれている。
「差し入れだよ、余り無理しないようにね」
 彼女は『湯飲み』を片手にし、やや苦笑混じりに・・・それでも柔らかい微笑みを浮かべだ。
「有難うございます、会長」
「何だか君に言われると、実に不思議な感じがするよ」
 口つけた湯飲みを机の上に戻し、彼女が口開く。
「前半ですか?・・・それとも後半?」
「両方さ・・・て、もう休まないのかい?」
 そう言った時には既に、彼女はまたも姿勢を正し、モニターへと視線を投じていた。
「ええ・・・状況が状況ですし・・・」
 答える声の合間にも、文書が作成されていく。

 そこにはこう記されていた。

 <ヨーロッパでも有数の霊的拠点、かの大聖堂が突如として、周辺2キロまでの範囲を覆い尽くした謎の黒い霧により、音信不通となる。
 やがてその霧が朝の日差しによって消え去った時、そこには大聖堂は影も形も無く消失しており・・・代わりに時代錯誤ともいえる、中世時の城塞がそびえたっていた。
 なお調査に赴いたその国のヨーロッパのオカルトGメン捜査員の中で、帰還した者は僅か一名。
 事態を重くみたオカルトGメンヨーロッパ支部は、アシュタロス事件を解決した日本オカルトGメンに協力要請。その要請に対し、日本オカルトGメン及び・・・丁度ある事件の最中に、偶然生じた不祥事によって、副会長を除く全ての主要人員が入れ替わった日本GS協会は全面的な協力を・・・>
 
「約束し、こちらに赴いた唯一残ったGメンと協力し、原因の解明、及び行方不明者の捜索に・・・・・・ふぅ」
 そこまで作成したところで、ここ日本オカルトGメンの重鎮たる彼女は大きく伸びをした。
 そこに妙に暗い印象を受ける声がかけられる。
「丁度ある事件の最中に偶然生じた不祥事・・・」
 振り返ると、『会長』の眼鏡には少しのヒビがあった。
「ええ『不幸にも偶然が重なり生じた不祥事』、です。ところで会長・・・」
 ふと、彼女が表情を曇らせる。それを目にし会長・・・神父は彼女の言わんとしている事を察した。
「解っているよ。美神君達・・・というのも変かな・・・令子君達の事だね?・・・とりあえずどこにも異常は無いらしいよ。大丈夫。今はおキヌ君達が看ているし」
「そう・・・」
「例の『男』は、小竜姫様達が監視してる。ヒャクメ君がいろいろと覗いてみると言ってたよ・・・横島君の無事も確認出来たし、一安心だね・・・」
 その言葉に彼女も頷く。しかしそれでも表情から陰りは消えなかった。椅子から立ち上がり、床に目を落として呟く。
「令子・・・怒るわね。きっと・・・」
 神父は一度開きかけた口をつぐみ・・・やがて意を決したかの様に、言った。
「そりゃそうさ。大事なところを秘密にされてるなんて、あまりいい気分はしない・・・ただ・・・狼牙の時同様、ヒャクメ様からのメッセージで、ヨーロッパの事件を知らされた。いずれはこちらに協力の要請が来る。そう踏んで君は色々と準備をしてきたんだろう?」
「・・・・・・」
「何とかなるさ。案ずるよりも・・・」
 神父が言いかけたーーーその時。

『このボケナスーーー!!!今の今まで一体どこほっつき歩いてた!!?今度はスペシャルで高度3000メートルからバンジージャンプしろ!はるか深海に沈むように錨も付けて!当然だけどロープも!酸素ボンベも無し!!!』

 看護室からここまでは、かなり距離がある筈だというのに・・・その怒号はまるで、耳のそばで怒鳴りつけられた様な錯覚を抱かせた。

 一瞬の静寂。ポツリと呟く様に、神父が言う。

「・・・行こう美智恵君。今彼の身を案じなかったら、二度とその機会が無くなりそうだ・・・」

 当然ーーー美智恵にも異論などある筈も無く、二人は文字通りの『修羅場』へと向かったーーー



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