ザ・グレート・展開予測ショー

タカラモノノナマエ


投稿者名:猫姫
投稿日時:(01/11/ 7)




貴方は蛍が好き。蝶ではなくて。

貴方を見つけたのは私が先なのに。










“タカラモノノナマエ”










ふう。
最後の孵化もやっとこれで終り。
鏡の中には見知らぬ私の姿。

……私、ずいぶん変わったでしょ?

スタイルや顔立ちが大人びたのもそうだけど、背がぐんと伸びたのが何より嬉しい。
だってこの高さは、貴方の隣を歩いて様になる高さ。貴方に釣り合う高さなんだもの。

……わかってくれる? 全部、貴方のためなんだよ?

こうまでなるのにずいぶん時間がかかっちゃったけど、でも、漸くここまでなれた。

……ありがとう。待っていてくれてありがとう。

今は、今だけは、美神の意地っ張りさんに感謝。おキヌちゃんの、のんびりやさんにも感謝。

……ありがとう。そして、ごめんなさい。





あの日、あの時、貴方に出会って。私はひと目で貴方を気に入ったわ。
一緒に居られたのはほんの僅かな時間。でも、私にとってはかけがえのない日々だった。

……優しくしてくれたよね。甘えさせてくれたよね。

貴方の瞳には私じゃないひとが映っていたけれど、それでも私は幸せだったの。
貴方と彼女が幸せそうに微笑みあうのを見ているのが好きだったから。
貴方の事も、彼女の事も、大好きだったから。

……ちょっぴり、拗ねちゃったけどね。

私がしてはいけない事をしてしまった時も、貴方は身を呈して庇ってくれたよね。それだけで十分だった。それだけで満たされていた。

……けれど。けれども。

貴方が彼女を喪った時、私はどうしようもなく子供だった。
膝を抱えて泣くだけの、なんにもできない子供だった。

……悲しかったの。とても、とてもかなしかったの。

全ての事が終わった後で、泣きじゃくる私を貴方はそっと抱き締めてくれたよね。微笑んでくれたよね。
いつか、きっとまた彼女には会えるよって、そう言ってくれたよね。

……でも、私は知っていたの。

本当に泣きたかったのは貴方。一番大きな傷を抱えていたのは貴方。
絶望と慙愧に蝕まれながら、それでも貴方は笑っていた。笑うしかなかった。

……だって、優しすぎるから。

みんなが貴方の事を心配していた。みんなが貴方を励ましていた。
だから、偽るしかなかった。道化の仮面を被るしかなかった。
慰められたフリをして、みんなを安心させたかった。

……ねぇ、知ってる?

貴方が隠した、大きな傷。私は気づいていたんだよ?
だって私も、同じ傷を抱えていたから。私だけが、その傷の痛みを知っていたから。分かち合えたから。

……痛かったよね。辛かったよね。苦しかったよね。

だから、思ったの。
貴方の痛みを消したいって。
貴方の苦しみを癒したいって。

貴方に、ぬくもりをあげたいって。





「いい風ね…」

……私は彼女にはなれないけれど。

「東京は…あっちね」

……彼女と同じ位、貴方が好きなの。

「会ったら、なんて言おうかなぁ」

……貴方の全てを癒したいの。

「今の私を見たら、きっとビックリするんだろうなぁ」

……いつでも一緒にいて、守りたいの。

「ふふ、楽しみ」

……だから。

「行くね……ポチ………」

……私を受け止めてね。





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