ザ・グレート・展開予測ショー

おなじ空 その1


投稿者名:みみかき
投稿日時:(01/11/ 7)



 「紅茶でよかったかしら。」
 「はい、おかまいなく。」
 美神はてきぱきと磁器のポットと2つのティーセットを
 用意すると、それぞれに少しづつ、お湯をそそく。
 小鳩が膝の上に手をかさねて、美神の方へ首を向ける。

 「あの、お邪魔じゃありませんか?」
 「ううん、今仕事セーブしてるの。明日までフリー。
 アタシも退屈してたとこだから。」
 「ネェチャン、茶ーもええけど、何かこう腹にたまるモン
 あらへんか?」
 「び、貧ちゃんてば。」
 サボテンブラザーズなハットに唐草マント。
 一応福の神らしいが、なんつーか神々しさが欠けている。
 貧乏神はイヤだが、かわいげがある分「お○ゃる○」の
 貧ちゃんの方が4倍は勝ってる、と美神は思う。
 「はいはい、お茶入れたらクッキー出すから。
 アンタは湯のみでいいわね?」
 「ワイも白磁のチーカップがええけど。」
 「アンタは湯のみ!」
 「す、すいません。も〜貧ちゃん。」

 ポットのお湯が抜かれ、3杯分大の葉を入れる。
 「それでと、…今日はどうしたの?」
 わずかにお湯を注いで葉を開かせる。
 プリンス・オブ・ウェールズの香りが、
 テーブルクロスの外へ流れてゆく。
 「横島さん、最近元気無いですよね…」

 「そう? そりゃハードに働いてもらってるケド、
 学校じゃ、ヤッパ疲れてる?」
 「いえ、疲れてるとか、そうゆうんじゃなくて、
 何か落ち込んでる感じみたいな…。テンションが低い気が
 するんです。」
 今度はカップの分のお湯を注いでゆく。
 「見かけは普通なんですが、仕草が何てゆうか、その、
 寂しそうなんです。」
 「寂しそう…ね。」
 「お仕事の方で大変な事、あったんですか?」
 「まあ、ウチは大変なコトなんて、日常茶飯事だから。
 こないだも”首都喪失事件”で、しばらく出張だったし…
 ヤッパ疲れてるだけなんじゃないの?」
 「そう…ですか。」
 「それよりも、お茶しましょ。もうイイ感じかな〜」
 「クッキーくれ、クッキー!」
 「アァ!もうわかってるわよ!お茶注ぐまで待てないの?」

 「おっキヌちゃ〜ん、ワイ、クッキーたべたいなぁ!」


 止まっていたポットの口から、再びカップへ注ぎ始める。
 「・・・・・」
 「…おキヌちゃんねぇ、今、里帰りしてるの。」
 「里帰り…ですか。」
 「そ、里帰り。あっ、だからしなびてるのか、横島のヤツ。
 もののけ関係にしか、人気ないからねぇ、アイツ。」
 「せやから、この事務所、こんなにチラかっとるんか〜。
 アンタら、あの幽霊ネーチャンおらんと、仕事滞るンちゃうか
 ?」
 「うっさいわね!合理的にモノを置いてるだけでしょーが!
 見た目より、使いやすいんだから。」
 少々乱暴に腰掛ける。あまり香りを楽しむでもなく
 美神は紅茶を口に含んだ。

 「おキヌちゃん、いつまでお休みなんですか?」
 「まぁ、気の済むまで…かな?チョットの間お休み。
 働き者さんだから、御褒美ってコト。」
 「こらうまい、こらうまい、こらうまい、こらうまい、こらう まい」
 「少し、寂しいですよね…」
 「まあ、ね。」
 「こらうまい!どや、小鳩もガンガン喰わんと、のうなるで」
 「貧ちゃん、もう少しお行儀よく…」
 「アンタ、永久に休暇くれてやるわ。」


 「本っ当、助かったわ。かたずけ手伝ってくれて。」
 「い〜え、おいしいお茶とお菓子のお礼です。」
 「アンタ、さっき合理的な配置がど〜のゆ〜てなかったか?」
 「じゃかましい、アンタ全然手伝ってなかったでしょ!」
 「イラんモンばっか、見つけるよって、手ぇつけるなゆうたん
 は、アンタやろ」
 「貧ちゃんてばっ!もう〜。」
 「とにかく、ひさびさすっきりしたわ。ありがと。」
 「いえ、どういたしまして。…あの。」
 「ん?」
 「横島さんも、ですけど、美神さんも、…元気出して下さい」
 「………」
 「………」
 「ん、なんや?」
 「小鳩ちゃん。」
 「はい?」

 「ありがと。」
 「はい。」
 「それじゃ、寒くなってきたから、風邪ひかない様にね!」
 「美神さんも。それじゃ失礼します。」
 「ワイもカゼひかんで〜」
 「わかっとるわ!!」


 おキヌちゃんが生き返って、1ヶ月。
 小鳩達を見送って、ドアを閉める。
 ノブの音。ヒールが床を叩く音。カーテンを閉める音。

 音がこんなに大きく聞こえるなんて、近頃なかったな。
 美神は、音が響いた、天井を見つめていた。

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